【中学校の先生の仕事】思春期の生徒への指導や保護者対応について

中学校の先生の仕事は、子供が学校にいる時間にとどまらず、教員の中には子供よりも保護者との接し方や対応に頭を抱える人も多くありません。しかしその反面、生徒指導で生徒とぶつかり合ったり時には涙したり、やりがいも十分な職務です。そんな生徒指導や保護者対応についてご紹介します。


中学校の生徒指導、保護者対応について

教員の仕事でもっとも楽しく、やりがいがあり、もっとも気をつかうのが生徒指導、保護者対応といえるでしょう。多感な時期の生徒たちですから、教員がなにげなく放った一言で深く傷ついたり、勘ぐったり、逆にものすごく励まされたり、方向性が決まったり…教員の言葉というのは時にそれほどの影響力があるのです。

また最近ではモンスターペアレントなどといった言葉も生まれるほど、保護者の見る目が厳しくなっているのも事実だと思います。生徒や保護者とどうやって渡り合っていくべきか、一緒に考えていきましょう。

1.生徒指導における心構え

(1)信頼関係が要

中学生ともなると、かなり個々の意見や考え方がしっかりしてきます。私の個人的な意見ですが、良好な上下関係というのはきちんとした信頼のもとにあり、生徒を見下したり侮蔑したりするような関係ではないと思うのです。そのためには普段から生徒の細かい点まで関心を持ち、なにかあれば「人生の先輩」として意見を言った方がいいのではないかと今になって考えます。

私自身が在職中は20代と若く生徒とも年齢が近かったため、比較的対等に話ができた記憶がありますが、同じことをずっと続けられる教員はきっと人気があるのでしょう。生徒指導に限ったことではないですが、年齢や経験を重ねるとプライドやこだわりが増え、自分の意見を押し付けてしまいがちです。できるだけ生徒の心に寄り添う指導ができれば一番だと思います。

しかしたとえ教員でも、正直言って苦手な生徒というのは存在します。なんだか好きになれない、そりが合わない、妙に反抗的である…教員だって人間ですから、苦手な生徒がいてもおかしくはないでしょう。私も自分のクラスに一人や二人は常にいた気がします。そういう生徒には無意識に厳しくあたりそうになってしまっていました。努めて平静を保つようにしていましたが、実際には自信があまりありません。

生徒全員と信頼関係を作るのは至難の業。少しずつ人数を増やし自分の味方を増やしていくと、生徒指導がぐんと楽になってくるはずです。

(2)「ダメなことはダメ」では効果がない

中学生はエネルギッシュでときどき羽目をはずしてしまうことも。これを読んでいるみなさんも、多かれ少なかれそういった記憶があるのではないでしょうか。人は失敗から学び、成長すると言います。失敗したとき、なにがいけなかったのかを明確にする作業が必要です。教員が介入する場面といえば、生徒同士のトラブルです。

その多くは言葉の行き違いや誤解、悪口などちょっとしたことから始まります。そこからいじめに発展することもあるでしょう。トラブルはなるべく小さいうちに対処できるといいですよね。

またなにがいけなかったのか、できるだけ論理的に説明してあげることも必要でしょう。理由がハッキリしないままただ叱っても、あまり効果がないかもしれません。中学生は大人に近い部分も多くありますが、まだ幼い部分も持ち合わせた微妙な年ごろ。教員として、生徒が一人前の大人になれるように、親とは別の立場で教え導いていく義務があります。

私自身はどちらかというと直感で動くタイプで、理路整然と物事を考えるのが苦手です。在職中は若かったこともあり、どうやって叱っていいのかわからないことも多くありました。まわりの先輩方にできない自分を見せたくなくて、一人悶々と考えていたこともあります。

今でもあの頃のことを思い出すと、自分の指導は正しかったのかという不安になりますが、きっと生徒自身も私の言葉の中から都合よく解釈しているのではないかという気にもなります。また私の場合はまわりの先輩方がアドバイスをくれたり、一緒に指導にあたってくれたり、チームワークを発揮して仕事ができたことも救われました。


いま現在、生徒指導で悩んでいる先生がもしいらっしゃるなら、ぜひ信頼できる先輩に相談してみてください。若いときには思いつかない視点を与えてくれるはずです。学校によっては同世代が少なく相談しにくく感じている先生もいるかもしれませんが、勇気をもって話してみるときっと力になってくれるでしょう。

(3)メリハリをつけた対応を

何度かお話していますが、生徒との信頼関係はとても大事です。せっかくの指導も、きちんと聞いてもらえなければ意味がありません。そのために普段の生活からきちんと生徒の行動や性格を理解し、普通の会話も積極的にするのです。いつもガミガミ怒るばかりでなく、ときには諭すように言って聞かせるのです。

また学年の教員で、生徒指導の役割や流れを作っておくというのもいいかもしれません。実際私が所属していた学年でも、担任から他の教員(生徒指導部)、学年主任という流れで指導が進んでいき、小さなものは担任だけで対処するといった感じでした。もちろん随時まわりに報告、相談しながらですので、不安感はかなり軽減されます。

ある先生は生徒指導に定評があり生徒たちにも一目置かれていましたので、その先生に怒られた生徒のアフターフォローを担任である私が行ったり・・・そういった連係プレーが、生徒の心を無駄に傷つけることなく指導する秘訣なのかなと思います。

2.障害のある生徒にはどう接するか

(1)まず知っておくべきこと

近年、特別支援が必要な生徒でも希望すれば普通学級に入れるようになっています。そのため身体、精神問わず、障害を抱えた生徒は増えてきているように感じます。特に注意欠陥多動性障害(ADHD)や学習障害(LD)、自閉症といった集団生活に影響がある障害を持った生徒とはどう関わっていくべきなのでしょう。

個々の障害についての説明は省きますが、総じていえば彼らはクラスの生徒と一緒の指導ではうまくいかないことが多いです。教員の指示や注意を自分のこととしてとらえたり、その時の雰囲気などを察し、的確に動くことなどを苦手としていますので、集団の中で彼らを叱ったとしても自分のこととは感じていない可能性が高く、怒りを逆なでするような行動をとったりすることもあります。

家庭でも学校でも怒られ続けた生徒は、二次障害として問題行動(ときには法に触れるようなことや、身体的に危険なことも)をするようになってしまいますので、対応には細心の注意が必要です。

その生徒に合ったきめ細かなケアが大切なのですが、実際のところ担任一人で個別に指導するのは限界があります。他の生徒は自分でできるからといって、放っておくことはできないからです。できれば複数人で対応にあたるのがベストであると研修などでもよく指摘されることなのですが、教員だけでは難しい場合も多くあるのが現実。自治体によっては障害を持った生徒に専属の指導員(非常勤)を配置してくれる場合もあるでしょう。

私自身教職を離れてから、そういった職に就いていた時期もあります。使える制度は積極的に使いたいものですね。

(2)問題行動があったときには?

在職中、ADHDなどの障害を持った生徒を何人か見てきましたが、当然ながら個々に状態や程度が違いました。障害自体は生まれ持ったものですが、その後の生育環境によって差が出てくるのかもしれません。前述したように、二次障害として問題行動を起こしてしまう場合、どのように対応したらいいのでしょうか。またパニックになってしまう生徒を、どうなだめたらいいのでしょうか。

まず大人数の前で叱ってもあまり効果がありません。周りに人がいると、自分が怒られているという感覚が乏しくなってしまうのです。怒られても平然としていることが多いですので、クラスの(悪い方向の)ムードメーカーになってしまうこともあります。一般の生徒が「こんなことをしてもいいんだ!」と勘違いしてしまう点が問題です。

できれば落ち着いた場所に移動して、ポイントを簡潔におさえて指導をするのがいいでしょう。なかなか時間が取れないかもしれませんが、その都度指導することで問題点がよりはっきり伝わると思います。頭ごなしに叱るのは逆効果。いたずらばかりしている彼らを見ると、ついどんな時でも咎めるような口調になってしまいがちですので、注意したいところです。

また自閉症を持つ生徒に多いですが、パニック症状を起こすこともあります。この場合もできるだけ速やかに、落ち着いた場所へ移動させるのがいいでしょう。中学校なら保健室やスクールカウンセラー室など、静かな場所で冷静になるのを待ちましょう。

パニックに中に指導をしてもほとんど聞いてくれませんし、逆にパニックを長引かせてしまうかもしれません。冷静になってからでも遅くはありませんので、焦らずに様子を観察してくださいね。

3.保護者との接し方

(1)保護者は「自分の子供がいちばん」なだけ

次に保護者との接し方について考えましょう。クラスの保護者に理不尽な要求をされたりしていませんか?言葉尻をとらえて、言いがかりのようなクレームをつけられていませんか?


テレビなどでもよく話題になっていますが、保護者も学歴が高くなってきているため、教員のことを見下している場合があると言います。クレーマー体質の保護者だっています。教員としてはとても悲しいことですが、一生懸命やったことが裏目に出てしまうことが時々あるのは仕方がないのかもしれません。

私自身もクラスや部活動で保護者の方たちにはお世話になっていましたが、ちょっとした意見の食い違いや言葉の選び方でトラブルになった経験があります。正直に言って、精神的にとても疲れました。その都度先輩教員の手を借りながら解決して乗り越えることができましたが、その時感じたのは小見出しにつけたように「自分の子供がいちばん」なんだということです。当然と言えば当然ですよね。

(2)協力者としての立場を貫く

ただ教員ができることというのはとても限られており、保護者とは協力関係にあるべきです。学校ではできない要求をされたとき、むやみに受ける必要はないと思いますが、無下に断るのも感じが悪いので、「協力できることはする」といったスタンスを崩さないことが大切でしょう。

そうやってじっくり(電話やメールではなく、できるだけ顔を合わせて)話し合うことで徐々に関係が改善していくのではないでしょうか。

4.まとめ

教員の醍醐味でもある生徒指導ですが難しい面もたくさんあり、日々悩みながら取り組んでいる先生もおられることでしょう。ひとりひとり考え方が違うように、接し方が違って当然なのです。逆にいろいろな教員がいろいろな対応をすることで、生徒が彩り豊かな感性を育てることができると考えるといいですね。

指導のポイントとタイミングを逃さず、しっかり生徒や保護者と向き合うようにしてくださいね!

本記事は、2017年7月31日時点調査または公開された情報です。
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