【日本の出産】母乳・自然分娩・三歳児神話… 女性を苦しめている「神話」

妊娠や出産は、命を生む行為であり、女性にしかできません。新しい命を生むためには女性は辛い思いや痛い思いもたくさんします。妊娠や出産、そして育児は人それぞれですが、今色々な「神話」が、妊娠や出産、育児において女性を苦しめている原因となっているのです。


妊娠や出産、育児において女性を苦しめるもの

妊娠中は体の変化やつわりなど

妊娠すると、女性はホルモンバランスが乱れ、気分の浮き沈みが激しくなったり、物忘れが激しくなったりします。また、妊娠周期と共に大きくなるお腹を支える為に無理な姿勢を取って、腰痛や肩こり、膝の痛み、坐骨神経痛などの不調が出る事も多いです。

また、妊娠初期に経験するつわりも色々なタイプがあり、吐きつわりだけでなく食べつわり、よだれつわりや匂いのつわりなど様々です。重度妊娠悪阻になって入院を余儀なくされる事もあります。また、お腹の重みで内臓が圧迫され、逆流性食道炎や便秘となる人もいます。そして、これらの症状は出産を終えるまで苦しめられる人もいるのです。

他にも、切迫流産や早産で入退院や安静生活を余儀なくされる人や、妊娠高血圧症や糖尿病などで、ハイリスク妊婦として管理された生活を送る人もいます。

出産後は、寝不足と授乳、そして育児

出産後は、自然分娩の場合には会陰切開の後や子宮の収縮する痛み、帝王切開の場合にはお腹の傷の痛みなど、様々な痛みが襲います。一説によると、人間の出産は通常の分娩でも交通事故に合った時と同じくらいのダメージが体にかかると言われています。また、男性は出産の痛みに耐えられず、もしも男性が出産をしようとすると痛みで死んでしまう、とも言われています。

産後のまだ回復していない体を引きずりながら、新生児の世話が始まります。新生児は、およそ3時間ごとに授乳をしなければいけませんので、昼夜問わずのお世話が始まります。まだ泣く事しかできない真性児を抱えて、寝不足でフラフラしながらも育児をします。また、まだ母乳の分泌量が安定していない時には、1時間足らずの内に授乳をしなければいけません。ミルクの場合にも、夜間でもミルクの分量を正しく調乳して、人肌に冷まして与えなければいけません。

他にも、母乳が出る為のマッサージで強い痛みを感じたり、乳腺炎になって高熱が出たり、乳房に激しい痛みを感じる事もあります。

1年後からは子供の発育に合わせた悩み…

新生児期が過ぎても離乳食が始まったり、子供の発育に関わって色々な悩みを持つようになったりします。歩かない、しゃべらないなど発育に不安を感じる事もあり、偏食が多くなかなか離乳食が進まない事もあります。

成長すれば、イヤイヤ期が始まって全然いう事を聞かない子供に対してイライラしてしまう事も多いです。ひとりになりたくても、子供の預け先もなくリフレッシュができない人もいます。

育児はとても尊いもので、大変です。女性は色々な痛みや苦しみと闘いながらも子供を懸命に育てています。けれども、子供の成長を喜んだり、自分に返ってくる物も多かったりするのが育児なのです。

これ以外で、母親を苦しめる色々な「神話」

妊娠や出産、育児は大変な物ですが、子供の気質や周りのサポートなどによって、難易度は変わってきます。育てやすい子供ならもちろん育児は楽になりますし、夫や両親を始めとして、育児で頼ったり預けたりできる人がいれば、それだけでぐっと楽になります。

ところが、妊娠や出産、育児を辛いものにしてしまう「神話」があるのです。これらについて見てみましょう。


根拠は全くなし、母親を苦しめる神話とは

色々な弊害も出てしまう、母乳神話

母乳で育児をする事はとても良い事と言われています。母乳を通じて、母親の持っている免疫力を子供に与える事ができる、母親の子宮復古を促す、何よりも子供との愛着がある…、などメリットも沢山あります。ですので、母乳で育てる事を希望する母親は多くいます。

けれども、母乳が出るのは実は個人差があります。全く母乳が出ない体質の女性ももちろんいます。また、たくさん飲む赤ちゃんなら、人並みに母乳が出る女性でも、分泌が間に合わない場合があります。

また、出産後に持病などの関係で投薬治療を行う人は、母乳を通じて赤ちゃんに薬の成分が吸収されてしまう為、母乳育児ができないといった場合もあります。

今は、母乳が出ない、あげられないなどの理由が合ってもミルクで育児ができます。完全ミルクの育児でもすくすく子供は育ちますし、母乳の量が足りない場合には、スキンシップの為に母乳を上げて、必要な分はミルクをあげるといった混合育児もできます。日本のミルクメーカーは栄養素も豊富で、母乳とそん色なく育児ができます。

ところが、母乳で育てないのは悪とする風潮が残念ながらあり、「母乳神話」と言われています。母乳が出ないのは「母親の努力不足」と言われ、母乳マッサージや母乳が出ると言われている食事指導を行う助産師などもいます。母親自身も、「とにかく母乳で育てなければいけない」と半ばノイローゼになってしまったり、ミルクを悪と思う為にミルクを足さずに、赤ちゃんの体重が増えなかったりなどの弊害が出てしまうのです。

帝王切開は悪という風潮

女性が分娩を行う時には、赤ちゃんは産道を通ってきます。その時に女性は陣痛などの激しい痛みに耐えていますが、赤ちゃんも母親の胎内から出る為に最初の試練を乗り越える事となります。母子ともに辛く痛い思いを乗り越えて、無事に分娩が済む出産はとても神秘的な物でもあります。

出産の方法は自然分娩だけでなく、帝王切開もあります。既往症や多胎、逆子、胎児の大きさと母親の骨盤の大きさが合わないなどで自然分娩が難しい時、出産が2日間など長期に及び、母体に疲労が出てしまっている時、へその緒が絡まっている、胎児の心拍が落ちているなどただちに母体から胎児を出さないと命の危険がある時は、帝王切開になります。帝王切開は、あらかじめ手術日を決めて臨む予定帝王切開もあれば、分娩の進行上、帝王切開の方が良いと医師が判断した時に切り替えられる、緊急帝王切開があります。

帝王切開によって、より安全に分娩が行われるケースもあります。ところが、帝王切開は悪である、もしくは陣痛を経験しない為に「楽に産めてよかったね」と言われる事が多いのです。帝王切開の場合、子供は産道を通らないため我慢ができない子になる、わがままな子になる、などと言われていますが、これらの根拠は全くありません。また、帝王切開でも産後の痛みが辛い、麻酔で気分が悪くなるなど決して楽な分娩方法とは言えません。

帝王切開で出産した女性の中には、「自分がもっと頑張れば帝王切開にならなかったかもしれない」と思い、ノイローゼになってしまったり、帝王切開コンプレックスになってしまったりします。

無痛分娩が普及しない訳

出産時の痛みを麻酔によってやわらげ、痛みのない分娩方法として日本でも人気が高くなってきているのが無痛分娩です。既に欧米ではポピュラーな出産方法で、痛みがない事から出産後の回復も早い、出産への恐怖心が薄れるなどのメリットもあります。日本では、麻酔を的確に管理できる産婦人科医がいないなどから、特定の産婦人科でなければ無痛分娩を受ける事ができません。

日本に無痛分娩が普及しない理由は麻酔医が不足している事だけではありません。無痛分娩は悪とする風潮も、無痛分娩の普及の妨げとなっています。日本は「痛みに耐えてこそ出産」といった、我慢をする事を美徳とする文化があります。日本人の考え方として、「痛みや辛さに耐えてこそ、最高の結果が表れる」といった考えがあり、とても素晴らしい事ではありますが、我慢できる人はそうすれば良いですし、逆に無痛分娩が良い人は無痛分娩を選択すれば良いだけの話です。

虫歯の治療や手術の時には麻酔を使用します。けれども、なぜ出産だけ麻酔を使うのが悪と言われるのでしょうか。また、無痛分娩で出産した女性に対しても「根性がない」などと言う心無い人も残念ながらいます。

三歳児神話

「三歳児神話」という言葉があります。子供は三歳まで母親の手元で育てた方が、その後の発育が良いとされる説です。

けれども、今は共働きの世帯も当たり前になり、0歳や1歳で保育園に子供を預けて仕事に復帰する女性も多くなりました。そんな女性に対して「小さいうちから保育園に預けるなんてかわいそう」という、心無い言葉をかける人がいるのです。

他にも、専業主婦の人でもたまには子供と離れてリフレッシュしたい、一人の時間が欲しいと感じる事があります。そんな時には一時保育などを利用する事ができますが「働いていないくせに子供を預けるなんて…」という意見も残念ながらあるのです。


他にもある、根拠のない神話とは

母乳や分娩方法、手元で育てるか保育園に入れるかだけでなく、他にも根拠のない神話はたくさんあります。

中には、「予防接種は悪」というとんでもない神話もあります。生まれた子供は、決められた時期に予防接種を打つことによって重大な疾患を予防できる他、周りへの感染を食い止めるといった効果もあります。けれども、予防接種は自然に反している行為の為、「自閉症のリスクが高くなる」「発育に良くない」などの説があるのです。もちろん、予防接種は国で管轄されていますので、子供には打つべきと考えます。

一番かわいそうなのが、これらの根拠のない神話に振り回される事によって、影響を受ける赤ちゃんや子供自身です。母乳が足りないのにミルクを貰えずに、体重の増加不良となってしまう赤ちゃん、予防接種を受けなかったことによって重大な疾患になり、最悪の場合命を落としてしまう子供もいるのです。

神話なんて怖くない!妊娠出産、育児を楽しむ方法

赤ちゃんがお腹いっぱいになるのが一番大事

母乳育児ができない事や、軌道に乗らない事でノイローゼとなっている方は、まず赤ちゃんがお腹いっぱいになる事が大切、という事を思い出しましょう。

母乳でもミルクでも、大切なのは赤ちゃんが十分に栄養を取り、順調に発育する事です。母乳育児を諦めたくなくて、ミルクにする踏ん切りがつかない人は、母乳もミルクも両方与えても良いのです。また、母乳が出ないでイライラしていたり、落ち込んでいたりするのは、自分にとっても、赤ちゃんにとっても良くありません。

分娩方法よりも、その後の育て方と思う

帝王切開や無痛分娩での出産で、心無い言葉をかけられた時や、自分自身の気持ちが落ち着かない時には、分娩方法ではなく、その後の育て方が大切という事を思い出しましょう。

自然分娩で生まれ、ネグレクトや虐待を受けた子供と、帝王切開や無痛分娩で、愛情をたくさん受けて育った子供では、どちらの方が順調な発育をするでしょうか?大切なのは、産み方ではなく、育て方なのです。

自分が納得できる育て方をする

手元の残したかったのに復帰せざるを得なかった人や、仕事を続けたかったのに保育園に入れず退職をした人などが、子供を手元で育てている人、保育園に入れている人に対して憎しみを持ってしまいがちです。その為、「よそはよそ、うちはうち」と割り切って、自分が納得できる育児を実践しましょう。

もちろん、専業主婦の方でもリフレッシュのために子供を預けてもいいのです。自治体で提供している一時保育やファミリーサポートは、リフレッシュ目的での利用ももちろん可能です。子育てにイライラしている方や、煮詰まっている女性こそ、子供と離れて一人の時間を持ってリフレッシュしてみると、子供にも優しく接する事ができるようになるかもしれません。

世代間のギャップで出る神話もある

これらの神話は、実は今の子育て世代よりも上の世代から言われる事が多くなっています。特に、実母や義母、年配の親戚の女性から言われた経験を持つ女性も多いのです。

育児に関する常識は、時代の変遷とともに移り変わってきます。自分の息子や娘の孫が生まれた時には、今の育児の常識が非常識となっている可能性もあるのです。上の世代の人から、根拠のない「神話」を言われる事も「仕方のない事」と割り切ってみると、とても楽になれます。

本記事は、2018年1月6日時点調査または公開された情報です。
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