保健室の先生(養護教諭)からみた「公立小学校あるある5つ」その2

今回は、私立高校で5年、一律の小学校で10年、保健室の先生(養護教諭)として働いた経験を持つUさんに「養護教諭からみた公立小学校あるある」の第2弾を取材し、まとめました。


はじめに

本記事は、保健室の先生(養護教諭)からみた「公立小学校あるある」の第2弾です。前回に引き続き、私の感じた「公立小学校あるある」について、述べていきたいと思います。

保健室の先生(養護教諭)からみた「公立小学校あるある9つ」その1

今回は、私立高校で5年、一律の小学校で10年、保健室の先生(養護教諭)として働いた経験を持つUさんに「養護教諭からみた公立小学校あるある」について取材し、まとめました。

公立小学校あるある 5つ

公立小学校と言っても、自治体や学校によって大きく違いますが、公立小学校は私立と違い様々な家庭環境の子どもたちがやってきます。

公立小学校あるあるその1:1年生は宇宙人

学校の先生はよく、1年生は宇宙人だと言います。それは、1年生がまだ幼く、最初はなかなか話が通じず、予想もしない行動やトラブルを次々と起こすからです。

保健室を訪れる1年生も同じです。話をしていても、2割の子は、明後日の方向を見ていたり、床をほじほじしていたり、鼻をほじっていたり…

一番面白いのは、春の定期健康診断の視力検査です。視力検査では、ランドルト環という「C」の空いている方向を指で刺すのですが、クイズの問題に答えるように必死になる姿が最高です。

両方1.0が見えた時には、ガッツポーズしている子もいます。このガッツポーズ、幼い男の子に多く、公立の保健室ではよく見られる光景です。

公立小学校あるあるその2:学級崩壊と保健室閉鎖

公立小学校あるある、2つ目は「学級崩壊」が起きるという点です。

「学級崩壊」とは、学級としての機能を果たせない状況が続き、通常の手法では学級の機能を回復させられない状態のことです。私の実感ですが、最近では、学級崩壊も珍しくありません。

学級崩壊の原因は担任の力量不足だと思われがちですが、それだけではありません。明らかに担任が力量不足でも、しっかりクラスがまとまっていることも少なくありません。


小学校の場合、児童が好む担任は、若くて一緒に遊んでくれる先生です。そのため、20代~40代の若手の男性教員は人気があります。逆に、保護者の人気は、ベテランで安定感のある先生です。

例えば、担任が若くても、児童が毎日楽しく登校し、それなりに勉強もしていれば、保護者の担任への評価は上がります。

しかし、児童が少しでも学校への不満を話せば、保護者は「ほらみたことか。担任が若いからだ」と学校への不信感を募らせていきます。

ひと昔前であれば「あんたが悪い」と、子どもの不満を一蹴する保護者も多かったようですが、最近では子どもの意見をそのまま学校へ持ち込む保護者もいます。

もちろん、大半の保護者は、個人懇談や連絡帳で気になることを聞く程度で終わるのですが、中には、毎日子どもに「学校であった嫌なこと」を聞く保護者がいます。「今日は学校で嫌なことなかった?」と聞かれれば、児童は嫌だったことを毎日保護者へ報告し、保護者は毎日不満を募らせ、ちょっとしたことで学校に文句を言いたくなります。

そんなことが続くと、子どもも知恵がつき、「親にいえばなんとかなる」「自分の思いに反することがあれば、担任を懲らしめてやればいい。」と思ってしまう子もいます。

こうして児童が担任の言うことを聞かなくなり、学級崩壊が始まります。

学級崩壊が始まると、学校生活すべてに横柄になった児童が教室から飛び出し、保健室に入り浸り、欲求が満たされなければ暴れることもあります。保健室での機能も、ストップしてしまいます。また、おとなしい児童へのいじめが始まることもあります。

児童と担任との関係が一つ崩れるだけで、学校生活は一変してしまいます。

学級崩壊の末路として私が見聞きしたのは、担任が体調を崩して途中で休職するか、学年末まで持ちこたえて転勤する、もしくは、定年が近い場合は退職するパターンです。学校側は新しい学年になるタイミングで、クラス替えと担任交代によってクラスをリセットし、トラブルを起こした親子は卒業まで要注意人物として取り扱われることになります。

公立小学校は義務教育のため、理不尽な保護者のクレームにも応えなければなりません。

公立小学校あるあるその3:保健室の先生(養護教諭)の職務は学校内だけではない

公立小学校あるある、3つ目は、保健室の先生(養護教諭)の職務が学校内に留まらないということです。

保健室の先生(養護教諭)は、各校に1人の場合がほとんどです。そのため、同じ校種、同じ地域同士での保健室の先生(養護教諭)同志のつながりが必須となります。

各都道府県には「養護教員会」という組織があり、定期的に会議や研修を行います。この研修では、各校の取り組みを報告したり、テーマにのっとった発表をしたりします。

発表の内容は、自分の学校で起こったけがの発生状況について、健康相談活動の内容、健康診断結果から見る児童の特徴などのデータ整理、効果的な歯科指導や性教育、保健指導の方法などです。事前に準備しておいて本番で発表する、これを毎年行います。


この発表の準備をするにあたり、取りまとめをする人が必要です。養護教諭だけではなく、教職員全体にも発信するため、管理職の組織や教育委員会、学校医や地域、保護者をつなげる役割も必要になります。

この役割を担うと、出張が多くなり本務である学校の中の保健室の仕事に手が回らなくなります。私立の学校も同じような組織はありますが、公立学校ほどの負担はありません。

公立小学校あるあるその4:訴訟問題

公立小学校あるある、4つ目は、最近の学校の教員の多くが怯える「訴訟問題」です。

保健室の先生(養護教諭)は、「訴訟問題」に直面するリスクが非常に高いです。

小学生の保健室利用理由ランキング1位と言えば「すりきず」です。一昔前であれば、オキシドールやイソジン、アクリノールやヒビテンといった薬品を使って傷口を消毒し、ばんそうこうをはる、といった一連の流れを誰も疑うことはありませんでした。

しかし、最近では「湿潤療法」が病院では当たり前となり、保健室では応急処置のみを行い薬品を使わないことが主流となっています。とはいえ、児童は消毒してばんそうこうという魔法をかけなければ納得しないこともあります。

どちらにしろ、保護者の意見はバラバラなので、勝手にどちらかを行うと訴訟につながります。

そのため、養護教諭はリスクを回避するために、年度初めに保健だよりなどで保健室での応急処置についてあらかじめ知らせておき、それ以外をのぞむ場合は連絡してほしいとうながしたり、処置をした後に担任から保護者へ連絡してもらったりします。

次に問題となりやすいのが「救急車要請」問題です。

最近では、児童のけがで少しでも不安があればすぐに医療機関に連れていきます。また、「救急要請が必要か?」と迷った場合でも、救急車を呼びます。というのも、「なぜ、救急車を呼ばなかったのか」と後で問われることが多いためです。

保健室の先生(養護教諭)は、児童・生徒の様子を見て、「家に帰ってからでも」と一人で勝手に判断してはいけません。必ず担任と管理職に報告し、保護者の了解を得た後でないと、その判断が後々大変なことになることもあります。

とくに最近の公立小学校は、中国や韓国など、様々な国の子どもが通うことも増え、こちらの常識が通らないことが多くなっているため注意が必要です。

こうなってくると自分の職務を自信をもって行うことの難しさにぶち当たり、技術や知識、資格を得ることにつながります。
一昔前のようには、なかなか行かなくなっています。

公立小学校あるあるその5:グローバル

5つ目は、公立小学校では「グローバルな対応」が求められるという点です。

公立小学校には障がいを持っている児童もいますし、国籍の違う児童も通っています。

障がいをもっている児童に対しては、特別支援として補助の教員がついて、勉強する教室があります。

また、海外の児童に関しても、まったく日本語が話せない中国人やネパール人、日本語を話せるのは知り合いのおじさんのみ、両親もまったく日本語が話せないといった飛込の転入児童や、母親は日本人で、いつも通っている自分の国の学校が長期休暇中のため、日本に帰国していて、その間だけ通いたいという体験入学希望の、まったく日本語が通じないフランス人児童、イスラム教徒のため豚肉・酒類などの成分が入っていて給食が食べられないトルコ人など、義務教育という名のもとに、配慮や工夫が必要な児童が入ってきます。

国ごとに行っている予防接種や検診内容が違うため、日本の枠に当てはめるために様々な調査を行い、片言の英語でその国の領事館に確認するといったグローバルにあわせた対応が必要です。

まとめ – 編集部より

いかがでしたか?


今回も、公立小学校あるあるについて、様々は話を聞くことができました。中でも、公立小学校でもグローバル化が求められている点などは、今後保健室の先生(養護教諭)を目指す方には、非常に有用な話だったのではないでしょうか。

保健室の先生(養護教諭)を目指す方も、今後公立小学校で働こうと考える方も、ぜひこの記事をご参考下さい。

本記事は、2020年6月1日時点調査または公開された情報です。
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