アメリカ大統領選で早くも混乱頻発!開票を巡る問題点とは?

2020年11月3日に行われるアメリカ大統領選挙に向けて、「期日前投票」や「郵便投票」が始まっています。

本記事では、2020年アメリカ大統領選挙における「開票問題」について、アメリカ在住の日本人にレポートいただきました。


はじめに

アメリカでは2020年11月3日の投票日を前に「期日前投票」や「郵便投票」がスタートしており、早い州ではすでに開票が始まっています。

今回の大統領選は新型コロナウイルスの影響によって郵便投票の数が急増しており、場所によっては開票に手間取り、集計が追いつかない事態になると見られています。

また、郵便投票と対面投票において開票に差が生じて、大勢の判明が遅れることや、一度判明した大勢が覆ることも予想されており、早くも混乱の様相です。

今回は、大統領選本番を前に浮き彫りになりつつある投票制度や、これに関連する影響について解説します。2020年の大統領選は「一筋縄ではいかない」と言われる背景が分かるようになります。

2020年アメリカ大統領選挙の概要

はじめに、大統領選の勝敗を決めるポイントをおさらいしておきましょう。

ポイントは選挙人獲得数

2020年のアメリカ大統領選は11月3日に投票、開票される予定です。各州の人口によってあらかじめ割り当てられた「選挙人」を過半数以上獲得した候補者が勝利します。

選挙人は全米で538名、その過半数は270名ですから、270名分の選挙人を獲得した方が勝者となります。それぞれの州で1票でも多い方が、すべての選挙人を獲得できる「勝者総取り方式」です。

2020年アメリカ大統領選挙の勝負を左右するのは「スイングステート」

選挙人の数は各州で大きく異なり、最も多いのがカリフォルニア州の55名、次いでテキサス州の38名、そしてフロリダ州の29名といった感じです。それぞれの候補者は、少しでも選挙人が多い州で勝利することが肝心ですが、各州で「支持政党の傾向」があります。

例えば、カリフォルニア州は圧倒的に民主党が強いため、トランプ大統領率いる共和党は同州では勝負しません。(どうせ勝てないから重視していない)対照的に、もともと共和党が強く、選挙人が多いテキサス州やフロリダ州で重点的に選挙活動します。

なかには、大統領選の度に支持政党が入れ替わる「スイングステート」と呼ばれる州もあります。フロリダ州、ペンシルベニア州、オハイオ州などが対象で、これらの州で勝利することが大統領選の結果を左右すると言っても過言ではありません。

とくに、2020年の大統領選ではフロリダ州やミシガン州、ウィスコンシン州、ペンシルベニア州などが「注目州」とされており、両陣営ともこれらの州で選挙活動を注力しています。


このように、アメリカの大統領選は50州で「選挙人を獲得」することが最重要で、スイングステートと呼ばれる注目州で勝利することが結果に大きく影響します。

》アメリカ大統領選でよく聞く「スイングステート」とは?

アメリカ大統領選挙の報道などで「スイングステート」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?本記事では、アメリカ大統領選挙を左右する「スイングステート」について詳しく解説していきます。

混乱必須の2020年アメリカ大統領選挙

2020年の大統領選は、ただでさえ混戦模様と言われてきましたが、新型コロナウイルスの影響でこれまでとは大きく異なる選挙になりそうです。

集計が遅れる公算が大きい

最も懸念される混乱が「集計の遅れ」です。

今回の大統領選は11月3日が投票日と決められていますが、実は各州で定めた州法によって投票開始日や開票日、投票方法などが異なり、全米で統一された方法が採用されている訳ではありません。これが原因で従来の大統領選よりも混乱が生じやすいとされています。

例えば、筆者が暮らすアリゾナ州では、期日前投票は10月20日から始まり、11月3日以前に集計可能です。そのため、大勢が早い段階で判明します。一方で、ネバダ州は期日前投票の集計を禁じており、郵便投票の締め切りは11月10日としていることから、大勢が判明するまでに時間がかかります。

他にも、選挙人が多く、スイングステートの代表格であるペンシルベニア州は、郵便投票の締め切りを11月6日にしており、こちらも大勢が判明するまでに時間を要します。(注目州なので集計に慎重さも問われる)

このように、州ごとに異なる投票および開票ルールが原因で集計が遅れる可能性が指摘されています。

郵便投票が増えたことによる混乱

2020年の大統領選は、従来の選挙よりも郵便投票を利用する人が増えたことが特徴です。

U.S. Elections Projectの発表によると、期日前投票を済ませた人は74,780,116人で、そのうち49,284,190人が郵便投票を利用したとあります。この数字は投票所で投票した25,495,926人を大幅に上回っていることから、今回の大統領選では郵便投票の割合が大きいことがよく分かります。(10月28日時点)

これは、新型コロナウイルスの感染を恐れた人が利用したことや、メディアや民主党が郵便投票を積極的に奨めたことが影響しています。

郵便投票は若者や忙しい人でも手軽に投票できることから、全体的な投票数を押し上げる要因です。一方で、事前に登録した署名との照合や、投票資格の確認作業などが必要なため、非常に時間がかかる側面もあります。

このことから、郵便投票の数が増えるほど集計に時間がかかり、投票の正確さも求められるようになります。また、先述したように州ごとに郵便投票の締め切りが異なることも、大勢の判明を遅らせます。

この結果、正確な開票がなされていない時点で勝利宣言する可能性もあり、大勢が覆ってしまう懸念も指摘されています。


結果は法廷闘争で決着か

劣勢とされているトランプ陣営としては「郵便投票の不正確さ」を指摘することで、投票結果を裁判に持ち込んで決着させることを視野に入れています。

この計画の伏線として、郵便投票を「不正の温床」と非難し続けて印象操作していることや、裁判に持ち込んだ場合に有利になるよう、最高裁判事に保守派の人物(エイミー・バレット氏)を就任させました。

逆を言えば、トランプ陣営にとって郵便投票は不利な材料であることを認めていると言えます。そして、郵便投票が敗北の決定打になったとしても、裁判で挽回できるシナリオを立てたという訳です。

対照的に、民主党のバイデン氏は郵便投票が増えるほど、普段は選挙に無関心な若者やリベラル層からの票を獲得しやすいことから、新型コロナウイルス感染防止を口実に郵便投票で選挙に参加するよう呼びかけています。

勝手な勝利宣言が起きる可能性もある

今回の大統領選は州ごとに異なる開票ルールや、郵便投票の増加によって開票がスムーズにいかない可能性があります。この結果、明確に大勢が判明していないうちから、どちらかの候補者が勝手に勝利宣言してしまうかもしれないと言われています。

具体的には、2016年の大統領選でトランプ陣営が制した「ラストベルト(錆びた工業地帯)」のペンシルベニア州、ミシガン州、そしてウィスコンシン州などの激戦州において、トランプ陣営がリードした場合、トランプ陣営は勝利宣言してその時点で開票を一方的に打ち切る可能性があるとされています。

しかし、これらの州は期日前投票の結果集計を11月3日から始めると定めているため、集計には時間がかかります。そのため、はじめは投票日当日の投票結果をもとに勝利宣言したトランプ陣営は、時間の経過と共にリードを失って大勢が覆ってしまうかもしれないのです。

この現象を共和党のカラーである赤色に例えて「Red Mirage(赤い蜃気楼)」と呼びます。一見は勝利したように見えた州において、(集計に時間がかかる郵便投票の)開票が進むと、どんどん結果が変わってくる訳です。

事実、激戦州のペンシルベニア州は郵便投票の7割が民主党のバイデン氏の票と見られていることから、投票日当日の投票所による票だけで大勢は判断できません。

郵便投票の増加によって大勢が読みづらい状況になり、先走って勝利宣言してしまい、後に勝利宣言を取り下げることも起こりうるのが今回の大統領選です。

仮に、トランプ陣営が勝利宣言して開票を打ち切った場合、民主党のバイデン陣営は開票を続けるための裁判を起こすことになるでしょう。しかし、トランプ陣営はすでに「保守的な最高裁」を構築しているため、民主党は不利な戦いになるかもしれません。

まとめ

以上、「アメリカ大統領選で早くも混乱頻発!開票を巡る問題点とは?」でした。

今回の大統領選は新型コロナウイルスの感染防止を受けて郵便投票が積極的に活用されています。一方で、不正確な投票になりやすいことや、州ごとに開票ルールが異なることで大勢の判明に影響を与えそうです。

再選を目指すトランプ陣営にとって「郵便投票の攻略」を見越した布石は完璧です。トランプ陣営が描くシナリオがどのように展開されるかも大統領選の見所と言えるでしょう。

本記事は、2020年11月4日時点調査または公開された情報です。
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