はじめに – 「朝の会」「帰りの会」とは?
「これから朝の会を始めます」『はい!』
「朝の挨拶、みなさん立ちましょう」
「おはようございます!」『おはようございます!』
「みなさん座りましょう」
…日直が黒板の前に立って、挨拶から始まる「朝の会」。
読者の皆さんも、日本の小学校に通っていたら、おそらくこうした「朝の会」を経験されたのではないでしょうか?
「明日も元気に登校しましょう!」『はい!』
「さようなら!」『さようなら!!』
学校が終わってするのは「帰りの会」。これも皆さん経験があったはずです。
「早く家に帰って遊びに行きたい!」「あ~これから習い事か」…など、色々な気持ちで参加されていたのではないでしょうか。
小学校教員の目線で、改めてこの「朝の会」「帰りの会」というシステムを見直すと、教師の仕事について色々と考え直すことができます。なにより、地域や教師1人1人によって、かなり文化が色濃く出てきます。
筆者は、副担任という立場で、自分以外の先生方の「朝の会」「帰りの会」を見てきました。そうした経験を活かして、今回は小学校教員の仕事目線で、「朝の会」「帰りの会」の教師の仕事について、徹底解説をしていきます。
「朝の会」「帰りの会」あるある―「1分間スピーチ」「朝の歌」
読者の皆さんは、これまでの経験から、「朝の会」「帰りの会」で行ってきたことを全て挙げてください―と言われたら、どれだけの内容が出てくるでしょうか?
まずは、「朝の会」「帰りの会」あるあるについて、話してみようと思います。以下のうち、読者の皆さんはいくつ経験されたでしょうか?
日直が「1分間スピーチ」をする
説明するまでもないですが、日直とは「朝の会」「帰りの会」の司会をはじめ、授業の号令をかけたり花の水やりをしたりする当番のことです。
1日に2人程度、出席番号・名簿・座席順など持ち回りで担当することが多いと思います。黒板の右下に、今日の日直が誰かが書かれていることも多いはずです。
この日直が、朝の会で「1分間スピーチ」をするということがよくあります。
1分間でどんなテーマで話すかは、きっと担任の先生によって異なるでしょう。学校行事で楽しかったこと、習い事のこと、好きな物のこと…など、クラス全員に向かって話をします。話し終わったら「質問タイム」などをとって、日直へ質問をぶつけて、回答するなど、色々な工夫もあると思います。
日直の前夜はドキドキしながら、おうちの人にも何を話すかと相談することも多いようです。
いわゆる「カンペ」を持ってきて話したり、ズボンのすそを握って、もじもじしながら一生懸命に話す子もいます。
健康観察で「はい元気です!」と言う
「朝の会」で欠かせないのが健康観察。
欠席者を確認するのはもちろんですが、風邪などひいていないかを担任が確認します。
たいてい、その際の返事は「はい元気です!」と答えるのが定型だったりします。時に、1日のエネルギーをここで使い果たす程の「はい元気です!!!!!!」を言う子もいるのが、学校の教室の風物詩であることも…(笑)。
健康観察でハンカチ・ティッシュの点検をする
ハンカチ・ティッシュを持ってきているかどうか、健康観察の前後に点検することがよくあります。
「はい元気です!」と一緒に、担任にハンカチ・ティッシュを両手に持ってアピールすることもあります。保健係が、机に出ているものをチェックしたりすることもあります。
手を洗った後にズボンで拭いちゃったり、鼻水を袖で拭っちゃったり…子どもならではの風景かもしれませんが、衛生上やはり問題なので、こういう点検を「朝の会」に行うこともあるあるです。
「朝の歌」を歌う
学級に1台、CDラジカセなどがおいてあり、CDを流してメロディーにのせて歌を歌います。
学校で「今月の歌」などの名前で、学年ごとで今月に何を歌うかが指定されていることもあります。また、学級で好きな歌を決めて、最新J-POPを歌うこともあるようです。
番外編:「朝のストレッチ」をする
体育を専門とする教員は、ラジオ体操ならぬ「朝のストレッチ」をすることもあるとのことです。
もちろんメニューもその先生独自のものです。
さて、皆さんはいくつ「あるある」が当てはまったでしょうか?
「朝の会」「帰りの会」の意味を改めて考えてみる
子どものときは、存在していて当たり前だった「朝の会」「帰りの会」。
社会に出たら、朝礼などを行う会社もあるかもしれませんね。時々、「この居酒屋の朝礼がスゴイ」などと話題になることもあります。
しかし、最近は「働き方改革」の言葉のように、働く時間も柔軟になってきていることもあり、朝礼を行う会社も年々少なくっているのではないでしょうか。
こうした現代ですから、「朝の会」「帰りの会」の意味を改めて考えてみることも大事であるはずです。
そもそも、教育を受けるという経験は全員あるわけですが、全員が教育をする側になったことがあるわけではありません。
実は、この「朝の会」「帰りの会」にも、色々な意味があります。もちろん、それは教育を受けた経験があるために想像しやすいこともありますが、この会を進めるにあたって、担任がどこまで入るか・入らないか…というだけでも、その教室の1年間の空気が変わるといっても、過言ではないと思います。
では、具体的に「朝の会」「帰りの会」には、どのような意味があるのでしょうか。様々な場面に分けて、考えていきましょう。
「命」を預かっているという責任を果たすため
小学校教員、特に担任は、教室の子どもの数だけ、子どもの「命」を預かっています。まだまだ元気で多感な時期ですから、どこで危険なことが起きるかわかりません。中には、「皆勤賞」を取りたいからといって、無理に熱があっても登校する子もいます(※最近はこういう流れもあり、皆勤賞というものを見直している学校も多いのは事実ですが…)。
そこで、登校した子たちの名前を1人1人呼んで表情を見て、状態を確認するというのは、小学校教員として非常に大切な仕事です。
高学年になると、6年生は12歳にもなる訳ですから、そこまで丁寧に見ることはないかもしれません。もちろん、朝に1人1人が教室全体で声を出すという機会となる訳ですから、教室での所属感を出すなどの教育的な意味もあるかもしれません。
それよりも何よりも、「朝の会」「帰りの会」がある意味は、健康状態の確認が第一にあるのではないかと思います。
よい1日のスタートを切り、よい1日の締めくくりにするため
「あー学校行くの嫌だなー」
「夏休みやったー!学校行かなくていい!」
子どもの素朴な声だと思いますが、実は学校に行ったら行ったで面白いこともあるのが普通だと思います。行くまでが大変だけど、行ったら楽しい。
こうした気持ちを少しでも汲み取って、よい1日のスタートを切り、よい1日の締めくくりにするのが、「朝の会」「帰りの会」の意味だと考えています。
必ず「先生の話」などの時間もあるため、ここで担任はつい長く話をしてしまいがちですが、本来の「朝の会」「帰りの会」の意味を考えたら、「担任の言うことを聞き従わせるための準備時間」ではないというのは紛れもない事実です。
しかし、学校で働く目線になると、日々が本当に忙しくなって追われてしまった結果、「朝の会」「帰りの会」で思い通りにいかない自分に腹が立ち、つい子どもに怒ってしまうこともしばしばあります。教師になったら、きっとこの感覚は誰しも経験するはずです。
最近は、学力を保障するという傾向で、「朝読書」「朝学習」などを「朝の会」と併せて行うことも多いです。もちろん、読書好きの子はそれでもよいため否定はしません。朝学習も、タイムトライアルをして工夫して楽しくやって、学力を保障することも大切なため否定はしません。
何よりも大切なことは、「朝の会」「帰りの会」でいかに子どもたちが良い気持ちになるか。そのためには、担任が朝の会で一緒に楽しく歌ったり、健康観察で子どもの名前を元気に呼んであげたり…と色々な工夫が必要です。
もちろん、教師にも1人1人キャラクターがあるわけですから、雰囲気作りも人それぞれあってよいとは思います。しかし、仕事である以上、教師が「昨日嫌なことがあったから…」と暗い顔で教室に入ってしまうのはまずいです。
子どもたちが自主的に楽しむ雰囲気を大切にしたいのであれば、あえて「朝の会」「帰りの会」で教室に入るのを遅らせるというのも、戦略としてはアリです。
子どもは緩みがちになってしまうので、先に述べたような健康状態と矛盾が起きてしまうかもしれません。例えば、担任不在の時に子どもが教室でケガをしてしまったら…?その際の責任はだれがとるのでしょうか。
繰り返しになりますが、よい1日のスタートを切り、よい1日の締めくくりにするために、教師がそれぞれ工夫して・悩んで・試行錯誤して「朝の会」「帰りの会」を行っているのです。
まとめ
教師目線で見る「朝の会」「帰りの会」、いかがでしたでしょうか。
「朝の会」「帰りの会」という、学校生活ではほんの些細な時間ではありますが、どのようにその意味を考えていくかと問いを重ねると、非常に深いものであると感じて頂けたのではないでしょうか。
全員の教師がその意味を考えているかどうかはわかりませんが、ぜひ自分が受けてきた学校の当たり前について、一歩引いて仕事をとして捉え直す機会になって頂ければ、この上ない喜びです。
ぜひ、一緒に教師という仕事をしていき、素敵な「朝の会」「帰りの会」ができるようにしていきましょう!
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