はじめに – 「公立小学校」の一言ではくくれない
「公立小学校」と一言で言っても、日本にある公立小学校すべてをひとくくりにするのは非常に難しいです。なぜなら、当たり前ですが、同じ公立小学校でも、都道府県や市町村の自治体によって、実情が全然違うからです。
本記事では、公立小学校あるあると同時に、都道府県や市町村の自治体による違いなども説明します。
保健室の先生(養護教諭)からみた「公立小学校あるある5つ」その2
今回は、私立高校で5年、一律の小学校で10年、保健室の先生(養護教諭)として働いた経験を持つUさんに「養護教諭からみた公立小学校あるある」の第2弾を取材し、まとめました。
公立小学校あるある 9つ
今回は、私が勤務した中でまとめて「公立小学校あるある」を9つをご紹介します。
公立小学校あるあるその1:障がいをもった児童がいる
公立小学校あるある、1つ目は、障がいをもった児童がいるということです。
これは、私立と公立の大きな違いです。
基本的に、私立には障がいがある児童は入学できません。そのため、身体や知的に障がいをもった児童は公立小学校に入学します。
校区に院内学級がある学校には、籍だけが校区内の学校にあり、体の調子がいい時だけ登校する院内学級の児童もいます。
とはいえ、最近多いと言われる自閉症の児童などは、軽度の場合であれば、学力が高い児童が私学に行くこともあります。
ケガや病気のために、病院に入院しなければならない児童・生徒のために病院内に設置された「病弱・身体虚弱特別支援学級」のこと。
公立小学校あるあるその2:保護者の違い
公立小学校あるある、2つ目は、都市でも地方でも「変わった要望」を訴えてくる保護者が多いということです。
中でも、都市の学校は、校長を超えて教育委員会へ即連絡する保護者も多く、大ごとになりやすいです。
そのため、最近の教員は保護者への連絡の回数が膨大です。やれ、「転んでけがをした」というものから「○○とけんかになった」というものに至る、本当に些細なことまで、放課後、保護者に報告の連絡を入れています。
定時の時間までは、多くの教員が、保護者対応で終わってしまいます。そのあとようやく翌日の準備となるのですから、残業は当たり前になりますよね。
そしてこれは、当然保健室の先生(養護教諭)も同じです。保健室に来た子どもについて、どんな些細なことも全て、担任に報告します。
特に20代の新任教員の場合、ケガの報告や痛みの報告について、保護者に不安を抱かせるような言い方をしてしまうことが多いです。なので、保健室の先生(養護教諭)が直接保護者へ連絡をしたり、新任教員に「保護者への伝え方」について、助言をする必要があります。
さもないと、「先生がこう言った・ああいった」「言った・言わない」のトラブルになります。
公立小学校あるあるその3:児童の違い
公立小学校あるある、3つ目は、児童の違いです。
公立小学校は、受験勉強をして入学するわけでもないので、勉強に熱心な家庭とそうではない家庭があります。学年が上がるにつれ、勉強に熱心ではない生徒は、学力が低下してしいますし、中には、普段の生活態度までも荒れてしまう生徒もいます。
都市でも地方でも「ネグレクト」などの虐待は共通して潜んでおり、保健室の先生(養護教諭)はそういった家庭の子供のケアもします。
また、公立小学校の校区の中に「児童養護施設」があれば、施設の子どもたちも同じ学校に登校します。「児童養護施設」の子どもたちの生活態度がおしなべて荒れているというわけはありませんが、少なからず傷ついている子どもが多いのは事実です。そのため、保健室の先生(養護教諭)として対応に気をつけなければならないことも多く、施設の職員に保護者替わりとして対応してもらうこともあります。
公立小学校あるあるその4:「~さん」呼びをする
公立小学校あるある、4つ目は、児童・生徒のことは全員「~さん」呼びをするということです。
公立小学校では、先生は男女関係なく「~さん」と呼びます。呼び捨てはもちろん、「~ちゃん」や「~くん」呼びも、保護者からのクレームの一因となります。
特に最近では、LGBTが注目されて、ますますジェンダーレスな「~さん」が主流となっています。
保健室の先生も当然、呼び方は気を付けなければなりません。
公立小学校あるあるその5:地域との関わりが多い
公立小学校あるある、5つ目は、公立小学校は地域とのかかわりが非常に多いということです。
地域の人たちの協力・理解を得るために、公立小学校の教員は地域の行事に参加したり、地域の行事を学校で行うことがあります。
そのため、休日出勤が年に数回必ずあります。
公立小学校あるあるその6:性教育の難しさ
公立小学校あるある、6つ目は、性教育の難しさです。
近年、児童の成長がすすんでいるため、女生徒の初経の年齢も早まっています。小学生でも妊娠したり性被害にあうことも少なくありません。
しかし、保護者の性教育に対する認識は一定ではないため、行き過ぎた性教育は受け入れられません。「3年生でも性について教えるべき」という保護者もいれば、「早すぎる、とんでもない」という保護者います。
また、現在、性教育の必要性は色々なところで言われていますが、学習指導要領でも制限があり、それ以上のこと教えると個人の責任が問われかねません。
すなはち、万が一良かれと思って教えたことでも、保護者から訴えられたら負ける、 そのうえ、誰も援護してくれないということです。そんな状況では誰も教えようとは思いません。
正しい知識を教えたいという気持ちと、余計なことはできないという気持ちで、養護教諭として非常に悩む部分です。
公立小学校あるあるその7:校長会がある
公立小学校あるある、7つ目は、「校長会」の存在です。
公立小学校の学校のシステムは、「校長会」という、自治体の教育委員会の職員と校長が集まる会議で決まります。
「校長会」で決まったことは、職員会議でその他の教職員に知らされます。
一昔前まで、もしくはまだまだ教職員組合が強い地域であれば、この「校長会」の決定に対して異議を申し立てたり反論したりすることもできました。しかし、最近では教職員組合の力は弱まっており、団塊の世代の退職による20代の若手教員の増加とベテラン教員の減少から、言いなりになることが多いです。
公立小学校あるあるその8:管理職・教員の不足
公立小学校あるある、8つ目は、管理職・教員の不足です。最近では、多くの自治体でこの問題を抱えています。
年度の途中で病気や産休、介護など様々な事情で教職員が休職する場合、代替えの講師として臨時教員がやってきます。しかし、最近ではあまりにも教職員が休職が多く、臨時教員が不足しています。それによって、管理職が担任の代わりをしたり、学年の先生が2クラス一緒に見たりするということも起こっています。
このような教育便場の中で、最も忙しく板挟みになるのが「教頭」です。校長は「校長会」で決まったことを教頭に伝えるだけですみますが、教頭はそのあと、教職員の矢面に立つことになります。
また、担任で処理しきれなかった保護者のクレームなどの案件も教頭が窓口なります。
そのうえ、報告書類などの事務書類を毎日何十枚と提出しなければならず、学期末には担任が付けた通知簿をすべてチェックしなければなりません。
そんな教頭を日々目にしている教員は、もちろん教頭になりたいとは思いませんよね。
そのため、管理職試験志願者が減少し、30代に入ると管理職試験を受けるよう促されることも少なくありません。
養護教諭からみても、現在の教育現場は、人員と管理職が不足していると感じます。
公立小学校あるあるその9:ペーパーレス可が進まない
公立小学校あるある、9つ目は、なかなかペーパーレス可が進まない点です。最近では、公立小学校でも、都市部ではペーパーレスが進んでいますが、地方はそうではありません。
私学や大都市の学校の場合、出退勤はカードリーダー、学校の諸帳簿は基本PC入出力で、多くの業務がデジタル化されています。
職員会議の資料も、当然ペーパーレスです。
その反面、地方の学校は、なんでも押印に手書き、なんでも紙で出力します。職員会議も紙のレジュメを使用し、出退勤簿も手書きです。
どちらにも善し悪しがありますが、業務がデジタル化されているかどうかによって、事務手続きや事務作業の量に大きな差が出ます。
まとめ – 編集部より
いかがでしたか?
本記事では、養護教諭から見た公立小学校の特徴についてまとめました。日本には非常に多くの公立小学校があり、上記の9つの特徴がどの学校にも全てが当てはまるというわけではありませんが、こういった傾向の公立小学校は多いようです。
保健室の先生(養護教諭)としてどこに就職するか、どのような学校でどのような仕事をしたいのかを考える際に、この記事をぜひご参考ください。
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