アメリカではいじめの加害者は、どのように罰せられるのか?

昔はアメリカでも日本と同様に、校内でのいじめは、学校制度の範囲内で処理されていました。しかし現在、いじめによる自殺を重く捉えて、学校への厳しいいじめ対策と、州当局の法的措置を求める声が高まっていて、全米50州すべてが、何らかのいじめ防止・対策法法を導入済みです。

そこで今回は、アメリカでどのようにいじめの加害者が罰せられるのかを、ご紹介したいと思います。


アメリカのいじめ加害者への措置

アメリカでは、いじめに関する法律は州ごとに制定されているので、規定の厳しさは州によってばらつきがありますが、現在全米どこの州でも、いじめ行為が刑法上の規定に該当する場合には、未成年であっても、有罪になれば、懲役になる可能性があります。

このような厳しいいじめ対策法が全米で制定されたのには、いじめにより自殺をした子供達の遺族や、被害者を支援する団体が、各州議会にいじめ対策法案の制定を求める運動を、熱心に行った事が挙げられると思います。

きびしく、いじめ対策を施行するマサチューセッツ州

州によっては、いじめ行為を明確に提起していない所もあるのですが、最も規制の厳しいいじめ対策法を、導入しているとされるマサチューセッツ州では、いじめ行為を刑法の対象にできるよう、既存のいじめ対策法、そしてまた法律も併せて改正して、特定のいじめ行為が、嫌がらせ、つきまとい、電話・ 電子機器による迷惑行為の罪に該当するようになりました。

生徒によるネットいじめに関しても、教育課程と学校の秩序ある運営を著しく妨害する行為と定義されていて、たとえ学区外でいじめが行われていたとしても、学校に対応義務があると州法で定め、州全ての学校にいじめ対策プログラムの実施を義務付けています。

プログラムのルールと細かい処罰内容は、学校側に委ねられていますが、このプログラムの実施によって、学校でのいじめが半減しているそうです。

刑法によるいじめ加害者の処罰

2010年にアメリカ、ニュージャージー州で起こった、ゲイのタイラー・クレメンティ君を盗撮してネットでライブ配信し、自殺に追い込んだ彼の2人のルームメイトは、プライバシーの侵害やその他10の罪状で、刑事裁判にかけられました。

最終判決が下されたのは2年後の2012年、最終的には、検事の主張した5年間の懲役刑は免れましたが、それでも30日間の禁固刑と3年間の保護観察、300時間の無料社会奉仕、罰金$10000といじめ更生の為のカウンセリングに通うことを義務付けられました。

それ以外にも、アメリカの市民権を剥奪して、彼を国外追放にした方が良いという声も上がりましたが、そこまでにはいたらなかったようです。

いじめの代償、社会的制裁が大きいアメリカ

アメリカでは、たとえ裁判所で判決が出て、いじめ加害者が全ての刑罰を受け入れ、自分の犯した罪をとても反省したとしても、支払わなくてはならないいじめの代償はそれだけではありません。

もし情状酌量が認められ、裁判で最終的に無罪になったとしても、いじめによって裁かれる加害者の未来は、大きく変わってしまいます。

例えば日本の学校で、いじめにより被害者が自殺をした場合でも、学校関係者の謝罪がテレビや新聞に出流事があっても、いじめの加害者の写真が新聞に載り、名前や住所がニュースで明かされることはまずないと思います。


アメリカでは言論の自由のもと、事件の被害者に同情した加害者を良く知る住民が、事件の委細と共に、本人の写真や名前、生い立ち、家族構成などを事細かに綴った物を、新聞社に持ち込む人達がたくさん出ます。

たとえ友人知人に身元を暴露されなかったとしても、新聞記者やニュースキャスターを止める事は出来ませんし、加害者が未成年であっても、裁判中の様子が一部始終、テレビ中継される場合もあり、世間から身を隠す事は不可能です。

そしてほとんどの公立高校は、重犯罪で訴追された生徒の入学を認めないので、遠くの公立学校に転校して、人生をリセットする事は出来ません。私立高校なら編入する事ができますが、莫大な学費を払わなくてはならず、経済的に余裕のある家庭でも大変な負担になります。

元々通っていた学校も、法廷で判決が降りるまで出席停止になるので、卒業することもできず、もし事前に大学への進学が決まっていたとしても、大学側から入学を拒否される可能性もあります。

自宅には、毎日のように誹謗中傷や脅迫電話がかかってきて、家に石が投げつけられ、窓が破られたり、家から出ると人々が待ち構えていて、スマートフォンのカメラを向けられ、ネットでさらに情報をアップデートされたりします。

まとめ – いじめ行為が犯罪歴として残るアメリカ

アメリカでは、たとえいじめ加害者が未成年者だったとしても、プライバシーが保護される事はなく、厳しい州では、いじめを犯罪として取り扱い、加害者が小学生であっても、有罪になれば犯罪歴がつきます。

いじめ事件の中には、犯罪として扱われても当然な、悪意に満ちたものも、もちろんあります。しかし大体の場合、いじめ加害者は、自分が他人を傷つけた事を大変後悔していると思います。

そう言った自分の罪を認め、償って行こうとしている子供達も、名前や顔、住所などを世間に公表され、事件に過剰反応する大人達に非難され、心に傷をつけられ、更生するチャンスを奪われているのかもしれません。

皮肉なことに、このような犯罪者のレッテルを貼られた、いじめ加害者が経験する苦しみは、いじめを苦に自殺した被害者の苦しみと、大変類似しているのではないでしょうか。

日本のように加害者を守りすぎるのもどうかと思いますが、全てを晒されてしまうアメリカのいじめ対策法、皆さんはどう思いますか?

本記事は、2020年3月23日時点調査または公開された情報です。
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