はじめに
公立の特別支援学校で常勤(臨時的任用教員)として働く、キャリア7年の「先生」によるキャリア体験談レポートです。
ちなみに、その方は、 高等学校公民一種免許状と、特別支援学校教諭一種免許状を持っているそうです。
なお、公立特別支援学校のため、地方公務員として勤務します。
「公立の特別支援学校の先生」を目指した理由
私の兄弟が知的障害をもち、特別支援学級、特別支援学校を経て、現在福祉作業所で仕事をしています。兄弟と共に、この先も生きていく上で必要な知識がほしいという思いから福祉大学に進学しました。
福祉の勉強をしているうちに、世間がどれだけ障害に対して無知なのかを痛感し、生きづらい世の中の実態を知りました。さらにその無知さゆえに、かつて傷つけられてきた兄弟や自分自身の経験があったので、同じ思いをする人間を出したくなかったことと、今そんな思いをしている人の心の支えとなって、役に立ちたかったことが、教師になろうと決意したきっかけです。
「公立の特別支援学校の先生」の仕事内容について
特別支援学校や特別支援学級の教師の主な仕事は、個別の教育支援計画の作成や実際の児童生徒への行動面、生活面、コミュニケーション面、学習面、身体面などの支援、またその評価(所謂通知表のようなもの)です。また、教師の具体的な仕事は、授業です。授業の中で上記のような支援を行い、指導をしていきます。
個別の支援計画の作成手順としては、本児童や保護者へのアセスメント、また本人の行動面、生活面、コミュニケーション面、学習面、身体面などのモニタリングを通して作成します。そのほかに、学校や学年、学級の行事の計画、準備、実施を児童がしていく上で、児童それぞれの実態に合わせて声かけ、手助け等を施し、成功をおさめられるよう支援することです。
それ以外にも、学校の事務的な公務があります。職員会議が月1回、行事ごとの委員会、各地域の学校と各教科の情報を共有するための会議も存在します。また、特別支援学校の高等部があれば部活があることもあるので、部活指導も学校によってはあります。
「公立の特別支援学校の先生」の1日の仕事の流れ
<小学校の特別支援学級の場合>
7時半 出勤 授業準備
8時15分 勤務開始
9時頃~14時半 授業
19時 退勤
※クラブや委員会があれば15時まで児童指導があります。ちなみに給食も指導時間なので、子どもたち優先に、何かあれば自らの食事は後回し。児童の安全第一で動きます。
※児童が下校したのち、1時間程度の休憩があります。ただ会議がおしていると、休憩なしに会議へ参加することも珍しくないです。会議をしていると、そのほかの事務処理ができないので、退勤は殆どの職員が早くて19時すぎです。しかし、勤務時間として定められている時間は17時です。
<特別支援学校の場合>
8時半 出勤 授業準備
9時頃 児童生徒を迎える
9時半~15時 授業
※給食の時間は指導時間になります。
※授業では、5教科と体育、家庭科、音楽などがあり、それに加えて自立活動、生活単元という授業もあります。
※学校が知的障害児者向けの学校なのか、肢体不自由児者向けの学校なのかにもよって、授業の時間割は変わってきます。
※教師として、仕事内容の中に必ず存在するのは、授業です。そのため、教材研究というのが欠かせません。授業をして勉強を教えるのが、教師の一番の仕事ですので、これだけはどんなに忙しくてもはずせないものです。
授業以外の業務状況について
校務分掌として、職員会議、そして、各教科の指導における共通認識を地域の他校と情報共有する場や、学校や市町村共通の行事などの委員会などがあります。そのほか部活指導があることもあります。さらに校外で何かあれば、そこまで赴いて、児童指導にあたることもあります。
事務処理としては、成績管理と、授業をよりよく行うためには教材研究が必須です。正直、教材研究の時間を勤務時間内にとることは困難なので、ほぼ帰宅後家でやったり、土日の休日に行うことがほぼ当たり前の状況です。
特別支援学級や特別支援学校の場合は、それに加えて個別教育支援計画があります。さらに特別支援学校の高等部の職員であれば、生徒の卒業後の進路指導があります。2年生、3年生で年2回、現場等実習として、または福祉作業者として、一般就労先で仕事をします。実習中の指導も毎日ではないものの、最低でも3回は実習中に行います。
正直、部活の指導を教師だけでなんとかするのも、限界があるのではと感じています。地域の方やプロフェッショナルな方と指導者契約をして、指導してもらえるとどんなに嬉しいかと感じたりもします。
残業手当というものは、無いと思います。知らないだけかもしれませんが、私は7年のうちに残業手当など一度も頂いたことはありません。
「公立の特別支援学校の先生」の給料・残業・有給休暇について
私の場合ですが、特別支援学校の先生の給料は、初年度は手取り21万円で、年々少しずつあがり、7年目には手取り27万円でした。ちなみに、ボーナスは年2回で30万円程度で、年収は400万円でした。
勤務開始時間が、小学校は8時15分、特別支援学校では、8時半です。残業はほぼ毎日ありました。定時の17時に退勤したのは、手で数える程度です。早くても19時で、最長で22時半に退勤していました。
有給休暇は、半年で10日、1年で20日いただけます。しかし、ほぼ使えないのが現状でした。年間で13日残っていました。結局夏季休暇5日取れるということもあって、有給休暇を使うときが、夏休み、冬休み、年末年始、春休みが精々なのでした。
この仕事で、働いているときに困ったこと
困ったことは、有給休暇がとにかく使えないことでした。また、体調を崩しても休めず、仕事量が多くて勤務内で済ませることが困難だったことや、人によって仕事量の格差があったこと、常に人手不足であることなどが挙げられます。
改善したかったことは、会議の精選です。この会議は本当に必要なのか、意見が活発にされないがために、無駄に時間を要してるんじゃないかと感じることが多々あったことです。誰でもできることを目指して行かなくては、時間をうまく使った仕事はできないように感じていました。
この仕事や職場でよかったこと
公務員という立場で、なにかと信用の高さはありました。収入の安定さは、公務員ならではだと思います。
恵まれていたといえば、職場自体がなくなることはないということで、そういう意味での安心感です。
福利厚生もしっかりしていて、労働時間における調査も積極的に行っていたり、長期労働によるストレス度チェックとともに、身体の不調への窓口の情報を明るく提供してくれていることです。どうしても、長時間労働という現実から、薄暗い不気味なものに見えるかと思いますが、そうではなく、改善しようと改善を広める雰囲気があることです。
「公立の特別支援学校の先生」の仕事エピソード
感動したことは、常に子どもたちとの関わりがあって、子どもたちの成長する姿が近くにあることです。
自分たちのする支援が必ずしも、すぐに結果として出てこないこともあります。しかし、根気強く励ましながら、取り組んでいく中で、彼らなりのペースで成長幅は小さいものの、確実に成長してるんだなぁと思える瞬間が目の前にあったら、涙が溢れそうになります。
失敗談はたくさんあります。
子どもたちへの支援が、必ずしも正しいとは限らず、思わぬ事故の引き金になりうることもあります。自分の不注意ゆえの怪我を子どもが負うことになったときは、自分の足りなさを嘆き仕事をやめようかと悩んだこともあります。
学校の先生の職場恋愛について
職場内も職場外での恋愛も結婚も半々ではないかと思います。職場外となると、学生時代からのお付き合いだったり、仲のいい同僚や上司からの紹介などが私の周りには多かったです。
私自身は、友人の紹介で出会った方と今もお付き合いを続けていますが、そういった人も少なくはないと思います。そういう意味では、ひとそれぞれです。あえていうのであれば、この忙しい状況の中で、お付き合いの相手がいない人も確かに多く存在するのも事実です。
まとめ ー「学校の先生」を目指す方へメッセージ
今はこの仕事を辞めてしまいましたが、またいつか現場には戻りたいなという思いがあるほど、この仕事のやりがいは高いかと思います。
人間相手の仕事であること、子どもから大人相手にする仕事ゆえ、気の遣い方が相手によってコロコロ変わります。しかし、きっとこの仕事以上に、自分が誰かの人生に深く関わることができる数少ない仕事だとも思います。
何でも挑戦する前に諦めず、とにかくやってみよう!!そんな前向きな気持ちで、自分自身にも子どもたちにも、またそれを支える親御さんにも寄り添っていってほしいなと思います。
ありがとうございました。
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