アメリカの中間選挙とは?
アメリカの中間選挙とは上院議員の3分の1(補欠含む37名)、下院議員の全議席(435名)を改選するための選挙です。
中間選挙で大統領が変わることはなく、あくまでも上下両院の議員構成が入れ替わるだけです。
しかし、中間選挙の結果、与党と野党の比率が変わると、政権運営に影響を及ぼすことになります。結果が与党優勢(民主党)ならほとんど影響はありませんが、野党(共和党)が優勢になるとバイデン政権としては打撃です。
2022年の中間選挙の見どころとしては、支持率低迷が続くバイデン政権(民主党政権)がどのように評価されるのか、そしてトランプ元大統領または共和党の復権が現実的になるのかなどがあります。
アメリカの中間選挙は「現政権で良いのか、悪いのか」がはっきりする場と考えると良いでしょう。
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中間選挙について現地の様子は?
注目されるアメリカの中間選挙ですが、現地では様々な報道がされています。
報道の中心となっているのが「バイデン大統領の支持率」と「トランプ元大統領の動向」です。
バイデン大統領の支持率は低水準の40%
Quinnipiac University(コネチカット州)の最新調査結果によると、バイデン大統領の支持率は40%とあります。(有権者1,419名が対象)
同大学による前回の調査(2022年7月)では31%だったことから、中間選挙を2か月後に控え、上昇傾向にあることが分かります。
2024年の大統領選ではバイデン氏を望んでいない
支持率がわずかながら上昇傾向にあるバイデン大統領ですが、先述の調査結果を見ると「2024年大統領選挙ではバイデン氏の立候補を望まない」と回答した人が71%も占めています。
民主党支持者さえも51%がバイデンを望まないと回答しており、バイデン氏の求心力が低いことが顕著に表れています。
一方で、トランプ元大統領については64%が立候補を望まないと回答したものの、共和党支持者の69%は立候補を望んでいると回答しました。
このことは政権奪取を狙う共和党で、依然としてトランプ元大統領の影響力が強いことを表しています。
現在のアメリカの様子をひと言で表すならば「トランプでなければいい」という印象です。
民主党と共和党は拮抗状態
2022年の中間選挙においても民主党と共和党は拮抗状態にあると言えます。
Monmouth University(ニュージャージー州)が実施した調査結果では、民主党が多数派になることを望む人が50%だったことに対し、共和党を望んだ人は43%だったとあります。
一方、大手テレビ局のCBSの調査結果では、共和党候補者に投票すると回答した人が47%だったのに対し、民主党候補者と回答した人は45%と紹介しています。
このように、調査結果ごとに情勢が変わるため、民主党と共和党は拮抗していることが分かります。アメリカの選挙は常に拮抗するため、今回の中間選挙も予断を許さない状態と言えるでしょう。
中間選挙を見据えた各党の動き
アメリカではバイデン大統領が率いる民主党と、政権奪取を目指す共和党それぞれの動きが活発化しています。
直近の主な動きを紹介します。
学生ローン債務を大幅免除
2022年8月25日、バイデン大統領は学生ローン債務を一人当たり最大10,000ドル(約140万円)免除することを発表しました。
また、コロナ対策のひとつとして導入されていた学生ローン債務返済一時停止措置についても、同年末まで延長することを決めています。(バイデン政権では5回目の延長措置)
この恩恵を受けるアメリカ人は全国でおおよそ4,300万人いるとされ、そのうち2,000万人ほどが債務全額の免除になるとされています。
アメリカでは、高騰し続ける学費が払えずに学生ローンを組む人が大半で、卒業した時点で20,000ドルから40,000ドルほどの借金を抱えてしまうことが問題視されていました。
社会人になっても学生ローンの返済に追われ、さらには新たなローンが組めない(住宅ローンなど)ため、所得中間層の生活水準を下げているとも言われています。
バイデン大統領としては、学生ローンの返済に追われている若者層を厚遇することで、中間選挙での支持を獲得したい狙いがあります。(若者は民主党支持者が多い)一方で、記者から財源について説明を求められた際に「説明できない」と述べるなど、頼りない一面も見せています。
ちなみに、筆者の友人は医師として2年目ですが、200,000ドル超の学生ローンを抱えており、今回の免除措置については「嬉しいけれど…」という複雑な反応でした。
トランプ元大統領の疑惑追及
中間選挙を目前に控え、民主党の息がかかった司法省はトランプ元大統領の疑惑追及を強めています。
これはトランプ元大統領の罪を追及することが目的ではなく、中間選挙においてトランプ氏や共和党の印象を悪くすることが本当の狙いと考えられています。
バイデン政権としては、トランプ氏を糾弾する姿勢を見せることで、民主党支持者に対して絶好のアピールとなり、中間選挙での支持をより強固に出来る機会です。
中間選挙を前にしてトランプ氏の疑惑が追及されたのは以下の3点です。
- 2021年1月6日の議会選挙事件の扇動
- 脱税疑惑
- 機密情報持ち出し疑惑
いずれもトランプ氏が大統領時代に主体的に関与したとされているものです。
なかでも、機密情報持ち出し疑惑については、FBIによりトランプ氏の邸宅が家宅捜索され、184の機密情報を持ち出していたことが分かっています。
自宅から物的証拠が確認された以上、トランプ氏は言い逃れ出来ないと指摘する声もあり、トランプ氏にとっては打撃です。
トランプ氏の反応と出馬の行方
トランプ氏は自身のSNSで「魔女狩り」だとして一連の疑惑追及を批判していますが、多くの人が気にしているであろう、2024年の大統領選に出馬するかどうかについてはいまだに明言していません。
民主党としては、今回の疑惑追及を通してトランプ氏を有罪にすることで、大統領選に立候補出来ないようにしたいと考えています。
アメリカの連邦法では、公職者が機密文書などを意図的に隠すことは違法になるため、仮にトランプ氏が有罪になると公職復帰出来なくなります。
一方、大統領選に立候補出来る条件を定めているのは合衆国憲法であり連邦法ではありません。つまり、トランプ氏は連邦法に違反したとしても、合衆国憲法に違反した訳ではないため、大統領選には立候補出来る公算が大きいのです。
アメリカの法律制度らしく、連邦法と合衆国憲法をそれぞれ都合よく解釈することで、いかようにも対応出来るという訳です。
ちなみに、共和党支持者の友人は、今さらトランプ氏を叩く民主党の手口に嫌気がさすと言っていました。トランプ氏支持者でなくとも同じ印象を持った人は少なくないはずです。
バイデン大統領が演説を実施
2022年9月1日、バイデン大統領はフィラデルフィアにあるインデペンデンス国立歴史公園(1776年に独立宣言が採択された場所)で演説を実施しました。
演説は約24分間で、その内容の大半は「トランプ批判」に終始したものです。なかでも、トランプ氏を支持する人たちのキャッチフレーズである「MAGA(Make America Great Again)」は、アメリカを脅かす過激主義の象徴とまで述べ、痛烈に批判しました。
バイデン大統領はアメリカの結束を強調したかったのかもしれませんが、明らかにトランプ支持者を排除するような攻撃的な内容だったため、再び分断を深めた印象です。ましてや、アメリカ立国の地で分断を煽る発言に終始したのは強烈でした。
演説の後半では、就任から2年で以下の政策を実現させたことを強調しました。
- 総額2兆ドル(約280兆円)インフラ投資計画法(Build Back Better Framework)
- 28年振りとなる銃規制
- 医療制度改革
- 学生ローン債務免除 など
今回の演説内容が示すように、民主党としては「トランプ氏を立候補させない」そして「大型のインフレ対策を実施した」2つを強調させています。
演説では実績強調よりもトランプ批判の方が印象的だったため、国民がどのような印象を持ったかは疑問が残ります。
まとめ
アメリカの中間選挙を2か月後に控え、民主党と共和党は慌ただしくなってきました。しかし、報道の大半はトランプ元大統領の疑惑追及が中心になっており、民主党の意図を感じます。
結束を訴える一方で、トランプ支持者を排除しようとするバイデン大統領の姿勢がどのように捉えられるのか、2022年11月8日に明らかになるでしょう。
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