アメリカの学校で行われているいじめ対策 - ゼロトレランス方式について開設

どこの国でも、学校内での生徒間におけるいじめは深刻な問題です。近年では、インターネットやSNS等を使ったいじめ対策もあり、いじめ防止策も多様化しています。

本記事では、逆に、いじめ防止策として機能しなかった「ゼロトレランス方式」という方法について解説します。


はじめに – ゼロトレランス方式について紹介

いじめはアメリカでも大変深刻な問題で、今までたくさんのいじめ防止策が考え出され、それを元にいじめをなくすための取り組みが行われてきました。しかしそういった数ある防止策の中には、あまり効果的に機能しないものや、いじめを更に悪化させてしまったものもあります。

そこで今回は、過去にいじめに効果的とされた対策の中で、今ではあまり効果的ではないことが立証されつつある、ゼロトレランス方式をご紹介したいと思います。

ゼロトレランス方式とは?

ゼロトレランス方式は1990年代クリントン大統領の呼びかけのもと、荒廃した学校の規律を立て直すため導入された生徒指導の方式で、現在も全米で数多くの学校が取り入れ、教育現場で根強い支持を得ている生徒指導方式です。

この方式は、生徒に対して寛容度ゼロの規律を定め、規律を破った生徒には、有無を言わさず厳しい罰則が下されるというもので、主な罰則は停学、もしくは退学処分です。

規則や罰則が明確化されているので、指導する側にも対処方法が具体的でわかりやすく、時間や労力のロスが少なくてすみます。

生徒の違反行為を学校は寛容しないという、明確なメッセージを示すことにより、問題行動を起こす生徒に対して大きな抑止力になるため、現在公立、私立を含め、アメリカの90%以上の学校がゼロトレランス方式を校則に導入しています。

日本で罰則のある生徒指導と言えば、服装や髪型、またはアクセサリーなどに関すること、持ち込み禁止のものもスマホや授業に必要のない雑誌や週刊誌などと言ったところで、規則を破って持ち込んだからといって、命に関わるほどのものはありません。

アメリカでゼロトレランス方式によって主に規制しているのは、そういった服装や頭髪やスマホの持ち込みなどではなく、もっと深刻な、武器や銃刀類などの学校内への持ち込み、器物破損や暴力行為、薬物使用やアルコール摂取などです。

今年アリゾナ州フェニックスのメサ地区にある公立高校でも、通知表の評価が気に入らないという理由で、校内で拳銃発砲事件を起こした生徒が出た事で、ゼロトレランス方式を導入することになりました。

ゼロトレランス方式を使うことで、警察が関与しなければならないような危険な事件に対して大きな抑止力になる反面、教員が生徒に対して必要以上に権威的になり、暴力や薬物と全く無関係の子供たちが、厳しい処罰を受けてしまう場合も少なくありません。

また、近頃の調査によって、ゼロトレランス方式をいじめ対策にあまり効果がないことがわかってきました。


ゼロトレランス方式といじめ対策

アメリカの中・高生のいじめは、体格の良いいじめっ子が、ひ弱そうな子に対して大きな声で怒鳴ったり暴力を振るったりする、傍から見てわかりやすいものが多いです。

いじめっ子のタイプとしては、映画のバック・トゥ・ザ・フューチャーで、マイケルJフォックスをいじめていた、不良少年のビフ・タネンのようなタイプが典型的です。

あまりに頻繁に規則を破り、他の生徒に対して危害を加える非常に乱暴な生徒は、停学処分にして一時的に更生施設に移送した上で、専門的な指導する必要もあると思います。

しかし、いじめ専門家の意見は、同級生やクラスメートに対して日常的に暴力を振るうような生徒は、もともと素行があまり良くなくて、授業もサボリがちで、理由のない欠席が多く、停学、もしくは退学になったからと言って生活態度を改めるようなことはしないうえ、処罰を受けた事で反省するどころか、逆にキレてさらに凶暴になり、器物破損や窃盗など、もっと深刻な犯罪行為を繰り返すようになり、最悪の場合は学校に報復するために拳銃を乱射するなどの大事件を起こす可能性があると言います。

いじめを繰り返す暴力的な子供たちに本当に必要なのは、厳しい罰則を伴ったしつけではなく、いじめや暴力行為は許されない行為だと彼らに分からせることができる、良いお手本になるような大人や友達が必要だと言うことです。

まとめ

ゼロトレランス方式は、頻繁に規則を破る生徒たちに対して厳しい罰則を与えることによって、今ある問題をとりあえず抑えるという点では、絶大な効力を発揮すると思います。

しかし、いじめ対策に使用することによる弊害、例えばいじめの加害者が厳しい処罰を回避するために、大人の目に留まらないよう隠れて他の子をいじめたり、自分の子供を停学や退学処分から守るために、いじめの事実を知っても学校に報告しない保護者なども出てくる可能性があると思います。

大人へと成長していく子供たちには、いじめはどうしていけないのか、将来いじめをなくしていくためには何をしなければならないのか、ということに目を向けさせるようにするという考えのもと、現在アメリカではゼロトレランス方式は最終手段としてのみ実施され、標準的ないじめ防止対策としては使われていません。

こうしたアメリカの学校でのゼロトレランスの取り組み、どう評価されるべきだと思いますか。

本記事は、2020年3月22日時点調査または公開された情報です。
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