【先生の転職】私立小学校から公立小学校の先生に転職

「小学校教員」というと公務員のイメージが大きいかもしれません。しかし、日本には私立小学校もあります。今回は、私立小学校へ新卒就職し、退職して公立小学校として働いている方にお話を伺いました。小学校の教員になるということの見方が変わるかもしれません。


はじめに

私は、教育学部の大学を卒業した後に、大学院へ進学して、修士課程を修了しました。卒論・修論の研究内容は、ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)を活用した教育方法に関することでした。

研究内容を簡単に言うと、教室に1人1台のタブレット端末を使って、どのような授業ができるのかどうか、授業を作ってみて実際に実践し、その評価をするというものです。

今日は、そんな私が私立小学校へ新卒就職し、その後に公立小学校へ就職した体験談について、お話いたします。

どうして私立小学校の教員になったのか?

まず、私の生い立ちを簡単にお話しした上で、私立小学校の教員になった理由についてご説明したいと思います。

私は地方の公立小学校に入学しました(1995年頃)。1学年につき2学級であったため、比較的小さい学校だといえます。両親がIT関係の仕事をしていたため、私自身も幼い頃から家でパソコンを使って遊んでいました。

そのため、小学校の授業でパソコンを使う内容があると、とても楽しくて、「ICTを活用した楽しい授業ができるような先生になりたい!」と思っていました。

大学へ進学する時も、教育学部を選びました。所属したゼミの研究・バイトとして、全国の様々な小学校へ訪問する機会がありました。そこで、「学校の情報化はこんなにも遅れているのか…!」というショックを受けました。

私がバイトを始めたのが2012年頃からですので、世界中ではタブレット端末が開発・普及されてきている中でした。学校の教室でも、タブレット端末を活用した授業を模索している学校もありました。しかし、そもそもパソコンを使った授業なども十分ではなく、教室に大型テレビなども無いような学校もありました。

バイト学校の先生とお話しをしても、色々な課題があることがわかりました。「私はパソコン苦手なので…」「タブレットは触ったことがないので…」など、授業でICTを活用することについて、あまりにも後ろ向きな声が多かったのです。

確かに、学校の先生になっている人たちは、自分が受けてきた教育を理想として「学校の先生になろう!」と志しているわけでしょう。タブレット端末等の新しいICTを使った授業をしようという考えには、なかなか及ばないのも無理のないことです。

実際に、私が教育学部の学生だった頃も、周りを見渡してもICT等を得意としている人はあまりいませんでした。当時の学生は、小さい頃から電子機器に触れている、いわゆる「デジタルネイティブ」といわれる世代です。しかし、先にも述べたように、自分が受けてきた教育を理想としている訳です。


自分を立てるようでおこがましいですが、私はそういう意味で、先生になりたいという動機は異なっていました。

「どんなに特殊な環境と言われても、ICTを活用した授業の成功事例を積み上げて、いつか環境が不十分でない学校にも広げていきたい!」

そうした草の根で活動していくには、私立小学校の方が恵まれた環境ではないか、と考えた訳です。私自身、公立学校出身なので、不安は大きかったですが、私立小学校の先生から色々な話を聞いた上で、就職活動をすることを決めました。

私立小学校ならではの仕事内容

そもそも私立小学校は、日本にどれ位あるのでしょうか。

一般社団法人日本私学教育研究所によって2017年8月3日に公表された情報によると、平成29年度の小学校の総学校数は20,095校、私立小学校は231校とのことです。つまり、私立小学校の割合は、小学校の総学校数のうち約1.1%という計算になります。

(※この調査は、毎年5月1日による文部科学省学校基本調査によるもので、平成29年度は同速報によるものです)

これを聞くと、「私立小学校は少ない」というような印象を受けるかもしれません。
しかし、大阪・兵庫・京都・奈良で約40校、東京だけで約50校、都市部においては、私立小学校はそう珍しくないと言えるのではないでしょうか。

そんな私立小学校は、当然ながら「お受験」によって入学が決まります。

受験する側としては、学習塾などに通わせて第一志望の私立小学校の合格を目指すということになります。
しかし、小学校側としては、「入試広報」が欠かせません。一定数の入学者を集めることができなければ、採算が合わないということになります。ょって「廃校」ということも有り得るのです。

今は少子化の時代ですから、各私立小学校では、独自の魅力的な教育方針を掲げて、少しでも多くの入学希望者が出るように、広報を進めている訳です。

よって、私立小学校の教員は、週末に学習塾や各種入試イベントへ参加することがあります。これが、公立小学校の教員と私立小学校の教員の、決定的な仕事の違いであると言えるでしょう。

その他の仕事の違いとして、土曜授業・放課後教室(アフタースクールなど)・クラブ活動(部活動)・定期テストなどがあります。夏休みなどの長期休みや修学旅行では、海外に行くこともあり、その引率をすることなども、大きな仕事の違いでしょう。

どうして私立小学校を退職したのか?

先ほども述べたように、私はICTを活用した授業を進めて行くことを考えておりました。こうした教育に力を入れている私立小学校で教員をすることができましたが、2年間で退職してしまいました。

その理由は、「専任(終身雇用)での教員になることの難しさ」があったからです。

私が私立小学校の教員になったのも、常勤(フルタイム)でしたが、有期契約という形でした。そのため、その契約を更新して専任(終身雇用)になることを目指しておりましたが、達成することができませんでした。


なぜ、その難しさがあるのでしょうか。もちろん、私自身の実力不足はあるのですが、考えられる大きな理由として、「他の専任教員が辞めるタイミングでないと、新しく専任教員を雇えない」ということが挙げられます。

他の民間企業と私立小学校の採用で決定的に異なるのは、事業規模を拡大するために、年によって多めに新卒社員を採用する等の戦略が無いことです。

私立小学校の数を増やさない限り、同じ規模の学校で教員を増やすことはなかなかできません。ましてや少子化の時代です。

そうしたご縁に恵まれなかったということもあり、私は公立小学校へ移る、つまり転職することを決意しました。

私立と公立の両方の小学校の教員になって思うこと

公立小学校へ移って1年。私立小学校の時のように恵まれたICT環境に無いことはありますが、今の公立小学校では、色々なプレッシャーから解放されて仕事ができていると思います。

私立小学校で教員をしていた時は、目に見える子どもの成長の成果として、どうすれば学力を伸ばすことができるかということを、常に考え頭を悩ませていました。

しかし、今の公立小学校では、子どもの成長の成果とは、長い目で見ていつか現れるだろうな、学力だけが成果ではないな、といった気持ちの余裕が生まれています。

私が目指していたICTを活用した授業も、理想とは少し離れてはいますが、ゆるやかに公立小学校に合う形で実践をすることができています。

もちろん、私立小学校の教員が大変などと言いたい訳ではなく、私立小学校と公立小学校のそれぞれの良さがあると思っています。

この記事をお読みいただいた方にも、小学校の先生になることについて、少しでも見方が広がってくれれば嬉しいです。私立小学校には私立小学校の良さがありますし、公立小学校には公立小学校の良さがあります。

「小学校の教員=公立小学校」、「私立小学校は特別だから」という偏見を無くしていただき、未来のある子どもたちのためにできることを考えて頂ければ幸いです。

本記事は、2017年11月3日時点調査または公開された情報です。
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