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製薬メーカーの「臨床開発職」についてのキャリア・レポート

準大手内資系製薬メーカーの臨床開発部で働く30代前半のキャリア・仕事内容についてインタビューしたものをご紹介します。

社員数約5千人の大手企業で、臨床試験を担当する臨床開発部の1日の仕事の流れや給料、製薬業界の展望などについて掲載しています。

2018年09月19日更新

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目次
会社・業種・職種と仕事内容について
仕事内容 1日について
年収やキャリアデザイン・働き方・初任給
業界展望(先行き)や会社の新しい試みなど
競合となる会社や商品について
まとめ
製薬メーカーの臨床開発職についてのキャリア・レポート

会社・業種・職種と仕事内容について

私は国内準大手の製薬メーカーの臨床開発部で働いています。

医療用医薬品を中心に、薬局やドラッグストアで販売される市販薬、健康補助食品等も販売していますが、売り上げの9割以上が医療用医薬品であり、会社を支える屋台骨になっています。社員数は約5千人で、国内のみならず米国や欧州、中国等の東アジアを中心に支社や工場があります。

それでは、私が所属する臨床開発部の業務とその中で担当している臨床推進業務について説明させて頂きます。

【臨床開発について】

臨床開発の仕事は、簡単に説明すると、研究所で創出された新薬候補化合物が細胞や動物を用いた非臨床試験で安全性、有効性が確認された後、ヒトを対象とした臨床試験において、安全性と有効性を確認していくことです。

臨床試験は、少数の健康成人男性や患者さんを対象として、新薬の安全性や推奨用量を確認する第Ⅰ相試験を経て、数十症例の患者さんを対象として主に新薬の用量と有効性との関係を確認する第II相試験を実施します。その後、会社が試験データを解析して開発を継続すると判断した場合、数百症例の患者さんを対象として新薬と既存薬を投与して有効性と安全性を検証する第III相試験を実施します。

第III相試験では、多くの患者さんに試験に参加してもらう必要があり、莫大な額の投資が必要になるため、第II相試験までのデータを慎重に検討することと、将来的な企業経営を見越した経営判断が求められます。製薬会社のIR情報には、開発している薬剤の試験データや開発の進行状況が詳しく説明されており、企業投資家が最も重視する情報となっています。

また、第III相試験では患者数が多く日本のみで症例を集めるのが難しいことと、承認された場合は、世界同時申請によりスピーディーにグローバル規模で販売を展開していくことが重要であるため、米国、欧米、アジアを含めた多数の国で試験を実施するのが、現在のスタンダードになっています。

【臨床試験推進業務について】

臨床開発を行う部署は大きく分けて、プロジェクトマネジメント部、データマネジメント・統計解析部、メディカルライティング部、そして私の所属する臨床試験推進部に分けられます。

臨床試験推進部は、プロジェクトマネジメント部によって企画された臨床試験を実施、推進する仕事(モニタリング業務)を行っています。具体的には、臨床試験を実施する医療施設の選定、臨床試験を行う医師や医療スタッフとのコミュニケーション、患者さんの臨床試験への登録推進、治験薬(臨床試験で使われる薬剤)の状況確認、EDC(Electric Data Capture)という臨床試験へ参加した患者さんのデータが入力されたシステムとカルテとの照合(SDV;Source Data Verification)と呼びます)が主な業務です。

臨床試験へ参加する医療施設は、日本全国に点在する大学病院や民間病院、クリニックであるため、飛行機や新幹線に乗って頻繁に出張しなければなりません。ただし、最近はそういった現場業務の開発業務受託機関(CRO:Contact Research Organization)への委託が進んでおり、プロジェクトによってはCROのコントロールがメインとなり、出張は月1,2回程度であったりと状況はプロジェクトによって異なります。

仕事内容 1日について

私の1日の仕事内容について紹介します。内勤の日と出張がある外勤日で、一日のスケジュールが大きく異なるので、両者について御紹介したいと思います。

内勤日:
9:30  出勤、メールチェック、1日のスケジュール確認
10:00 チームミーティング、臨床試験の実施状況について確認
11:00 担当医療機関のEDCの入力状況を確認、医療機関へ電話によるコンタクト
12:00 昼食休憩
13:00 新規追加予定の医療機関のスケジュールなどをチームリーダーと打ち合わせ
15:00 昨日訪問した医療機関のモニタリングレポートや治験関連書類の作成
17:00 明日の出張準備
18:00 退社

外勤日:
9:00  東京駅発の新幹線に乗車、車内でモバイルPCを使用してメールチェック
10:30 大阪駅到着、大阪市内にある訪問予定の病院へ向かう
11:00 病院最寄りのファミレスで早めの昼食休憩
11:30 病院に入り、院内に設置されたモニタリングルームへ到着
    治験スタッフと治験実施状況や問題点、本日の医師との面談スケジュールを再確認
12:00 モニタリング開始、電子カルテを確認し、モバイルPCでEDCに入力されたデータとカルテデータ間で不整合がないか確認
15:00 治験スタッフと面談し、カルテとの不整合箇所を示し、EDCデータの修正を依頼
16:00 外来を終えた治験責任医師と面談し、カルテ内の気になる箇所や患者さんの副作用の状況を確認
16;30 モニタリング終了、チームリーダーへ電話報告し、病院を出て大阪駅へ向かう
17:30 大阪駅から新幹線に乗り東京へ帰る。車内でメールチェックをし、本日の業務終了。
    車内でお弁当を食べ、缶ビールで仕事の疲れを癒す
20:00 東京駅到着。在来線で自宅へ帰宅

年収やキャリアデザイン・働き方・初任給

現在の年収は、約650万円(ボーナス:夏・冬で計約200万円)です。福利厚生としては、45歳までの社員が対象の借り上げ社宅制度があり、家賃の6割程を会社が負担してくれるので若手社員は助かっています。初任給は、大学院卒で月給24万5千円、大卒で22万5千円となっています。

将来のキャリアとしは、現在の臨床試験モニター(CRA)で経験を積んでから、チームリーダーへキャリアアップしたいと考えています。その後、臨床試験を企画・立案し、マネジメントを行うプロジェクトマネジメントを担当し、更にプロジェクトマネージャーになって臨床試験全般をコントロールしたいと考えています。

ただ、現在の会社は大手外資系企業のように新薬のパイプラインが豊富でなく、将来性に少し不安を感じています。経験を積み、語学力を磨いてから、大手外資系企業へ転職する道も考えています。

現在の仕事の残業時間ですが、臨床試験立ち上げ時などの繁忙期では月30~50時間程度ですが、繁忙期を過ぎると定時で退社できる日が多くなります。土日は、基本的に休みですが、担当試験の疾患領域の学会参加等で出勤する日が年に数日あります。どうしても繁忙期とそれ以外で業務量に波がある仕事ですが、仕事が落ち着いた時期に1週間程度海外旅行へ行く同僚も多く、比較的働きやすいのではないかと思います。

業界展望(先行き)や会社の新しい試みなど

製薬業界は、医療を扱っている性質上、不況に強く安定性があり、特に製薬メーカーは他の業界に比べて比較的待遇が良いと言われてきました。しかし、近年は大手外資系メーカーを中心に日本市場も折檻されており、その影響で大手、中小メーカーを含めてM & Aが活発になっています。

新薬の開発領域は年々開発が難しくなってきており、創薬した新薬候補化合物が第III相試験を完了し、有効性、安全性が認められ承認される確率は約3万分の1程度まで低下していると言われています。そして、新薬開発には数百億円規模の莫大な投資が必要な反面、近年はブロックバスターと呼ばれる年間1000億円以上を稼ぎ出す薬を開発するのが非常に難しくなっています。

更に、近年抗癌剤の新薬を中心に高い薬価が社会問題になっています。ご存知のように国の医療費は年間40兆円を突破しており、今後も医療費の増加が続くことが予測されていますが、最近の抗癌剤新薬オプジーボは患者一人の年間薬剤費用が2000万円以上に上るため、昨年政府が慌てて薬価を半額に引き下げました。

今後は、新薬の薬価算定時に既存治療薬と比べてどの程度、有効性と患者さんのQOL(Quality of Life:生活の質)向上が見込めるかという費用対効果分析に基づいて薬価が算定される方針に変わるため、開発力に乏しい中規模以下の国内製薬メーカーは厳しい時代に直面すると思われます。ハイリスク・ハイリターンと言われていた製薬業界ですが、将来的にはハイリスク・ミドルリターンの厳しい業界になっていくのではないでしょうか。

私の会社では、開発領域を医療ニーズが高い癌領域と強みのある循環器領域に定めており、開発領域を絞って効率的に開発費を投じる方針を取ることで、大手外資系製薬メーカーに対抗しています。また、国内や海外の大学の研究施設(アカデミア)と共同研究を行うことで、有望な新薬をいち早く見出し、スピーディーに新薬開発を進められるような試みを実施しています。

競合となる会社や商品について

大手外資系製薬メーカーや癌領域に特化した国内製薬メーカーがライバル会社となっています。また、特許切れ医薬品については、ジェネリックメーカーが薬価の低い後発薬を販売してシェアが奪われるため、これらの会社とも競合しています。

最大のライバルは外資系製薬メーカーであり、新薬を開発してやっと販売にこぎつけても、外資系メーカーは開発力が高く、特に癌領域ではより効果の高い新薬をすぐに上市し、市場シェアが奪われてしまいます。

開発力や開発資金が限られている当社にとっては、大手外資系製薬メーカーは経営に大きな影響を与える脅威となっています。

まとめ

私は、薬学部の大学院を修了後、新卒で開発業務受託機関(CRO)に入社しました。その会社で、5年ほどCRAとして経験した後、現在働いている製薬メーカーへ転職致しました。

CROと違い、製薬メーカーでは新薬開発の企画から上市、研究所やDM・統計解析、薬事部門と連携して業務を進めるため、仕事の幅が広がるとともに新薬を開発しているという実感が増し、仕事面では満足しています。

待遇面では、年収はほぼスライドでしたが、福利厚生面では、借り上げ社宅等が充実しており、満足しています。また、深夜残業が減り、職場環境が改善したことも大きなメリットの一つです。平日の夜でも、子供と一緒に夕食をとることができるようになりました。

今後のキャリアアップとしては、大手外資系企業への転職も視野に入れていますが、現職でマネジメントを経験して、ステップアップしていきたいと考えています。

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