【知的財産の仕事】商標部 出願グループ働く女性の仕事内容について

約180カ国で大企業の知的財産手続をサポートとする専門企業での外国商標出願の仕事をご紹介します。

なお海外の知的財産権は、弁理士資格のない一般企業でも現地への斡旋や媒介業が可能です。語学や諸外国の知的財産権などに興味のある方に参考になる仕事レポートです。

はじめに

都内にある、中規模~大規模組織のX株式会社にて「商標部 出願グループ」で働く女性の一日や仕事内容などのレポートです。

商標部 出願グループとは、どんな仕事?

海外の知的財産権を専門とするX株式会社では、海外商標に関する業務を行う「商標部」は、「調査グループ」「出願グループ」「管理グループ」「更新グループ」の4つの部門に分かれています。その中で「出願グループ」の仕事は、商標の出願から登録されるまでの手続きを行います。

出願グループ内では、事務担当とファイル担当がペアになり、チームワークを発揮しながら膨大な量の案件ファイルを回していきます。各ファイル担当には、2人の担当する企業が割り当てられます。大抵は、1社が数百件の商標を出願しているため、1人10社程度です。

出願ファイルは、全て時系列にファイリングされて倉庫に国・番号別に並んでいます。また、各ファイルの基本情報・期限情報は、「管理グループ」によって管理・データ化されます。それらのデータは、X株式会社の全ての端末で閲覧出来るようになっています。

「管理グループ」から期限付きファイルに関するデータが回って来ると、「出願グループ」がの担当者が、倉庫から該当するファイルを探すところから業務が始まります。

仕事内容は、端末のデータを基に出願手続の準備を進める上で、主に「出願人との打合せ」「出願人へのレポート」「必要書類の作成」「請求書の照合」「オフィスアクション」「データ入力」「郵便物の準備」の7つの業務があります。なお、請求書は経理部、データは管理グループ、郵便物はドケッティング部と連携しています。

出願人との打合せ

出願人となる大手企業から新しい案件を依頼されると、調査グループの担当者とともに出願人と打合せをします。商標調査で「出願可」と判断されたら、殆どは、直ぐに出願となるケースが多いです。

打合せでは、出願国、出願商標、出願希望日、商品又はサービスの内容と区分、使用状況や予定等を確認します。大手企業の出願は、記者会見の日時やウェブサイト・取引市場での使用開始時期までがタイトであることも多く、この時点で漏れが無いように打ち合わせることが重要です。

打合せには、主にファイル担当、必要に応じて事務担当が参加しますが、管理職が同席することも多いです。

出願人へのレポート

日本と同様に、海外で商標を出願した場合には、各国の特許庁、商標庁、商標局などから何らかの通知がありますが、どの程度の時間がかかるのかは各国で大きく異なります。

海外の現地代理人から届いた書類がドケッティング部で仕分けされ、出願グループに届けられると、商標グループから日本の出願人にレポートを送ります。現地代理人から届く書類には、期限のあるもの、ただ報告すれば良いものなど様々あるので、期限付きのものから優先してレポートを作成し、随時郵送します。

殆どの書類は、請求書が複数枚添付されているため、経理用、ファイル綴じ用に分けます。

出願人によっては郵送前にファックスすることを希望したり、請求書は月ごと、都度で発送するなどの決まりがあるので、注意が必要です。費用の発生するレポートを発送する場合には、作成したレポートを経理部に持って行き、請求書の添付を依頼します。

必要書類の作成

ここでの必要書類とは、主に、海外の現地代理人に発送する書類です。

国によっては、出願人の業務の詳細を求めてくることもあり、その場合には会社登記簿謄本を英訳して送ります。中には、公証役場の認証が必要な書類は出来上がるまでに日数がかかるものもあるため、スケジュールを見ながら依頼します。商標見本も必要枚数をコピーします。出願人から送られてきた委任状や宣誓書などを確認し、必要に応じて不足情報をタイピングします。

また、必要に応じて、オーダーレター(出願依頼)とアバンダンレター(放棄依頼)を作成します。オーダーレターを受信した時点から現地では出願手続の準備を開始し、アバンダンレターを送った時点から今後の費用が発生しないことになるため、迅速に処理することも大事です。

請求書の照合

請求書の照合は、事務担当が他の事務担当とペアを組み、月に一回、経理部で入力された端末データの請求書リストと請求書原本を照合する仕事です。膨大な量があり、請求書の原本が時々、ファイルに紛れていることがあるため、大抵は2日程度、かかります。請求書の仕事の最中は、他に期限のある商標出願関係の仕事の手が止まるため、他の仕事を調整することも大事です。

オフィスアクション

オフィスアクションは、主にファイル担当が行います。処理する内容によっては、事務担当も作業します。

管理グループからのデータを基に、各国の現地代理人から郵送される拒絶理由通知書、その後の審判請求で発送される拒絶査定、異議決定された案件に対し、その通知・査定を覆すための方針を出願人に案内する仕事です。また、出願人からそれらの通知・査定・決定に反論する旨の依頼があった場合には、現地代理人にその旨を指示します。

日本とは商標法の規定も異なるため、提出書類や使用実績資料の提出などによっては、何度か現地代理人とメールで確認することもあります。時差をうまく利用して期限内に間に合わせることも大事です。

オフィスアクションの提出期限に間に合わない場合や資料収集に時間がかかる場合には、期限延長を申請します。概ね、2~3ヶ月の猶予が出来ますが、この手続きには費用もかかります。

データ入力

データ入力は、各国の特許庁・商標庁・商標局などから発送された書状から、必要なデータを社内の端末に入力する仕事です。オフィスアクションのデータは管理グループが行いますが、公告決定日、登録査定日、登録日などのデータは、出願グループで入力作業を行います。

郵便物の準備

郵便物の準備は、現地代理人に発送する郵便用の書類を準備する仕事です。重要書類であるので、大抵は、追跡番号を確認できる「EMS」や「SAL」などを利用します。「SAL」を取り扱っていない国や地域などもあるので、確認します。出願グループの特定の端末に必要事項を打ち込み、打ち出した内容を書類に添付して発送します。

商標出願課スタッフの1日について

商標出願課スタッフの1日について紹介します。

9:00 メール・海外FAX・期限チェック(8:00~10:00のフレックスタイム制)
9:20 各ファイルのデータ入力
11:00 郵便チェック(必要書類)
11:20 発送準備書類の作成、請求書の手配
12:00 昼食休憩(60分)
13:00 メールで出願人・現地代理人との応答、書類の英訳和訳、レポート作成など
15:00 午後休憩(20分)
16:20 当日の発送書類・請求書の揃ったレポートの郵送準備など
17:00 退社(16:00~18:00のフレックス制)

出願グループ担当の課題や展望・ポイント

X株式会社の出願グループは一般企業ですが、特許事務所の弁理士と同じで、書類に部長のサインが必要な場合も、管理職は殆ど机にいることがありません。扱う書類に期限が伴う上、当日中にオーダーレターを送付する場合には部長に提出する時間や郵便の回収時間などが決められているため、常に時間と戦っている印象があります。

育児中の女性は定時で帰宅することが認められていますが、ファイル案件が多いため、既婚でも独身でも、事務担当もファイル担当も、それなりに残業は多い職場だと思います。

商標法か英語や中国語などの語学のどちらかに特化していれば仕事は回りますが、書類もメールも殆ど英語なので、英語でのテクニカルタームを早く覚えた方が楽だと思います。

とにかくファイル件数が膨大で、中には、管理職のデスク、管理グループの主任のデスク、ファイル担当のデスクに置かれたままになっているファイルもあります。自分に必要なファイルを、どう効率的に見つけるかということが作業の早道です。

また、出願頻度の高い国の商標法の概要や、担当している企業(出願人)担当者の特徴や業務などを覚えておくと、仕事の効率も高まります。

経理部、商標管理課、ドケッティング部、公証役場、日本特許庁などと連携して書類を作成したり、データを入力することも多いので、社内での業務や、特許庁や役場にお使いに行く人が誰かなど周囲の作業の流れをつかんでおくと良いと思います。

グループ内で主要各国の商標法についての研修があるので、スキルアップするためにも積極的に参加する必要があります。

ファイル担当には日本での弁理士資格を取得している人も複数おり、外資系の職場のように多くの女性が活躍している職場です。

会社では、産後の女性社員を積極的に採用する方針でしたが、斡旋や媒介ではあっても、海外に提出する書類には法定期限があり、出願日を確保するために手続きを急ぐ必要もあるので、子育てをしながら働くには厳しい面もあると思います。

それでも、比較的休みは取りやすく、残業代は、たとえ5分でもしっかりつきますし、特許事務所より福利厚生が整っています。

若いうちは語学を生かして商標法に関する修行を積み、出産休暇・育児休暇を利用して時短勤務などで事務担当として働き、子育てが落ち着いたらファイル担当として活躍するなどの働き方も出来ると思います。

まとめ

少々、お堅い知的財産業界の中では、X株式会社の商標部の雰囲気は柔らかいと思います。特に、出願グループは若くて語学に堪能な女性が事務担当に多く、入社してから商標法について勉強している人も複数いたので、いつも活気に溢れていました。

商標は文系でも、法律を良く知らなくても始められる仕事です。ただし、知的財産系は法改正が多く、180カ国もあると法律の規定も様々ですので、常に学ぼうとする姿勢は必要だと思います。

給与面も、事務担当とファイル担当では額が異なると思いますが、他の業界よりは高いと思います。

出願人が大手企業に特化しているので、自分の出願した商標街で目にすることは多く、時代の最先端をサポートしているという誇りを感じます。ファイル担当や、他部署の担当者との連携がうまく行って無事に案件が登録された時には、達成感もあります。

出願人は、どちらかと言うと製造業が多く、各分野の新しい商品に関する商標を出願する際に商品名や会社登記簿などを英訳していると、とても勉強になります。事務担当は、直接、出願人と話す機会はさほどありませんが、慣れてくると問い合わせの電話もかかってきますし、社内での社員交流は頻繁にあります。

語学と商標の両方を武器にすれば、特許事務所などへの転職もしやすい仕事だと思います。

人とのコミュニケーションが好きな人、語学力を生かしたい人、ネーミングや大企業の仕事に興味を持っている人には、お勧め出来る仕事です。

本記事は、2018年6月26日時点調査または公開された情報です。
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