はじめに – 中学校の先生によるコラム
生徒たちの進路指導をすることは、教師にとって重要な仕事の一つです。生徒は、自分の考えだけではなく、周囲の大人の助言を元に、自分の進路を決めていきます。
本記事では、中学校の先生に、「不登校の生徒の進路指導」について、コラムにして書いてもらいました。
不登校生徒の進路指導その1:Aくんの場合
Aくんは校区外の小学校から中学校進学時に引っ越してきて入学をしました。1年生の時は登校していましたが、2年生の途中で休むようになりました。その時の担任の先生の話では1年生の時は新しい環境にも慣れて楽しんで過ごすことができていましたが、2年生になってから環境や友人、雰囲気に違和感を感じ始め、学校に行きづらくなったということでした。
3年生になって私が担任を持つことになりました。家庭訪問に行くと、あまり外に出ていないのか色白になっていましたが、気さくに話をしていました。登校の意思はあまりないようでした。私がもっていたクラスにAくんと仲のいい生徒がいたのでAくんと話すときもその生徒の話をしたり、その生徒からAくんとコンタクトを取ってもらうこともあったり助けてもらったこともありました。
進路の時期になり、登校していないことから評定がないため公立は難しいということで、私立高校への進学を希望していました。学校における実力テストも受けていなかったので学力の判断が難しかったのですが、外部の模試の結果を使って、進路指導の先生にも相談しながら志望校を絞っていきました。保護者の方が熱心な方で、Aくんが希望する学校は正直少し厳しいかなという学校でした。
しかし事前相談で校長先生が高校に話もしてくださり、受けても大丈夫だろうということになりました。しかしこのころからAくん進路の話の返事は煮え切らない雰囲気がありました。
ある日進路のことで相談があると保護者の方から電話があり家庭訪問に行きました。すると、Aくんは私立の全日制高校には通える自信がなくなり、通学ありの通信制高校を受験したいということでした。さらに家庭訪問に行ったその日がその高校の願書申し込み締切日でした。自分だけでは判断をしかねたので一旦預かって学校に戻り、進路指導の先生、校長先生に相談しました。
不登校である彼の気持ちを尊重した方が今後のためになるということで、通信制高校の受験をさせることに決まりました。ネットで願書提出という形だったので、事前チェックもできず、本人と保護者の方にお任せするしかないということになりました。その後作文と面接の試験を受け、みごと合格しました。
このように急に志望校を変えるというのは初めてだったのでびっくりしましたし、心配もありましたが、本人も保護者の方も納得できる進路を選んでもらえてよかったと思います。高校に進学後、たまたま道端でAくんに会うことがありましたが、元気に通っていて楽しいと言っていました。
不登校生徒の進路指導その2:Bさんの場合
Bさんは小学校の頃から不登校ということでしたが、中学校に進学して心機一転、1年生の1学期は途中まで登校していました。しかし途中からなかなか学校に来づらくなったようで、長期欠席にはいっていきました。
2年生も全く学校には登校せず、3年生になり私が担任を持つことになりました。彼女ともほとんど話したことがなかったので、家庭訪問は少し緊張しましたが、行けば少し話すという感じでした。その場にはいつもお母さんがついていました。学校にも3年生になったので少し行ってみようかなという気持ちになっているという風にも話していました。
その後、週に1回くらいは連絡か家庭訪問をと思い、どちらかをしていましたが、それが本人にはプレッシャーだったらしく、校長先生を通してちょっとしんどいと言われてしまったので、少し間をおいてコンタクトを取るようにしました。
進路の時期になってもなかなか連絡が取れなかったり話ができないということが続きましたが、なんとか連絡がとれて進学について聞いてみると、公立の昼夜間単位制の高校への進学を希望していました。願書も見本を渡して家で書いてもらい、それをチェックして、作成しました。試験は学力検査と面接ということで、ほとんど学校に来てなかったので不安はありました。
例年ギリギリ定員が割れるか割れないかという学校でしたが、その年は定員割れしていたので、試験を受けずして合格が決まりました。試験当日もちゃんと受けに行ったので、無事合格しました。もし不合格なら浪人させようと思うとお母さんが言ってらっしゃっていて、それは大変だろうと思っていたので、本当によかったです。
不登校生徒の進路指導その3:Cさんの場合
Cさんは小学生の妹さんが不登校という家庭環境で、1年生の時は普通に登校していましたが、2年生の1学期の終わりくらいから不登校にはいりました。
3年生になって私が担任を持つことになりました。3年生になると高校へ進学をしたいからという理由で心機一転登校していました。時々息抜き休憩で欠席することはありましたががんばって登校していました。
進路の時期になり、志望校は私立の女子校に決めました。普通コースと特進コースがある学校で、彼女は特進コースを希望していました。(特進コースになると少し奨学金がでました。)
しかし学力的には特進コースは五分五分で、事前の進路相談でも当日の点数次第と言われていました。その頃になると彼女は不安をよく口にするようになったり、欠席する日も増えていきました。
とにかく彼女を励ませるような言葉かけをするようにしていました。彼女にもクラスに仲のいい生徒がいたので、その生徒もいい距離感で支えになってくれていました。
最終的に、彼女は希望であった学校の特進コースに合格することができました。卒業後、次は妹さんの担任になったので、家に行くとたまに彼女に会うことがあり、「小テストがあって」など勉強が大変だといっぱい言っていましたが、希望の学校に行けてとても楽しそうでした。
まとめ
いかがでしたか?
「不登校の生徒の進路指導」について、3人の生徒を例に、書いていただきました。
教師を目指している方、現在教師として不登校の生徒に向き合っている方は、ぜひこの記事をご参考ください。
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