【中学校の先生の仕事内容】中学校の「部活動」を考える

皆さんは、部活動に打ち込んできた人がほとんどなのではないでしょうか。なぜなら、教員を志す人は、学校でのいい思い出がきっかけになっていることが多く、その中には部活動での成功体験というものも含まれるからです。今回は、生徒側ではなく、先生側の視点での仕事としての「部活動」について考えていきます。


1.部活動の位置づけ

1.学校生活に不可欠なものである

自分が小学校を卒業し、中学校に行ったときのことを思い出してみてください。多少の差はあれど、誰しも部活動に期待を持ちながら入学したはずです。どんな部活に入ろうか、先輩は怖くないだろうかとあれこれ考えていたはずなのです。それは現在でもほとんど変わることはありません。私たちのころと同じように部活動に心をはせ、憧れを持って入学してくるのです。

昨今、教員の働き方の問題が大きくクローズアップされ、部活動のありかたも問われています。部活動を縮小(または解散)し、教育以外の活動は地域や家庭に任せるといった意見もありますが、学年や学校を超えた交流は人間性を育てるとても貴重な場だと思います。

2. 教員にとっては負担でもある

一方教員の視点で考えると、精神的、肉体的にかなりの負担になることは事実です。それが好きでたまらなく、いくら時間を割いてもいいという考えなら別ですが、多くの教員は教材研究や事務仕事、時には家庭を後回しにして部活動に参加しています。まず学校に赴任するとどの部活なら顧問ができるかという質問があります。

経験のあるなしに関わらず、ほぼ必ずどこかの顧問をしないといけない状況なのです。運よく経験のある部活を持てればラッキー、持てなければゼロからのスタートを切ることになります。ルールなどを全く知らないで指導することはできませんので、教員は部活動についても勉強を始めなければならないのです。

またいくつかの運動部や吹奏楽部などは、対外的な試合や大会が土日に開催されます。顧問はもちろん引率が必要です。大会前になると当然練習も増えますので、土日の拘束時間はどんどん長くなっていきます。休日出勤に特別な給与がでるわけでもなく、ほぼサービス。これではブラック企業と揶揄されても、仕方のない一面もあるのだと思います。

3. 保護者の期待

部活動を通して社会性を身につけてもらいたいという保護者の意見も無視できません。共働きの家庭が増えたこともあって、比較的遅い時間まで学校にいる安心感というのもあるでしょう。ただ家庭によって活動に対する温度差があり、教員と保護者、あるいは保護者同士で意見の食い違いがみられることもあるようです。活動日を減らしたくてもなかなか決断できないのは、生徒だけでなく保護者の意向もあってのことでしょう。

2.部活動の実態は?

1. 運動部

運動部はご存じのとおり、だいたいの場合練習量が多いです。必然的に教員の負担も大きくなります。顧問の熱意や学校、地域によって変わるでしょうが、朝練、放課後練、土日の練習と忙しく活動しています。また試合では顧問が審判をする場合がほとんどですので審判講習会に参加したり、自治体内の学校が集まる顧問会議に出席したりといった仕事もあります。

そういつも面倒を見ていると自分の仕事ができないので、外部指導員を地域の方にお願いする部活が増えています。自分で探すときには人材を見つけるのが大変ですが、いるといないでは大違いです。私自身はどちらかというと部活よりも教科指導を優先したいタイプでしたので、外部指導員に任せて職員室で仕事をしていることもありました。

部活動に対する教員のスタンスは個々に差があり、部活最優先といった教員ももちろんいます。特にある程度の成績を残しているような部活は、熱心に練習に励んでいることでしょう。ですが公立の場合は、必ず教員の異動があります。その先生がいなくなると受け持ち手がいなくなる、ということだってあり得るのです。誰かが引き継がなければ廃部になってしまうため、不本意に顧問になる先生もいるでしょう。

2. 文化部

文化部は比較的活動日も少なく教員の負担も減るため、家庭の事情などで遅くまで残れない先生が受け持つことが多いです。学校によってバリエーションに富んだ部活があることでしょう。

代表的なものは演劇部、理科(天文)部、手芸部、手話部、囲碁将棋部、漫画部などで、学校や地域で特色があっておもしろいものもあります。文化部の中でも吹奏楽部は活動日が多く、大変な部活です。定期的に発表会やコンクールがあるからです。これは運動部や、合唱部など発表を伴う部活に共通していますね。


3.教員から見た部活動のメリットとデメリット

1. メリット

○生徒の意外な一面が見られる
部活動は生徒が自主的に参加し、行動するものです。授業などで見る顔とは全く別の顔を見せてくれ、それがけっこううれしく、楽しいものです。普段関わりのない学年の生徒と触れ合えるのも、部活動のメリットといえるでしょう。学年ごとにカラーが違い、生徒の雰囲気も変わります。いろいろな生徒との関わりが持てるというのは、教員としては楽しいことなのではないでしょうか。

○生徒との信頼関係が築きやすい
部活動のメンバーとは日常的に時間を共にしており、信頼関係を築きやすいというメリットもあります。それは部活動だけでなく普段の学校生活でも生きるもので、なにかあったときに非常に役に立ちます。「この先生の言うことなら信頼できる」といった関係を築けたら、指導が楽になること必至です。

○教員同士のネットワークができる
先にお話しした通り、大会や会議で他校の教員と顔を合わせる機会が多くあります。普段仕事をしていると、初任者研修(着任して1年間は研修期間です)期間が終わってしまった後に他校の教員と話をする機会はあまりありません。そもそも採用人数もそう多くないので、同期の数も限られています。

自分が何かに悩んだり、迷ったり、新しいアイディアがほしいときに、他校の先生に話を伺うということができれば、指導のヒントになることだってあるでしょう。私自身はそういった横のつながりが少し苦手だったこともあり、あまりお付き合いはありませんでしたが、それぞれの学校の特色を実際に感じることができるいいチャンスなのではないかと思います。

2. デメリット

○勤務時間に占める割合が大きい
昨今、部活動の問題はなにかと話題になっていますが、いちばんのデメリットは拘束時間が長いことです。教科指導に続いて、二番目に割く時間が多いのが部活動といっても過言ではないでしょう。

朝練、放課後練、土日の練習、大会などには必ず顧問の監督が必要です。多くの場合複数人で顧問をもつはずですが、いろいろな事情で「名前だけ顧問」となり、満足に活動に関わらない教員もいます。
部活動を指導したくて教員を目指す人も多いですが、実際はうまく時間を使わないと(というかかなりの残業を覚悟しないと)部活動に割く時間は作れません。地域で能力のある人を外部指導員として迎えることも可能ですが、人選に気を付けないとうまく協力できないかもしれませんので注意しましょう。

現状ではよほどの理由がない限り、顧問を引き受けざるを得ません。新任の先生で訳もわからず顧問を任じられ、その長時間ぶりに驚く人もいるでしょう。生活スタイルや世の中の流れが変わっていく中で、部活動のありかたもそろそろ変化していくべきなのかもしれませんね。
実際インターネットを中心に、部活動のありかたを問う運動が行われているようですね。なぜネットかというと、現場では上司や保護者の意見もあり、声が上げにくい状況が少なからずあるからです。

残念ながら過剰労働によって体調をくずしたり離職したりする先生も増えてきています。教員と生徒がうまく折り合いをつけて活動できるのが一番だと思います。

○温度差がトラブルになる場合もある
ここでいう温度差というのは、教員と生徒、教員と保護者などです。教員が部活動をバリバリやりたいタイプで、土日の休みもほぼ毎週活動、休みといえばお盆と年末年始だけ。極端な例かもしれませんが、部活動に熱心な先生はどこにでもいます。そんな教員が赴任(あるいは異動)したてで新しく部活動を受け持ったとき、生徒も同じ温度なら問題ありませんが、必ずしもそういうわけではありません。それまでゆるくまったりと活動してきた部活なら、なおさら抵抗が強いでしょうね。逆に生徒は意識が高いのに、教員に熱意が足りないといった場合もあります。

同じく保護者との間でも温度差がおこりやすいです。もっと活動してほしい(してほしくない)、送迎をするべき(するべきでない)など、いろいろな希望を保護者側も持っています。部活保護者会があるなら、保護者間での温度差もあるでしょう。そういった気持ちの行き違いがトラブルになり、クレームにつながることも考えておかなければいけません。

部活動は教員、生徒、保護者が協力しあって成り立つものなのではないかと思います。自分の意見だけを押し付けることなく、他者の意見も取り入れながら進めていくといいのではないでしょうか。

○ボランティアに近い
公立の教員は残業に手当がつきません。部活動で土日試合に出て、手当がでるわけでもありません。私の学校では年度末にまとめて現物支給されていましたが、数万円程度の図書券のみ。時給に換算すると400円とも言われています。本当に好きならそれでもモチベーションが保てるでしょうが、義務感で顧問をしているようなら割に合わない気がして当然かもしれません。

今ではそういったニュースを目にする機会も増え、問題視されているので、世間の認知度や文科省の関心も上がっているでしょう。
しかし部活動が学校運営の一環としてとらえられている限り、部活動をすることへの期待感と、しないことへの軽蔑のような感情はずっとあるのだと思います。

4.私の体験(バレーボール部顧問)

私は学生時代から足かけ10年ほどバレーボール部に所属していました。教員になって、部活動を持つならやはり経験したことのあるバレーボール部にしたいと思っており、実際幸いにもバレーボール部の顧問を持つことができました。そのときはメインの顧問がすでにいて私はサブの立場でしたが、時間を見つけて練習に参加していました。

数年後メインの顧問になりましたが、その頃は担任も持っていたため正直なことを言うと放課後の練習にはほとんど参加できませんでした。土日のどちらかは練習があり、練習がない日は試合があります。2、3週間休みなく連続勤務ということもありました。外部指導員もお願いしていましたが、仕事を持った人も多く、すべての練習に参加するというのは不可能。足りない分は私が補うしかありませんでした。


私にも個人的な用事がありましたし、生徒たちも学校行事や自分の生活で忙しいだろうと、土日の活動や試合への出場を減らしたこともあります。そのことで保護者から理不尽なクレームを受けたこともありました。

私にとって部活動の顧問というのは、生徒たちの成長を感じられる楽しい場でしたが、肉体的にはとてもしんどかったです。サブの先生に助けられたから続けられたようなもので、ひとりでは決してできなかっただろうと感じます。

5.まとめ

中学校の部活動には生徒、保護者からの期待が多く集まっています。すべての期待にこたえようとすると、教員自身が疲弊し、本来の業務に支障がでてしまうことだってあるでしょう。双方が満足し円滑に進めるためには、無理のない程度で教員が歩み寄る必要もあるのかもしれません。

自分が譲れない部分はしっかり主張して、楽しめる範囲で部活動に関わるのがいちばんだと思います。

本記事は、2017年6月12日時点調査または公開された情報です。
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