「国家公務員総合職」とは?
「国家公務員総合職」とは、その名の通り、国家公務員の総合職で、国の機関に所属する公務員の中でも、幹部クラスや幹部候補生として経験を積むエリート職種です。俗に「キャリア官僚」とも呼ばれています。
なお「国家公務員総合職は」、過去には「国家I種」という名称で呼ばれていた職種です。現在は「国家総合職」「国家総合」などとも呼ばれています。
「国家総合職」が「キャリア」なのに対し、「国家一般職」は「ノンキャリア」と区別されるのをドラマなどで耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
「国家総合」の具体的な仕事の内容は、政策の立案や制度の企画など、未来の日本を設計すると言っても過言ではないような、日本行政の事務業務の中心的役割を担当します。
日本の「公務員」の主な区分
日本の「公務員」は、「国家公務員」と「地方公務員」に分かれています。
▼人事院ホームページ
https://www.jinji.go.jp/pamfu/profeel/03_kazu.pdf
- 日本の公務員の大きな分類
- 国家公務員(一般職)
ー 総合職
ー 一般職
ー 専門職
国家公務員(特別職)
地方公務員(一般職)
ー 都道府県庁、政令指定都市など(地方上級)
ー 各市区町村の役所
地方公務員(特別職)
「国家公務員」の「特別職」と「一般職」
「国家公務員」を分けるとまず、総理大臣や国務大臣などの「特別職」と、それ以外の一般的な仕事を担当する職員の「一般職」に分かれます。
「国家公務員」の「一般職」の中の、「総合職」「一般職」「専門職」
そして「国家公務員の「一般職」の職種は、大きく「総合職」と「一般職」、「専門職」の3つに分かれています。「一般職」がまた出てくるのでややこしいのですが、「特別職・一般職」と分ける時と、「総合職・一般職・専門職」と分ける時とでは「一般」の意味が違うことに注意しておきましょう。
「国家公務員総合職」の採用区分
さらに、「国家公務員総合職」の「採用区分」には法文系、理工系農学系、教養といった区分があります。
それに加えて、学歴別の試験区分として、大学院卒業者対象の試験や社会人対象の試験があるなど、非常に細かく区分されています。
「国家公務員総合職」を目指す上では、「総合職」以外にも、一般職や、専門職があることや、自治体ごとに「地方公務員」が勤務しているということも押さえると良いでしょう。
「国家公務員総合職」の勤務地
国家公務員は、主に1府13省庁で構成される中央省庁のいずれか、もしくはその出先機関・関連機関に所属し、その府省庁や出先機関がそれぞれ担当する仕事に従事します。
「国家公務員」は日本の首都東京にある中央省庁勤務になる場合が多いのですが、国の出先機関は全国にあり、「国家公務員総合職」であっても全国各地、または海外出向職員として勤務する場合もあります。
「国家公務員総合職」の主な所属先となる1府13省庁の中央省庁
次に、「国家公務員総合職」の主な所属先となる、中央省庁の1府13省庁のについてご紹介します。
- 1府13省庁
- 内閣府
総務省 / 法務省外務省 / 財務省 / 文部科学省 / 厚生労働省 / 農林水産省 / 経済産業省 / 国土交通省 / 環境省 / 防衛省
国家公安委員会(警察庁)/ 復興庁
厳密にいうと、日本の中央省庁は1府11省2庁で構成されており、省と庁をひとつにまとめて「1府13省庁」と呼ばれることが多いようです。
「各省庁」は、民間でいう「別会社」のようなもの~縦割り行政~
「国家公務員総合職」が務める中央省庁は、省が違えば組織も風土も全く違う別会社のようなものです。
例えば「国土交通省」の職員は当然、「文部科学省」の職員と同じ国家公務員といえども、別のグループ会社の社員と考えてみてよいでしょう。それくらい省庁はそれぞれ独自の文化を持っています。
そして「文部科学省」の「国家公務員総合職」とは、この省が担当する仕事・業務の総合職として、勤務するということです。
「縦割り行政」などとよく聞くと思いますが、日本の行政の制度やその運営は、大きくはまず府省庁で分かれていて、それぞれの「国家公務員総合職」が自分たちの担当分野についてのトップの行政組織、つまり企業などで言う「本部」として業務に取り組んでいます。
「国家公務員総合職」は、民間企業の総合職と同様、所属する府省庁の総合的な役割を担うリーダー(幹部)または、その次期リーダーとして、所属する府省庁の業務を束ね、運営する役割を担っているのです。
例えば、国の政策やプロジェクトの企画や立案はもちろんのこと、その政策を実現する、言わば「プロジェクトマネージャー」としての活躍することが期待されているのが、エリートキャリア職である「国家公務員総合職」なのです。
「国家公務員総合職」になるには?
「国家総合職」になる方法と採用試験解説
「国家公務員総合職」になるためには、3つのステップがあります。
まず1つ目のステップは、「国家公務員総合職試験」を受験する資格を持つことです。
そして2つ目は、「国家公務員総合職採用試験」に合格することです。
最後に3つ目は、国家公務員を採用する中央省庁及びその出先機関に採用されることです。
それぞれのステップについて解説します。
ステップ1:「受験資格」の確認
まずは、「国家公務員総合職試験」を受験する「資格」についてです。
「国家公務員総合職」には、受験者の学歴別に「院卒者試験」と「大卒程度試験」という異なる2つの試験区分があります。このほかに、「社会人試験」もあります。
国家公務員試験を「受験できない」ケースについて
まず、「国家公務員試験」については「院卒者」と「大卒程度」のどちらの試験区分も共通して「受験できない者」が規定されています。「受験できない者」に該当する方は、国家公務員を目指そうにも受験できませんのでご注意ください。試験が受けられない方は次のとおりです。
- 国家公務員試験・受験できない者
- 【1】日本の国籍を有しない者
【2】 国家公務員法第38条の規定により国家公務員となることができない者
・ 成年被後見人、被保佐人(準禁治産者を含む)
・ 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまでの者又はその刑の執行猶予の期間中の者その他その執行を受けることがなくなるまでの者
・ 一般職の国家公務員として懲戒免職の処分を受け、その処分の日から2年を経過しない者
・ 日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者
【1】については、当然と思われる方も多いとは思いますが、日本の「国家公務員」になるためには日本の国籍が必要だということを説明しています。日本の国家のために、日本の税金をもって奉仕する、ということが大前提の「国家公務員」の身元は、日本の国籍を持つことが基本とされています。
この考え方は、「法治主義国家」の根幹となる考え方です。日本は「法治主義国家」ですので、国籍は「個人をその国の人間として国が認めるもの」であると同時に、その国籍を持つ本人も「その国籍を持つ国民として義務を果たし、法などのルールに則って生活する」という仕組みだとされています。
「国家公務員総合職試験(院卒者試験)」の受験資格
「国家公務員総合職試験」の「院卒者試験」の受験資格について説明します。
「院卒者試験」を受験するための年齢要件は30歳未満で、大学院修了及び大学院修了見込みの者であることが必要です。それに加えて、「法務区分」については、「司法試験の合格者」であることも要件になります。
「大卒程度試験」は、「程度」と付いているように、大学卒業は必須ではありません。年齢の条件は設定されていて、「21歳以上30歳未満の者」が年齢要件として規定されています。
ただし「教養区分」は「20歳の者も受験可」とされています。また、飛び級などの方を想定していると思われますが、「大学卒業および卒業見込み」の方は21歳未満でも受験可能のようです。
受験資格の年齢については、試験実施年度の4月1日現在における年齢です。
ステップ2:「国家公務員総合職採用試験」
そして2つ目のステップは「国家公務員総合職試験」に合格することです。試験の詳細について説明します。
「国家公務員総合職採用試験」の科目
これは、大学の全国共通のセンター試験に似ていますが、理系文系といったように受験科目が、自分の目指す系統で変わります。それを「試験の区分」といったり「区分」といったりします。
系統は理系・文系ではなく、事務系、技術系といったりますが、現在は、試験区分としては、法文系・理工系・農学系・教養の4つで定義するのが良さそうです。
- 法文系の試験区分
- ・行政
・政治、国際
・法律
・経済
・人間科学
- 理工系の試験区分
- ・工学
・数理科学、物理、地球科学
- 農学系の試験区分
- ・農業科学、水産
・農業農村工学
・森林、自然環境
- 教養
- ・教養
「国家公務員総合職採用試験」の試験区分(学歴別)
総合職試験は、主に、大学院卒業者向けの「院卒者試験」と「大卒程度試験」の大きく2つの試験区分で構成されます。
- 国家公務員の「総合職試験」
- 1)「院卒者試験」
2)「大卒程度試験」
さらに上述した、系統別の試験の区分を加えると下記のようになります。
- 国家公務員の「総合職試験」(試験の区分)
- 1)「院卒者試験」
行政
人間科学
工学
数理科学・物理・地球科学
化学・生物・薬学
農業科学・水産
農業農村工学
森林・自然環境
法務(秋試験)
2)「大卒程度試験」
政治・国際
法律
経済
人間科学
工学
数理科学・物理・地球科学
化学・生物・薬学
農業科学・水産
農業農村工学
森林・自然環境
教養(秋試験)
院卒者試験にも大卒程度にも「秋試験」と書かれている区分がありますが、こちらは文字通り秋に行われる試験で、大学入試でいう「後期試験」のようなものです。秋試験を第一志望に考える受験者は少ないかと思われますので、混乱された方は秋試験については一回無視して大丈夫です。
「国家総合」の採用試験は基本的には春に行われる試験がメインです。その春の基本日程に加えて、院卒では「法務」・大卒程度では「教養」というそれぞれ1区分の特殊な試験が秋に行われます。
「国家公務員総合職試験」の採用予定数
参考までに、過去の採用予定数として、「国家公務員総合職試験」の試験区分別の平成29年度採用予定数をご紹介します。
- 「国家公務員総合職試験」の試験区分別の平成29年度採用予定数
- 1)「院卒者試験」
行政 約70名
人間科学 約15名
工学 約85名
数理科学・物理・地球科学 約20名
化学・生物・薬学 約20名
農業科学・水産 約30名
農業農村工学 約5名
森林・自然環境 約20名
法務(秋試験)*平成28年4月1日採用実績:1名
2)「大卒程度試験」
政治・国際 約20名
法律 約180名
経済 約70名
人間科学 約10名
工学 約80名
数理科学・物理・地球科学 約10名
化学・生物・薬学 約15名
農業科学・水産 約25名
農業農村工学 約15名
森林・自然環境 約10名
教養(秋試験) *平成28年4月1日採用実績:58名
以上のように試験区分で採用予定人数に大きく差があります。
ステップ3:「官庁訪問と入庁」
最後に3つ目のステップが「官庁訪問」です。
「国家公務員総合職」は、試験に合格した時点ではまだ「就職」が決まっていません。「中央省庁(官庁・出先機関)」のいずれか1つに「入庁」が決まることが、「就職」が決まったということを意味します。
「入庁」するためには、試験合格後に「官庁訪問」という活動を行わなくてはなりません。
「官庁訪問」に参加できるのは「採用候補者名簿」に載った合格者のみ
「官庁訪問」の参加者が載っている「採用候補者名簿」とは、「国家公務員総合職試験」に合格した人が、成績順に掲載される名簿のことで、「官庁訪問」では基本的には成績優秀な上位者から採用されます。
しかし、名簿の上位だった場合でも、人気のある官庁を希望し、自分より上位の人で採用枠が埋まってしまうこともあります。その場合には、自分より試験の成績が悪かった人が他の比較的人気が無かった省庁に就職できたけれど、自分はどこにも就職できなかった、という可能性もあります。
「採用候補者名簿」に載ってからは、官庁訪問の資格が3年間有効となります。例えば、試験合格後、その年に就職しなくても、大学院に進学して修了してから官庁訪問をして、入庁(就職)することも可能ということです。また1年目の官庁訪問で残念ながら不採用となった場合でも、翌年に再度チャレンジができます。
「官庁訪問」の手順
「官庁訪問」とは、志望する府省を訪問し、業務説明や面接を受けるための機会です。
「官庁訪問」は、業務説明や面接を通じて、自分の志望する府省の内々定を得るためのプロセスで、「官庁訪問」のルールやスケジュールは、毎年各府省の申し合わせで決定されることになっています。
詳しくは、人事院のホームページ「国家公務員 試験採用情報NAVI」や志望する府省のホームページの採用ページで確認します。平成29年度では、クール制(第1クール~第5クール)で特定の期間(7月5日に開始し、内々定解禁が7月19日17時)に実施され、一定の訪問ルールに基づいて、複数、訪問することが可能でした。ただし。内々定を受けることができるのは原則1つの府省のみです。
正式採用内定は、10月1日解禁です。(※情報は平成29年度のものに基づいています。)
「国家公務員総合職採用試験」の最新情報はどこから入手する?
現在では、インターネットから最新の情報を取得するのが基本です。
政府(人事院)が運営する「国家公務員試験採用情報NAVI」や各府省庁のホームページの採用ページで、最新情報を見ることができます。
その他、公務員採用試験の受験スクール等からも情報を仕入れることが可能ですが、正確さを考慮すると、必ず受験する行政機関のホームページの情報を確認することをおすすめします。
▼人事院「国家公務員試験採用情報NAVI」
http://www.jinji.go.jp/saiyo/saiyo.htm
「国家総合職」の仕事内容
「国家総合」の仕事内容は所属する中央省庁や国の機関に応じて変わります。
しかし、「国家総合」はどの組織においても国の行政のリーダーとして、政策の提案、企画、そのための調査など、国家行政の核となる仕事を任されています。
「国家総合」として採用されると、将来の「幹部候補生」として、あらゆる経験を摘みながらキャリア官僚への道を進むことになります。よく言われるのは「スペシャリスト」のような知識を持ちながら、「ジェネラリスト」として広い視野と、あらゆる分野への理解が必要な仕事だとされているようです。
「国家総合」の採用試験について
「国家総合」の採用試験は、大きくは「院卒者試験」と「大卒程度試験」というように学歴によって分かれています。
学歴によるそれぞれの試験区分には、さらに専門分野ごとの「試験区分」があり、自分がどの試験区分で受験するのかを決めて対策する必要があります。
「国家総合」の採用試験の申し込みは、例年3月下旬から4月上旬までが締め切りで、4月下旬に「第一次試験」が行われます。5月下旬には一次試験合格者による「二次試験」が行われ、6月末には採用試験の最終合格者が発表されます。
最終合格すると、その後、6月から7月頃にかけて行われる「官庁訪問」に参加するための「採用候補者名簿」に載ることができ、各府省で行われる面接を受ける権利が得られます。
「国家総合職」合格者の多い大学一覧(平成29年度)
「国家総合職採用試験」を統括する「人事院」が発表した平成29年度(2017年度)の「国家公務員採用総合職試験」の出身学校別の合格者数をみると、1位が東大、2位京大、3位は早稲田大学でした。
下記のページでは、そのほかの大学についてもランキングをご紹介していますので、あわせてご覧ください。
「国家公務員総合職」のお給料
「国家公務員総合職」の給料や年収、初任給は、職種や合格した試験区分、採用された年によって異なります。公務員の中でも「エリート官僚」と呼ばれる「国家総合」のお給料は、他の国家公務員の職種に比べても高い傾向にあります。
しかし、それは平均的な収入の話であって、実際には「出世」できるかどうかも収入に大きく影響します。「国家総合」の出世後の年収についても次のページでご紹介します。
まとめ
いかがでしたか。
このページでは主に「国家公務員総合職」になるためのプロセスや採用試験について解説しました。
もし、大学入学前から公務員を目指しているという方は、大学入試の際にこのランキングも参考にされるといいと思います。必ずしも難易度の高い大学が公務員に強いとは限りませんので、将来を見据えた大学選びが重要になってきます。
もちろん公務員試験は最終的には自分の努力によって合否が左右されるとは思いますが、同じ大学の先輩が国家公務員の先輩として勤務しているということは、将来の自分のイメージを持ちやすいことにもつながりますし、勉強法や過去の試験内容の情報や、詳しい仕事内容を聞けるので、モチベーションにも繋がることがあります。
そして、より効率的に「公務員試験」の対策を進めるには情報収集が欠かせません。合格者数の多い大学に通う方もそうでない方も、「公務員試験情報」については、大学の就職課等にも相談する、人事院のサイトを見る、この「公務員総研」で研究するなどして、「国家公務員総合職」の合格を目指してください。
また、「国家公務員総合職」の勤務先や、給料などについては簡単にご紹介しましたので、ほかのページもあわせてご覧ください。
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