「地方公務員」は、日本で「公務員」として働く人の約8割を占めており、国家公務員が中央官庁などの国の機関に所属するのと異なり、「各・地方自治体」に所属する公務員です。
「地方自治体」とは、大きく「都道府県」と、「市町村」に分類され、各自治体によって独自に公務員を募集しています。その中でも、職種としては大きく行政運営の事務処理や管理の役割を担う「事務系(行政系)」、土木や電気など技術的な知識管理が求められる「技術系」、幼稚園の先生や保健師など国家資格が必要となる「資格免許職」、交番のおまわりさんや消防士さんなど街の治安・安全を担う「公安系」と4つの職種に分けることができます。
今回はその4つの職種について、それぞれ解説します。
※国家公務員と地方公務員の違いについては、下記をご覧ください。
》【国家公務員と地方公務員どっちがいい?】公務員の選び方
事務系職種の地方公務員について
地方公務員の「事務系職種」は、「行政事務」や「一般事務」などと呼ばれ、主に県庁や市役所をはじめ、その出先機関に勤務します。公立学校に勤務する「学校事務(教育事務)」、警察本部や警察署等に勤務する「警察事務」といった区分を設けている自治体もあります。
また、「地方公務員の採用試験」には一般的に「上級試験」「中級試験」「初級試験」の試験区分があり、それぞれ学歴によって受験できる区分が異なります。「初級」は高卒程度から受験でき、「中級」は短大・専門学校卒業程度で受験できます。「上級」は大卒程度から受験可能です。(*各地方自治体で表現や分類が異なる場合がございます)
この級についてですが、「事務系職種」の中でも、「初級」が定型的な事務に従事するケースが多いのに対し、「上級」は部署間の連携を図るなど横断的な仕事や、新規事業の企画・立案などを任されることも多く、将来の幹部候補生として、「初級」や「中級」と比べ、出世や昇級が早いのが特徴です。地域の代表として、国との折衝に関わることもあり、国と地域をつなぐ存在であるとも言えます。
地方公務員「事務系職種」の仕事内容
「事務系職種」の仕事内容は配属される部署によって様々です。
「行政事務」について身近なところで言うと、市民課・住民課の窓口に勤務する方や、観光課などに所属し、国内外に出張して観光客を誘致するPR活動を行っている方もいます。
「学校事務」は、政令指定都市以外では都道府県で採用され、各市町村立の小・中学校や都道府県立の高校などに配属され、学校の事務室で会計や備品管理、学校行事の準備などを担当します。
「警察事務」は、警察署内の予算の編成・管理や、職員の福利厚生、給与計算、広報などを担当します。他の事務と違うのは、遺失物届けの受理や、拾得物の管理など、警察署管内の落し物に関する業務を担当するほか、犯罪情報の収集・分析など、警察独自の業務も加わってくる点です。
いずれにせよ、配属される部署によって仕事内容は変わってきます。公務員のため数年ごとの異動も伴いますので、あらゆる部署・業務に意欲を持って臨める人に向いている職種だと言えるでしょう。
技術系職種の地方公務員
地方公務員の「技術系職種」には「土木」「建築」「電気」「機械」「化学」「農業・農学」などの区分があり、それぞれの専門分野に関係する部署に配属されます。
事務系職種と同様に、一般的に上級・中級・初級と試験区分が分かれており、上級は大卒程度、中級は専門学校卒・短大卒程度、初級は高卒程度から受験できます。全体的に専門性の高い仕事ではありますが、初級が設備の点検・管理などの定型的な業務を担当することが多いのに対し、上級は幹部候補として比較的昇級が早く、そのため統括や企画、多部署と連携しての横断的な任務も加わってくるようです。
地方公務員 技術系「土木」
「土木」職は、自治体によって「総合土木」や「農業土木」「土木」などの区分で採用があります。土木課、道路課、河川課、公園課、水道局などに配属され、道路や河川、港湾から、公園、緑地、上下水道、都市計画などに関わり、地域のまちづくりを担い、美しいまちを創造し、維持していく仕事であると言えます。
地方公務員 技術系「建築」
「建築」職は、建築課や営繕課、都市整備局などに配属されます。建築物の検査申請を扱う窓口や、実際に検査を行う検査業務などがあり、地域の建物の建設が基準通りに進められているかを審査し、行政指導を行い、違反建築物を取り締まります。
また、自治体が所有する建物の保全や建築計画などを担当します。予算に合わせた建設予定地の調査から設計、工事委託業者の選定、発注、引渡し手続きなど、自治体所有の建物がゼロから完成するまでの一連の流れに関わる仕事です。
地方公務員 技術系「電気」
他の職種と比較しても即戦力となるより専門的な知識や技術が必要な場合が多く、自治体にもよりますが採用者の多くは経験者の中途採用だとも言われている職種です。新卒での採用があるかどうかは、各自治体の採用案内で確認することをおすすめします。
地方公務員 技術系「機械」
「機械」職は、建築課や環境課、清掃工場などに配属され、自治体が所有する建物の機械設備の企画・設計から維持管理を担当したり、発電施設・上下水道施設・交通施設などの機械の保守管理業務を担当したりする職種です。
都市化し機械化された現代で、市民の暮らしが滞ることのないよう管理する大切な業務です。自治体によって、「機械」区分があるところと、「電気」など他の職種と同じ枠で採用される場合があります。
地方公務員 技術系「化学」
「化学」職は、水質調査や土壌調査、から排ガスや廃棄物の調査と指導など、街の環境を見守る仕事です。都道府県庁では、産業廃棄物処理施設の認可・不認可を審査する部署に配属されることがあります。ごみ対策や環境の問題について住民説明会を担当するなどの仕事もあり、きれいな街を保つため、市民の安心のために必要な職種です。
化学職は、各種水道事業団や産業技術センター等でも募集を行う場合があり、都道府県庁や市町村役場に採用されると異動を伴うのに対し、その施設専任の化学職として勤務するようです。
農業・農学
「農業・農学」職は、農地保全課や農政局などに配属され、農地の保全や地域の農業推進を行うほか、食の安全を守る仕事を担当します。地元の食材を他県や海外にPRして回るなどの業務を担当することもあるようです。
研究職として、農業試験場で施肥技術の研究を行うようなポストがある自治体もあり、地域でよりよい農業が推進されるために技術面でのサポートを行うようです。
キーワード:技術職の業務に欠かせない「入札」について?
技術職の業務に欠かせないのが「入札」です。「入札」とは、国や自治体の担当部署が公共事業などの工事の仕様書を作成し、それを元にメーカーにいくらで工事が可能か、その金額を投票してもらい、金額投票をしたメーカーの中から一番安く実現できる発注先を決定することです。
税金を使う先を決めるわけですので、工事に必要な条件を最も安い金額で実現できることが重要なのですが、ただ安ければいいというわけではありません。最低限の品質を求めるために、あらかじめ担当者は工事にかかる費用の「積算」をして予想を立てておきます。この積算を下回って一番安い金額を出した事業者の金額を「入札価格」とし、工事契約を交わします。もしも全てのメーカーが積算金額を上回った場合は仕切り直しになり「再入札」が行われます。
資格免許職種の地方公務員
「資格免許職種」は、国家資格や自治体が資格や免許が必要な地方公務員の職業のことで、「保健師」「看護師」「臨床検査技師」「診療放射線技師」「管理栄養士」「栄養士」「幼稚園教諭」「保育士」などがあります。
幼稚園教諭(幼稚園の先生)
幼稚園教諭は園児の教育や保育を担当する職業です。幼稚園教諭の免許は文部科学省が認定する国家資格で、幼稚園教諭養成課程のある学校で学んだ後、「幼稚園教諭国家試験」に合格する必要があります。
地方公務員の幼稚園教諭は主に、各地方自治体が運営する公立の幼稚園で勤務します。幼稚園教諭免許状を持った人が、各自治体の幼稚園教諭採用試験を受けることができます。
私立の幼稚園の先生は、地方公務員としてではなく、民間の先生として勤務しています。
保育士
保育士は、保育所や託児所などの児童福祉施設で、子供の保育や、保護者へ育児のアドバイスを行う仕事です。保育士は厚生労働省が認定する国家資格ですので、まずは国家試験に合格することが必要です。
地方公務員の保育士は、公立の保育園や認定こども園に、勤務します。保育士免許を取得した上で、各地方自治体の保育士採用試験に合格し採用されると、公立の保育園などの職場に配属されるようです。
私立の保育園勤務の保育士は、幼稚園と同様、地方公務員ではありません。
保健師
保健師は健康教育や保健指導などを通して公衆衛生活動を行う職業です。地方公務員の保健師は、医療・健康・福祉の専門家としての立場から、地域の人々に健康的な生活づくりをアドバイスします。保健師そのものの資格は国家資格ですので、まずは国家試験に合格する必要があります。
地方公務員の保健師は「行政保健師」とも呼ばれ、自治体の保健所や保健センターに勤務します。国家資格を取得した上で、各自治体の職員採用試験に合格すると行政保健師として働くことができます。
看護師
看護師は医師の指示の下で診療の補助や、入院患者のサポートを担当する職業です。地方公務員の看護師は、各地方自治体が運営する公立病院のほか、保健所や保健センター、更に公立の保育所や幼稚園などに配属される場合があります。
看護師の免許は厚生労働省が認定する国家資格です。地方公務員の看護師になるには、まず国家資格を取得してから、各自治体の看護師採用試験に合格すると、晴れて地方公務員の看護師としての勤務が始まります。
臨床検査技師
臨床検査技師は、医学検査の専門家として、輸血検査や微生物検査、脳波・心電図・サーモグラフィ検査などのあらゆる検査を実施し、結果を提供する仕事です。臨床検査技師は厚生労働省が認定する国家資格で、大学や専門学校、養成所などで臨床検査技師の養成課程を修了すると、臨床検査技師国家試験の受験資格が与えられます。
地方公務員の臨床検査技師は、公立の病院や保健所、研究所、警察署などの公的機関で勤務します。国家資格を得た上で、各自治体や機関の採用試験に合格する必要があります。
診療放射線技師
診療放射線技師は、医師の指示の下、放射線を用いた検査や治療を行う職業です。放射線を扱う専用の機器の管理なども業務のひとつで、高度放射線医療のスペシャリストと呼べる仕事です。診療放射線技師は、厚生労働省が認定する国家資格です。大学や養成学校などで診療放射線技師養成課程を修了すると受験資格が与えられます。
地方公務員の診療放射線技師は、公立の病院や研究所などで勤務しますが、各自治体や公的機関が実施する採用試験に合格する必要があります。
管理栄養士・栄養士・学校栄養士
管理栄養士や栄養士は栄養学のスペシャリストとして、栄養管理や計画、指導を行う職種です。栄養士の中でも、管理栄養士は厚生労働省が認定する国家資格ですので、「管理栄養士国家試験」に合格する必要があります。一方、栄養士は、専門学校などで2年以上の栄養士養成課程を修了し、都道府県知事に申請すると認定される資格です。
地方公務員の管理栄養士や栄養士は、更に自治体の管理栄養士採用試験や栄養士採用試験に合格する必要があり、採用後は自治体が運営する公立の学校や、病院、保健所、保健センターなどで勤務します。
公安系職種の地方公務員
地方公務員の「公安系職種」には「警察官」「消防官」が該当します。地域の安全を守ったり、犯罪や火災を予防するために人々へ防犯教育や防災教育活動も行います。
警察官は都道府県職員ですが、消防官(消防職)は市役所職員です。ただし、東京都の場合、警察官は警視庁職員となり、消防官は一部の市を除き、東京消防庁の職員として採用されます。
警察官
警察官として働く人は皆、公務員ですが、その中でも地方公務員の警察官は、各都道府県警に所属し、同都道府県内の警察署や交番、派出所、運転免許センターなどに勤務します。警察官は高卒程度から採用試験を受験できますが、受験資格として、身体基準が設けられていますので、受験する際は身体基準に自身が該当しているか確認が必要です。
国家公務員の警察官に対して、いわゆる街の「おまわりさん」として、人々に身近な頼れる存在が地方公務員の警察官の象徴的な姿であると言えます。
消防官
消防官は、火災や事故、災害などから人々の命を守る仕事です。日頃から市民への防災教育を行う業務もあります。消防官になるには、各市町村の消防官採用試験に合格する必要があり、高卒程度から受験可能です。受験資格として、身体基準や年齢制限が設けられていますので、各自治体の採用案内で確認が必要です。
採用後は消防学校での訓練を経て、各市町村内の消防署等で勤務します。
まとめ
このページでは、地方公務員の職種を大きく4つに分けてご紹介しました。
一口に地方公務員といっても、様々な職種があります。基本的にそれぞれの公務員試験を受けて採用される必要がある地方公務員ですが、中には、職業に必要な免許を取得した上で、更に公務員試験や採用試験を受験する職種もあります。そういう職種は試験対策が二重に必要になりますので、採用されるためには相当の努力が必要だと言えるでしょう。
しかし、その努力の末、晴れて採用が決まると、公共のために働くというやりがいや、公務員としての安定性を得ることができます。そのため、狭き門となっている職種も少なくありません。
地域の人々のために、あらゆる方向から暮らしを支える地方公務員は、どの職種も大変やりがいのある魅力的な仕事ではないでしょうか。
コメント
コメント一覧 (19件)
地方公務員というと事務系のイメージが強かったのですが、いろいろな種類があることや、その業種によって何を主にするのかがとても分かりやすかったです。また、技術職の業務に欠かせない「入札」について知らなかったので、この機会に知ることが出来てよかったです。
国家資格が必要な職業なども見れるので、これから目指そうとしている人の役にも立ちそうです。
ただ、実際にどのような場所で働いているのか、どのようなモノづくりや業務を行っているのかという写真がなかったため、細かな仕事内容がイメージしづらかったです。各職業でリンクを付けて、詳細はこちらといった誘導があるといいかなと感じました。
地方公務員の職種に興味があったので閲覧しました。事務系、技術系、警察官などは想定内だったのですが、驚いたのは、幼稚園の先生や保育士さんも公立の幼稚園や保育園で働く方であれば、地方公務員だということです。認可保育園であれば公立と私立があるわけですが、公立の場合は、地方自治体の採用試験に合格する必要があることも今更ながら知りました。
公務員に種類があることは知っていたが、細かく区分されていることを知らなかったため為になりました。志望者が多いと思われる地方公務員の「事務系職種」の中でも地方上級や市役所職員について別ページがあるのも、より詳しく知りたい人にはいいと思います。
都心部から地方に戻りたくても、「仕事がない」などでなかなか難しかったりしますが、地方公務員の種類が意外と多いことがわかり、考える時の選択肢が広がった気がします。
地方公務員については知っているようでよく知らなかったことに気づかされました。公務員のいうと事務職のイメージが強いため、それ以外の職種も具体的に紹介されている点がよかったと思います。
国家公務員と地方公務員のくくりしか知らなかったので、結構ためになりました。4つに分類できることを知れて分かりやすかったです。
地方公務員にはどんな種類がある?と言うテーマで技能現業職等の比較的なりやすい公務員も紹介されている形でありましたので、色々地方公務員の枠組みを知ることができて良かったです。
公務員に関しては地方を含め遠い世界のことだと思っていました。でもどんな方達が働いているかを知るのはとても大切なことだと思います。
公務員には国家公務員と地方公務員がある事を知り、違いを知った上で自身の興味のある職種は地方公務員だとわかったのでより深く知る事ができた。
知っているようで意外と知らない部分だったので、改めてちゃんとした事がわかりとても参考になりました。詳しく書いてあるので為になりました。
何となくイメージはできるが、実際どれくらい種類があるのか理解できていない部分がたくさんあった。地方公務員といっても専門的な部分が多いと感じた。
普段公務員といっても漠然と捉えていたので、わかりやすく公務員の職種を分類して説明されていたのがよかった。正直なところ「土木」という分類は想定外だったので、、参考になった。
地方公務員の職種にどのようなものがあるのか、分かりやすくまとまっていると思います。各職種の説明の最後に、その職種のページへのリンクが貼ってあるのも良いです。
地方公務員と聞いて、行政職だけだと思っていましたが、様々な職種があることを知りました。保育士などの資格を所持していていないとできないことや人気があるから、狭き門となるのは納得しました。
地方公務員には、これだけの業種があると知り驚きました。
特に化学職の仕事には興味が沸き、もう少し詳しく知りたいと思います。
特に技術系公務になじみがなかったため、具体的な職種を知れてよかったです。資格が必要な点も知っていましたが、すでに持っている資格が活用できることも知れたため、今後に生かすことができると感じました。
実際に「公務員」といっても、正確な種類までは把握しておらず、人気だからこの職業の公務員がいいというような考えでしたので、細部まで種類や行っている概要が知れてよかったです。
地方公務員といえば市役所のイメージで全国転勤がないことくらいしか知りませんでしたが、事務系と技術系があり、インフラ、教育、医療、公安と様々な分野で公務員を目指すことができるということを改めて知りました。子供が中学生くらいになったら教えてあげたいです。
地方公務員のお仕事の種類で地域の活動の奉仕活動や学校行事の準備など分かりやすく書かれていてとても読みやすかったです。地方公務員の待遇面など少し知りたくなりました。