【県庁職員に聞きました!】県庁土木事務所の仕事について

本記事では、新卒で地方の県庁職員になったAさんに、県庁土木事務所の仕事内容についてコラムを書いていただきました。


はじめに

私は、新卒である地方の県庁職員(行政職)となり、約6年間の勤務を経て現在は民間企業で働いている者です。私の経験から県庁土木事務所の仕事についてご紹介します。

県庁土木事務所とは

県庁土木事務所は県庁の出先機関の1つで、県全域を管理する本庁と比べ、より地域・現場に近い立ち位置から、道路、河川、砂防、橋梁などの整備や維持管理を主に行っている職場です。

都道府県によっては建設事務所などとも呼称されます。いずれの場合も、都道府県内の各地域に設置されて、複数の市町村区域を管理範囲として担当しています。

一般的に本庁が施策の方針決定や予算管理を行う役割だとすると、出先機関である土木事務所はその方針に沿って具体的な行政事業である土木等の整備や維持管理を行うオペレーションの役割を担っていると言え、こうした土木等の事業を通じて県内の社会基盤・インフラづくりを進めています。

このような特性から、土木事務所には主に土木系の採用試験を経て入庁した技術職員が多数配置され、彼らが土木事務所の運営を主導しています。これは土木工事に必要な事前調査や設計、施工管理などに土木に関する専門知識が必要となるためで、反対にそういった専門知見のない事務職員は比較的小規模な配置となっています。

大学生の割合を見てもそうですが、通常理系の場合、男女比では男性の割合が大きいため、土木事務所においても男女比では本庁と比べると男性が多めの職場となっています。

県庁土木事務所の仕事

土木事務所では道路、河川、砂防、橋梁などの整備や維持管理を主に行っていることは既に述べたとおりですが、そのために必要な仕事を以下順にご紹介します。

仕事その1)企画調査

例として新たに道路、いわゆる県道を整備する場合、まずはどのような目的のもとにどこを通る道路を整備するかのグランドデザインを本庁の担当部局とともに企画します。

その際には、必要な工事場所の選定や必要な工法、予算規模などを調査し、スケジュールなども想定していくこととなります。また、その過程では本庁担当部局へ予算の割り当てを求めることを通じて、具体的な整備着手に関する事実上の意思決定を促していくことになります。

仕事その2)用地取得

道路整備の方針が決まると、次は道路を通す整備用地の取得を行っていきます。私有地を勝手に道路にしてしまうことはできないので、土地所有者の方に対して県への土地売却を交渉します。

場合によっては住宅や店舗などの立ち退きをお願いせねばならないケースもあり、その理解を求めることや補償額に納得いただくことなど簡単でない調整が必要となります。


仕事その3)工事・検査

用地が取得できると、工事に必要な事前の詳細調査や設計などを行い、整備工事を行います。

調査・設計や整備工事は、建設コンサルタント会社、建設会社にそれぞれ委託または請負工事として発注します。請負工事は進捗を随時確認し、工事完了時には最終的な検査を行い工事完成となります。

仕事その4)入札・契約・支払い

上記の調査・設計の委託や請負工事の発注にあたっては入札等の手続きを経て業者と契約を結ぶ必要があります。

一般的には競争入札と呼ばれる、予め土木事務所からの発注内容を示した上で、それに対してより低い入札価格を提示した業者が落札者となる手続きを経て、契約に進みます。

より重要度の高く金額も高額となるような発注の場合は、提示価格のみならず過去に施工した工事の評価や今回工事の施工法などのプレゼンテーションなどを総合的に評価して落札者を選定する場合もあります。

調査・設計の委託業務や請負工事が完成すると、業者より請求書を受け契約金額の支払手続きを行い、一連の整備工事は全て完了となります。

仕事その5)維持管理

完成した道路はそのあと実際の利用を開始することになりますが、つくりっぱなしではなく継続的に維持管理をしていく必要があります。

道路の場合は定期的にその道路をパトロールし、補修等が必要でないかなどを確認します。また、住民の方から連絡を受けて現場を確認す
ることもあります。

更に災害時には倒木や土砂などで道路が不通となることもあるため、そういった場合に備えて応急復旧のための維持管理契約を建設会社と結んでいたり、大規模復旧の工事を発注したり、建設した県道のメンテナンスは永続的に行います。

仕事その6)建設業の許可・更新

これまでの説明からもご理解いただけたと思いますが、土木事務所が行う工事は実際的に建設業者が受注して実行しています。これら建設業者の営業の新規許可や更新を行うのも土木事務所の仕事です。

建設業者は必要な資格者や財務要件を充足させた上で、土木事務所の申請を行い許可を得なければ基本的に営業ができません。土木事務所ではそれら形式的要件を満たしているかを確認し許可手続きを行っています。

まとめ

以上、一般的な土木事務所の仕事について県道工事を一例にご紹介しました。

このほか河川・砂防・橋梁等の工事・維持管理はもちろん、都市計画区域等での開発や屋外広告物などに関する許可手続き、宅地建物取引業・建築事務所に関する各種届出手続き、建築確認などなど…これらも土木事務所の守備範囲です。

ひと口に土木事務所と言っても幅広い仕事を扱っており、またそれを組織運営上マネージしていく総務部門もありますので、大勢の職員が働いていることがおわかりいただけるのではないでしょうか。

本記事は、2021年3月9日時点調査または公開された情報です。
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