【音楽の先生になるには】実際の音楽教師の免許取得までの体験談と、音楽の先生になる方法の解説

地方公務員である学校教員、この中で、「音楽の先生」の免許取得に関する体験談レポートです。

音楽の先生になるにはどのような課程を経るのか、どんな専門的知識が求められるのか、そして音楽の先生として働く魅力について、実際に音楽の先生の免許を取得した経験を持つ女性にレポートしていただきました。


目次

はじめに - 音楽の先生になるには「教員免許」が必要

小学校や中学校、高校の「音楽の先生」になるには、基本的に常勤の場合も非常勤講師の場合も「教員免許」が必要です。

音楽の先生の免許を取得したい場合、「教育大学」で音楽を専攻したり、「音楽大学」で教職課程を履修するなどの方法があります。

そもそも、音楽の先生って?

そもそも、音楽の先生とはどのような先生でしょうか。

小学校・中学校では音楽の授業は必修

小学校と中学校では通常、児童・生徒全員が音楽の授業を受けます。時間割でいうと、だいたい週に1~2時間程度が基本です。

一般的に、小学校1~2年生までは週に2コマ、小学校3年生から中学校まではだいたい1コマ、音楽の授業を行う学校が多いです。ただし、音楽祭や合唱コンクールの前などで臨時で音楽の時間が増えることもあります。

高校では音楽の授業は選択制

高校の場合は、音楽の授業は、芸術科目(音楽・美術・書道・工芸)の1つとして選択肢の中に含まれるため、選択者だけが音楽を学びます。よって、高校では全く音楽の授業を受けない生徒もいます。

音楽の先生の仕事とは

音楽の専門的な授業を行うのが、音楽の先生の仕事です。小学校の場合、低学年の間は担任の先生が行うことが多いですが、3年生以上になると専門の音楽の先生が担当します。

また、授業以外に学校の式典(入学式、卒業式)での校歌指導、合唱祭など、文化行事での歌唱指導や器楽指導など、幅広い指導力が求められます。

教育用楽器としてリコーダーや鍵盤ハーモニカが用いられるので、歌唱力だけでなく器楽の演奏力も必要です。そして歌唱指導時も、合唱の伴奏の多くはピアノを使用します。伴奏をするだけでなく、弾きながら歌う、弾きながら生徒を観察することも必要になってきますので、ピアノ演奏は避けては通れないでしょう。

中学校や高校の音楽系の部活動の顧問

中学校や高校の音楽の先生になると、合唱部や吹奏楽部、軽音楽部などの音楽系の部活動の顧問を任されることがあります。

部活動によってはコンクールに出場したり、校外での演奏会を行うこともあるので、より高い指導力が求められることもあります。


音楽の先生の免許が取得できる大学・学校

音楽の先生の免許を取得するための大学は、大きく「音楽大学」か「教育大学」に分けられます。

どちらの方が音楽の先生として採用されやすいかについては一概に言えませんが、最終的には教育者になることを自分の中で決めているのであれば、同じく教育者を目指す同志も多く、教育に関する授業も手厚い教育大学の方がいいかもしれません。国立大学の教育学部であれば学費が安い等のメリットもあります。

逆に、音楽の先生の免許はあくまで保険で、まずは演奏者として活躍したい人は音楽大学があっていると思います。

ただし、これはあくまで私個人の考えなので、自分の進路により適した大学を選ぶことをお勧めします。

なお、以下は文部科学省で公開している、「中学校・高等学校教員(音楽)の教員の免許資格を取得することができる大学」一覧です。

》参考URL:文部科学省|中学校・高等学校教員(音楽)の教員の免許資格を取得することができる大学
(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoin/daigaku/detail/1287061.htm)

音楽の先生の免許取得について

音楽の先生の免許は、教育大学や音楽大学の教職免許課程の単位を取得することで、卒業時に卒業証書と共に発行されます。音楽の専門的な内容だけでなく、倫理や憲法など教職員になるための科目も必須となります。

教職課程を取らなかった場合は、自分の専門分野のみ学習しますが、教職課程を取った場合には、自分の専門科目だけでなく、音楽全般を学ぶことになります。そのため、自分の不得意とする分野も避けては通れなくなりますが、音楽の先生に求められるのは、幅広い知識と指導力です。それらを自分の専門性としていかすことも可能です。

文部科学省によると、教員免許として一般的な方法で取得可能なのは「普通免許状」で、教員免許状、免許状といった場合、通常この「普通免許状」を指します。音楽科の場合ももちろん同様です。

普通免許状の中にも、専修免許状(大学院修了相当)、一種免許状(大学卒業相当)、二種免許状(短期大学卒業相当)の3つがありますが、指導可能な範囲に違いはありません。

音楽の先生の免許取得のために勉強したこと・経緯

音楽の先生になるには、教職課程を取らない人も、音楽の専門以外に共通の一般科目である、語学や体育の単位を取らなければなりません。これらは、主に大学生活の中の1年生、2年生で取得することが多いです。

教員免許を取得する人は、これらに加えて日本国憲法や倫理を学び、さらに音楽教員として必要となる音楽の専門分野の単位を取得します。私の場合は、教職課程を選択していましたので、4年間で多くの単位を取得しなければならないため、単位を落とさないように計画的に勉強しました。

4年生になったら採用試験の対策もしたいと考えていましたし、音楽の専門分野の勉強を深めたかったので、1年生からできる限り早く、教職免許に関係する科目と一般科目の必要単位を取得することを、目標に置いていました。

日本国憲法や倫理、心理学などは、音楽ばかりやってきた自分にとっては理解するのに難しく、テストがあるたびに緊張したのが今とはなってはよい想い出です。

音楽の先生の免許取得のために勉強したことその1:語学

語学に関しては、イタリア語やフランス語、ドイツ語の選択肢もありましたが、新しい語学を学ぶよりも、私は高校まで学んできた英語を選択し、他の教職科目の勉強への負担を減らそうと考えました。余裕のある人は、教科書にもイタリア歌曲やドイツ歌曲が出ていますので、それらの語学に触れておくのも、のちにきっと役立つと思います。


音楽の先生の免許取得のために勉強したことその2:ピアノと声楽

音楽専門分野では、特別苦労したものはありませんでしたが、ピアノと声楽は必須科目になります。この必須科目に管楽器が専門の人は、苦労していたように思います。特にピアノが苦手な人が多い印象があります。

ピアノが苦手であると、伴奏法も苦労します。メロディに自分で伴奏をつける、伴奏を弾きながら歌う、さらには移調するとなると、それなりのテクニックが必要となります。よって、両手でピアノを弾くのが精一杯という人は、とにかく頑張らなければなりません。

音楽の先生の免許取得のために勉強したことその3:指揮法

指揮法も音楽の教職課程らしい科目のひとつです。音楽の先生になると合唱や吹奏楽など、必ず指揮をしなければなりません。指揮棒の持ち方や構え方、拍子の取り方も知っておくべきだと思いますし、管楽器にある「移調楽器」についても、ここで学ぶことがあります。

近年、吹奏楽が盛んな傾向がありますので、移調楽器についても知らなければ現場で苦労してしまいます。スコアの読み方などにも慣れておく必要があると思います。

音楽の先生の免許取得のために勉強したことその4:音楽教育法

音楽教育法という音楽の授業の展開の仕方についての科目があります。ここでは学習指導要領にも触れた授業が行われるなど、現場教育への実践的な内容になります。最終的には近年の子供の様子や、流行っている歌、教科書はどのようになっているかなども調べて、模擬授業のテストに備えます。この科目は教育実習の際にはとても役立ちました。

音楽の先生の免許取得のために勉強したことその5:西洋音楽史

西洋音楽史も重要な科目です。西洋の音楽のことを一般的にクラシックと呼んでいますので、この音楽史を理解することは不可欠です。人に説明できるようになるまで、理解を深めることが大切です。

音楽の先生の免許取得の難易度はどの程度か

音楽の先生になるには教員免許が必要であることは述べましたが、免許取得の難易度はどの程度でしょうか。

私は、音楽の先生の免許取得自体は、特別難しいものではないと感じました。大学に設置されているカリキュラムは、どれも教員として必要な内容ばかりですし、真面目に取り組めば決して難しいものではありませんでした。

音楽の先生の免許取得でのポイントその1:苦手分野の克服

自分の苦手分野を受け入れ、積極的に勉強しておくことがポイントだと思います。苦手科目で立ち止まってしまい、それが足を引っ張り、教員免許取得をあきらめるケースをよく見かけます。できるだけ早く、苦手を克服することが大切です。

特に、ピアノや声楽などは机上の勉強とは全く違うものなので、これらが苦手という人は、専門の先生についてしっかり学ばれると良いでしょう。

音楽の先生の免許取得でのポイントその2:教育実習

教育実習も資格取得に大きな影響を与えるものです。

大学での勉強はとてもよくできたのに、実際の現場に行って挫折してしまうケースも時々あります。イメージ通り授業ができなくても、すぐ対処する、立ち直る、という強い気持ちが必要です。

そして、実習生であっても、音楽の授業をすること以外に、ホームルームを任されたり、生徒と一緒に掃除をしたり、部活動に参加するなど、コミュニケーション力が試される機会がたくさんあります。そのため、積極的に学校に関わる姿勢が大切です。教育実習は、現役の先生や生徒の、生の声が聞ける絶好のチャンスです。

音楽は、特に時代と共に変化していく教科なので、何が流行っているか、生徒はどんな曲に興味を持っているのかを、自分で調査することもできます。さらに、自分の授業のことだけでなく、今後を見据え、どのような教員が求められているのかまでを学ぶつもりで、実習期間を有効に過ごすことも、資格取得への道につながると思います。

なぜ私が音楽の先生の免許をとろうと思ったか

私の場合、もともと音楽が好きだったこともありますが、高校生の時に先生方が行ってくれた予餞(よせん)会がきっかけでした。学校行事に真剣に取り組む先生方の姿を見て「私も教員になりたい」と思い、自分ができることは「音楽である」と思いました。

私は、幼いころからピアノの練習だけは毎日続けており、吹奏楽部にも所属し、気づくと音楽の勉強だけは苦にならなかったのです。たくさんの生徒が集まる学校で、教師として音楽の楽しさや素晴らしさを伝えることができたら良いな、と思いました。

音楽の先生として授業を展開し学校行事に参加する、という夢ができた私は、まず、免許取得に向けて大学進学を考えました。

音楽大学卒業後の進路は大きく2つある

音楽大学では、大きく2通りの道があります。1つはプロの演奏家(作曲家)をめざす道、もう1つはプロの教育者をめざす道です。どちらの道を選んでも、教員免許を取ることはできます。

私は演奏家としての道を選び、同時に教員免許を取ることも選びました。正直、その時考えていたのは「もし演奏家としてやっていけなかったら?」「もし教員になれなかったら?」という思いに対する、それぞれの保険的な考えでした。でも、どうやったら音楽を続けていかれるかという思いにブレはありませんでした。


演奏家として個人で活動することや、楽団に入ってその一員として活動するなど、音楽の仕事には様々な形があります。学校の先生として音楽を教えるということは、自分の専門性だけでなく、学校という社会の中で、人として、指導者としての力量も必要になります。

集団生活の中で、私が高校時代に経験したように、先生方と生徒が一丸となって楽しい学校生活を送り、生徒が豊かな心で社会に出ていくお手伝いをすることが、私の恩返しの形だと思い免許を取ろうと思いました。

音楽の先生として働くことの魅力と役割

次は、私が考える、音楽の先生の魅力と、音楽の先生が最低限果たすべきだと思う役割についてお伝えします。

音楽の先生の魅力

私が考える「音楽の先生の魅力」はもちろんたくさんありますが、そのうちの一つとして、音楽の先生として教育に携わることで、普段の教室では見られない、生徒の意外な一面が見られることが挙げられます。

「こんなに歌が上手だったのね!」「この曲にこんなに詳しい子だったのか!」「ピアノを毎日練習していると言っていた!」など、音楽室ではたくさんの発見があります。

音楽の先生の役割 - 音楽が苦手な生徒への配慮

高校生のように自分で音楽を選択する場合は、音楽が好きな生徒がほとんどです。ですが小学校や中学校のように、必修科目として音楽の授業を受ける場合、音楽が苦手だという子もいます。特に、人前で歌うのが嫌だ、という子供は少なくありません。音楽を聴くことは好きだけど、表現するのは苦手、という生徒も多いです。

音楽の先生は、まず、音楽が苦手な子の気持ちに気づいてあげることが必要だと思います。

生徒が得意なことをもっと伸ばしたり、苦手なことを少しでも興味が湧くようにするには、どうしたらいいだろうかと、できる限り一人一人よく観察して、その子にあった方法をみつける努力を惜しまない姿勢が、楽しい音楽の授業につながっていくと思います。

時々、生徒によっては幼少のころから既にピアノや歌などを習いこみ、他の生徒と技術的に大きな差ができてしまっていることもあります。その子にとっては簡単なこと、場合によっては、他の子と足並みをそろえることがつまらないと、感じている時もあるかもしれません。その時に先生はどうするか、などを考える場面も出てきます。

音楽の先生の年収は?

音楽の先生として働くうえで、年収は非常に重要な関心事の一つだと思います。

音楽の先生の年収は、勤務先が公立学校か私立学校かによって、また、雇用形態によって大きく異なります。

公立学校に正規雇用されれば、地方公務員扱いになるので、年収は400~500万円程度ですが、私立学校の場合は学校によって異なります。なお、正規雇用された場合、音楽だけ教えていればいいということはなく、担任を任されることもあります。

非常勤講師として働く場合は、基本的には音楽の授業だけを受け持ちます。給料は月給制の場合もあれば、時給計算の場合もあるようです。

「公立高校」の音楽の先生の年収については、以下の記事もご参照ください。

》「公立高校」の「音楽科専攻の先生」に関する仕事内容・給料レポート

公立高校で非常勤講師として働く、キャリア4年の「音楽科専攻の先生」によるキャリアレポートです。今回は、その「音楽科専攻の先生」の仕事内容や一日のスケジュール、年収(給料・ボーナス)や残業状況・職場恋愛などについてインタビューしたものを編集して掲載します。

学校以外の、音楽の先生の就職先・転職先

学校以外にも音楽の先生が働く場所はたくさんあり、音楽の先生として働いたのち、転職する人もいます。雇用形態も、アルバイトから正社員、個人事業主まで様々なので、ライフスタイルに合わせて選ぶことができます。

音楽の先生が働く場所その1:保育園や幼稚園

保育園や幼稚園では、音楽や体育などの科目において、専門の講師を雇っているところが多くあります。最近ではリトミック等を取り入れている幼稚園も多く、音楽の先生の需要も増えているようです。

音楽の先生が働く場所その2:音楽・楽器教室

音楽・楽器教室と聞けば、まずはピアノの先生を思い浮かべると思いますが、他にも声楽を教える教室や、ギターなど様々な楽器を教える教室もあります。

音楽や楽器を教える教室を自分で教室を開くこともできますし、大手のピアノ教室に講師として就職するという方法もあります。


音楽の先生が働く場所その3:楽器の卸営業

「教える」という仕事からは離れてしまいますが、楽器店に楽器を売る「営業マン」になることもできます。

音楽の知識があるからこそ、良い接客、良い営業ができるかもしれません。

さいごに

誰にでも楽しめる音楽だからこそ、楽しみ方もそれぞれです。

生徒を良く見て、臨機応変に柔軟な対応をすることが、音楽の先生として非常に重要な部分ではないかと思います。

学校の授業だから、こうしなければならない、これをやらなければならない、ということはないと思います。これから音楽の先生を目指す人は本来の音楽の意味を理解して、様々な方向からみんなで楽しめる方法を、ぜひ見つけて欲しいと思います。

それが先生の個性であり腕の見せ所なのではないでしょうか。

ここに注意!(2022年11月追記)

ポイント1
中・高の音楽免許状があれば、「小学校の音楽専科」になることはできます。しかし、学級担任などの業務に携わることはできません。

ポイント2
教員免許の更新制度は廃止されましたが、免許状を取得した時期により、失効している免許状を復活させる手続きが必要となる場合があります。

まとめ - 編集部より

以上、「【音楽の先生になるには】実際の音楽教師の免許取得までの体験談と、音楽の先生になる方法の解説」でした。

今回は、実際に音楽大学に進学し、そこで音楽の先生の免許を取得した女性による体験談を詳しくレポートしていただきました。音楽の先生になるまでの道のり、学んだこと、音楽の先生の役割や魅力など、多くのことを教えていただきました。

音楽の先生を目指している方は、ぜひ今回の記事を参考に、音楽の素晴らしさを伝えられる先生を目指してください。

(更新日:2020年9月28日)

本記事は、2018年4月2日時点調査または公開された情報です。
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