はじめに
先にも述べた通り、学校で教員として働く場合、大きく「専任」と「講師」に分けられます。専任の先生は担任を持ったり、分掌に関わったりしますが、講師の先生は基本的には担当教科を教えるのみです。講師には常勤講師と非常勤講師があり、常勤講師の先生は学校によってはほとんど専任の先生と変わらない仕事となることが多いようです。
非常勤講師として働くには
非常勤講師として学校に関わるためには、専任の先生と同様に、各担当教科の教職免許状が必要です。大学で教職課程を学び、単位を修得し、教育実習を終えることが必須となります。大学卒業時にはたいていの場合、中学校・高等学校の両方の免許状を取得できます。
公立高校の非常勤講師について
非常勤講師になりたいと思った時、偶然教育実習先の母校から声がかかることもあるかもしれませんし、大学の先輩から紹介されることもあると思います。そういったものが無い場合、一般的には「講師登録」をします。
公立校の場合、県立校と市立校では登録先が違います。初めての登録の場合には両方に登録する方も多いようです。県立高校の場合は県の職員扱いになりますので、新聞などで県からの求人情報をチェックしたり、県の講師登録のホームページを検索すると良いでしょう。市立校も同様に、市報などで求人募集があったり、ホームページからも求人案内が行われています。
登録の方法は各県・市によって様々のようです。ホームページからフォームに入力していき、登録完了となる所もありますし、写真付の履歴書を持参して、教員免許状と一緒に窓口へ持参しなければならないところもあります。
登録したからといって必ず紹介があるとは限りません。希望する県や市で担当教科に空きが出た場合連絡が来ます。
公立高校の非常勤講師をやる場合、最初に声がかかるまでは時間がかかるかもしれませんが、一度学校が決まり、勤務が認められると次年度や年度途中などでもいわゆる「口コミ」で他校への紹介がもらえることが比較的多いです。
私立高校の非常勤講師について
私立高校の場合、学校のホームページ上で「非常勤講師募集」と公募していることがあります。学校所定の試験を経て採用という流れになりますが、多くの場合はまず履歴書や経歴書を提出し、書類選考を突破しなければなりません。そして小論文・面接、模擬授業が試験科目となっています。この内容に自分の専門分野の試験が加算されることもあります。
学校からの公募以外では、公立高校と同様に講師登録をする方法があります。私立の場合は派遣社員として会社に登録する方法が主です。登録はホームページなどから面接の予約をして、直接会社に履歴書を持っていく流れですが、その際に自分の希望なども細かく伝えることができます。曜日や時間帯などもこの段階で打ち合わせすることができます。派遣登録をすると、条件の合う学校が出た場合には電話やメールで知らせてくれるので、自分で常に募集情報を探すよりも簡単です。会社によって担当している学校も様々のようなので、人によっては派遣会社を数社掛け持ちする事も多いです。
学校内での立場や報酬について
非常勤講師の仕事は「教科担当」のみと言って良いと思います。
専任の先生が行うような担任や分掌はありません。部活に関しては非常勤講師の先生が担当する学校もあります。
しかしながら、授業を行う中での生徒指導は非常勤講師といえどもやるべき仕事ではあります。この際には講師一人で抱えて問題を解決しようとせず、必ず担任の先生に報告するようにした方が良いです。派遣会社からもそういった指導が行われます。
成績処理に関しても非常勤講師の仕事です。自分で日頃から成績付けの観点をまとめておき、問題作成、採点を専任の先生と同様に行わなければなりません。
また、公立高校の場合はあまりありませんが、私立校などでは中間・期末テストの監督を頼まれることがあります。普段担当しないクラスに行くこともありますし、あまり関わったことがない生徒を監督することもあります。緊張感を持って監督業務に取り組むよう心がけが必要です。
非常勤講師の報酬は時間給と月給制の両方があります。時間給の場合は授業を行った分だけ頂くので、夏休みなどの長期休暇の時はゼロ円ということになります。中間テストや期末テストなどで授業が無い場合、学校行事で授業が無くなるといった場合でも給料は発生しません。
月給制の場合は、単価は時間給よりも安くなるかもしれませんが、毎月定額で入金される安心感は否めません。
文化祭や体育祭など、学校行事に仕事として参加する場合は学校によって対応が異なります。体育科なら審判をする、音楽科なら合唱の伴奏をする、吹奏楽の指揮をするといった場合、交通費だけ出してくれる学校、授業分の時給で換算してくれる学校など様々です。
学校行事に関しては、無報酬でも自分に過度な負担がかからないのであれば積極的に参加した方が良いと思われます。日頃見られない生徒の姿を見ることができますし、授業のヒントになることも多いはずです。
非常勤講師のメリットとデメリット
メリットについて
非常勤講師のメリットとしてまず言えるのは、自分の専門の「授業に専念できる」ことでしょう。専任の先生は生徒指導をしなければならなかったり、部活をやらなければならなかったり、学校内の分掌に所属したりと、自分の専門分野とは別の仕事がたくさんあります。非常勤講師はそういったことはなく、自分の専門科目をいかに生徒に教えるかに専念できます。
さらに、非常勤講師の場合は無駄な時間が比較的少ないと言えます。たいていの学校は講師優先で時間割を組んでくれるので、自分の都合である程度一週間のスケジュールを組むことが可能です。午前中1校、午後別の学校を1校という働き方もできますし、午前中にまとめて勤務することも可能です。専任の先生と違い非常勤講師は副業が可能ですから、主要5教科以外の先生たちは、敢えて非常勤講師の道を選び、学校以外の時間を自分の専門分野の仕事に充てる人も多いです。
専任の先生となると、当然ながら授業の無い日も1限から学校に出勤したり、1時間目をやって次の授業はまで何時間も空くことがあります。非常勤講師で特に時間給の場合は空き時間には給与が発生しませんので、その点は考慮して頂けることが多いです。
もうひとつ、意外なメリットとしては「健康診断が受けられる!」ことです。特に私立に多いのですが、学校で健康診断の費用を全額負担してくれるところが多いです。公立は反対に自費で健康診断を受けて、履歴書類と一緒に提出ということが大半ですが、私立は専任の先生と同様に受けさせてくれます。基本的な健康診断は1万円くらいします。健康管理は大切とはいえ、会社などに所属していないとついおろそかになりがちな検診を、学校が負担してくれるとはありがたいことです。健康診断の費用が浮いた分、オプションで別の検査を受けることもできます。
デメリットについて
デメリットをあげるならやはり給与の面でしょう。時間割を考慮して頂けるとはいえ、いつも自分の都合よく行くわけでもなく、多少は我慢しなければならない場合もあります。月給制ならともかく、時間給でいただく場合には少々辛いことが多いです。昼休みをどうしても取らないといけない時間割になったり、授業と授業の間が何時間か空いてしまったり…。行事や悪天候など学校の都合で休校になった場合も容赦ありません。
そして、非常勤講師の契約は1年ごとという学校がほとんどです。最近では法律が変わり、学校によっては更新の上限を設けている学校もあります。勤務状態に問題が無くても「更新は1年ごと、但し更新の上限は3年まで」などと募集の段階ではっきりと宣言している学校も多くなりました。
また、デメリットというわけではありませんが、非常勤講師も免許更新制度に沿って教員免許を更新しなければなりません。
教員免許状は持っているだけなら更新の手続きをしなくても失効になりませんが、専任はもちろん、講師を1度でもすると更新制度の対象になります。自分の持っている免許状の有効期限がいつなのかは簡単に調べることができ、期限が切れる2年前から免許更新講習を受けることができます。
うっかりこれを怠って免許状の期限が切れてしまうとせっかく講師の依頼がきても当然引き受けることができませんので注意が必要です。デメリットと感じるのは、更新講習は無料ではないという点と、講習のために数日間拘束される点です。非常勤講師も専任の先生と同じ更新講習を受けますので日々の立場から考えると負担が大きいと感じるかもしれません。
まとめ
いずれは専任で学校の先生になりたい!という人にとっては、非常勤講師の経験は現場体験ができますし、お手本となる先生方とたくさん接することができるので大変メリットがあると思われます。また非常勤講師を長く続けた場合、教員採用試験の際に免除になる科目があるなど有利な点もあります。
また、以前教員をやっていたけれど出産・子育てのために一度学校を離れた方が、子育てを終えてまた復帰する際に非常勤講師から、というケースもよく聞かれます。何年もたってからいきなり組織に入るのは不安という方も少なくないのでこういった選択肢は多いです。採用する学校サイドも経験者の方が安心して任せられるというのも納得できます。
公立と私立の非常勤講師は仕事内容には大きな差はないように思えます。どうやってそこに採用になるか、まず1番最初が大きな違いといったところではないでしょうか。
そして働く環境も公立と私立ではどうしても違います。公立ではいまだにエアコンが導入されていない所もありますし、コピー用紙が白色ではない所も…。私立は施設が充実しているところが多いのでそういった問題は公立ほど無いかもしれません。
ただ、非常勤講師は常にたくさん募集があるわけではありませんので、よほどのこだわりがなければ、まずは公立でも私立でも講師として勤務することを第一に考えられると良いのではないかと思います。
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