はじめに
2021年1月6日、アメリカの首都ワシントンD.C.に多くのトランプ支持者らが集結し、大統領選における不正を訴えた抗議デモ「Stop the Steal(不正をやめろ)」を実施しました。
この抗議デモにより5名が死亡し、議事堂は3時間あまりにわたって占拠される事態になったことから、デモ隊を扇動したトランプ大統領を罷免する動きが活発化しています。
トランプ大統領は残りわずかの任期でありながら、史上初となる在任中に2度も弾劾訴追されるかもしれない瀬戸際です。一方で、トランプ大統領に近いある人物もSNSのアカウントを永久凍結されるなど、トランプ大統領周辺は注目を集めています。
いま注目されている人物こそ「リン・ウッド弁護士」です。同氏はトランプ大統領の代理人として、不正選挙を巡る結果認定阻止に動いている人物として知られていますが、いったいどのような人物なのでしょうか?
トランプ大統領を支え続けるリン・ウッド弁護士について解説します。
リン・ウッドの略歴
リン・ウッド氏(Lucian Lincoln “Lin” Wood Jr.)は、1952年生まれで現在はジョージア州のアトランタを拠点に弁護士として活躍しています。1977年から現在まで弁護士を本業とする一方で、近年では保守的な立場の政治評論家、陰謀論を唱える陰謀論者としても有名です。
同氏の名前が全米に広まったのは、1996年にアトランタで発生した「センテニアルオリンピック公園爆破事件(死者2名・負傷者111名)」で誤認逮捕された警備員リチャード・ジュエル氏を弁護したことに始まります。
この事件は、公園の警備員だったリチャード・ジュエル氏が爆発物を見つけて多くの命を救ったとされたものの、FBIによる悪意に満ちた不当な捜査によって容疑者にされ逮捕されてしまったものです。(2020年にクリント・イーストウッド監督により映画化されている)
リン・ウッド氏は、英雄から犯人になってしまったリチャード・ジュエル氏を弁護したことから「名誉毀損の弁護士」として名を広めました。
一方で、トランプ政権発足後はツイッターなどのSNSを中心にして、トランプ大統領を擁護する内容を投稿したり、中国共産党によって不正選挙が実施されたなど陰謀論を繰り返し主張する人物として知られています。
同氏は、民主党やその支持者からは「厄介者」扱いを受けていますが、トランプ支持者や陰謀論者たちの間では「英雄」のような扱いを受けていることが特徴です。
リン・ウッド氏が注目される理由
リン・ウッド氏が注目されている理由は主に3つあります。
ひとつは「トランプ大統領の代理人」であること、ふたつめが「大統領選の結果認定を阻止しようとしていること」、そして「陰謀論を主張していること」です。
理由その1:トランプ大統領の代理人をしている
同氏は2020年11月に実施された大統領選で不正があったことを訴え続けているトランプ大統領の代理人を務めています。代理人として同氏は、票差が僅かだった激戦州での集計やり直しや、再投票などを訴えた訴訟に関与しています。
ペンシルバニア州のように、コロナウイルス感染拡大を理由に州法の域を超越して郵便投票を拡大したことや、開票作業の際に共和党関係者の立ち入りを阻止したことなど、大統領選に関する様々な手続きが不正に繋がったことを主張していました。
おおよそ1ヶ月にわたって続けられたトランプ陣営による法廷闘争を牛耳っていたひとりが同氏という訳です。
理由その2:大統領選の結果認定を阻止しようとしている
リン・ウッド氏は大統領選の結果認定を阻止するための活動に積極的です。なかでも「戒厳令(martial law)」の発令によって、投票のやり直しを発案した中心人物として注目されました。
同氏は、選挙結果を覆すための法的な対抗措置を失ったトランプ陣営に対して、一時的に(一部の)憲法や法律の効力を停止したうえで行政権を軍に移行する「戒厳令」の発令を進言したとされています。(トランプ大統領はフェイクニュースと主張している)
この際のメンバーは、マイケル・フリン元大統領補佐官やシドニー・パウエル弁護士らで、いずれもトランプ支持者、そして陰謀論者です。
また、リン・ウッド氏はマイケル・フリン氏と協力し、戒厳令を使って再び投票をやり直すことなどを主張したウェブサイト「We the People」を設立しました。そのなかで、南北戦争時代にリンカーン大統領がアメリカ国民を守るために戒厳令を発令したことを引き合いに出して戒厳令を正当化しています。
他にも、シドニー・パウエル弁護士と一緒に不正選挙を告発するためのウェブサイト「KRAKEN-WOOD」を立ち上げており、不正を訴えています。
リン・ウッド氏はこのような積極的な行動に加え、ツイッターやParler(パーラー)などで「アメリカは内戦に向かっているぞ」といった過激な内容の投稿を繰り返すことから注目されています。
理由その3:陰謀論を主張している
リン・ウッド氏はトランプ大統領の支持や不正選挙以外にも様々な陰謀論を主張しています。
現在では該当の投稿を見られませんが、ジョー・バイデン次期大統領やバラク・オバマ氏、ヒラリー・クリントン氏(いずれも民主党)などをはじめとする政府関係者が性的人身売買に関与していることや、小児性愛者であると主張しています。
これらの主張には膨大な裏付け資料があるとされていますが、いずれも公表されておらず信ぴょう性に欠けると指摘されています。(裏付け資料が公表できないように破棄された可能性もある)
他にも、ペンス副大統領がトランプ大統領を裏切ることの予測(選挙人投票開票日に実質的な裏切りがあった)や、中国共産党が2、30年かけてアメリカ乗っ取りを計画し、州政府高官と関係を築いてきたなどを主張しています。(トランプ政権の終焉で中国の計画は成功したとみられている)
これらの主張は民主党支持者からすれば荒唐無稽な話として片付けられてしまいますが、トランプ支持者や陰謀論賛同者からすれば、あながち無視できないことです。それ故に同氏の主張が注目されている訳です。
世間はリン・ウッド氏をどう見ているのか?
リン・ウッド氏はアメリカ世論から注目されているものの、その目は冷たいものと言って良いでしょう。
先述したように、同氏の発言は次期政権(民主党)に批判的で、過激な内容や証拠に乏しい内容が多く、不用意にトランプ支持者を扇動していると見られています。事実、同氏のツイッターアカウントは永久凍結されました。(皮肉にもトランプ大統領のアカウントが永久凍結されたのと同じタイミング)
また、ツイッターの代替えSNSとして同氏をはじめトランプ支持者が利用していたParlerさえもサービス自体が無効化されてしまい、同氏の投稿は見られない状態です。(アメリカ在住の筆者のParlerも無効化されている)
このように、主要SNSでの発言を封じられたことで、同氏への風当たりは強いことがよく分かります。トランプ大統領とまったく同じで「言論の自由」が抑圧されています。
同氏は新たなSNSとしてClout Hubを開設し発言を続けていますが、本人確認はできていません。また、アメリカ人ではParlerのように「サービスの無効化」が起きていることから、トランプ支持者に対する圧力は増していると言えます。
まとめ
以上、「トランプ大統領の代理人リン・ウッド弁護士とは?」でした。
リン・ウッド氏は、単なるトランプ支持者や代理人という訳ではありません。とくに、陰謀論を主張していることは多くの人から注目を集めています。しかしながら、政権やSNSなどは民主党の息がかかっていることから、同氏の主張はことごとく抑圧されています。
民主主義大国をうたうアメリカですが、言論の自由を奪う民主主義らしからぬ行為が目立っています。
トランプ政権が終わっても同氏の言動には注目したいところです。同時に、同氏の発言抑制がどこまで続くのか、アメリカの民主主義の価値が問われています。
参考資料サイト
KRAKEN-WOOD
(https://kraken-wood.com/)
We the People
https://wethepeopleconvention.org/
WTPC Calls for Trump to Declare Limited Martial Law
https://wethepeopleconvention.org/articles/WTPC-Urges-Limited-Martial-Law
Clout Hub
https://app.clouthub.com/public/fdaea5e7-e94e-4074-923f-26bed2d01d0d
映画「リチャード・ジュエル」
https://wwws.warnerbros.co.jp/richard-jewelljp/
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