保健室の先生(養護教諭)が感じた、職場のブラックなところ

今回は、私立高校で5年、一律の小学校で10年、保健室の先生(養護教員)として働いた経験を持つUさんに「職場でブラックだと感じたところ」について取材し、まとめました。

保健室の先生(養護教員)として働く上で、ブラックな面を知ることは非常に大切です。ぜひこの記事を参考にしてください。


はじめに

保健室の先生(養護教員)として働いていると、多くのやりがいを感じることができます。ですが、残念ながら「この部分はしんどい」「過重労働だな」と感じる部分もあります。

本記事では、私が働いていた中で感じたブラックなところを7つ、お話します。

学校のブラックなところその1:時間外勤務

学校のブラックなところの1つ目は、時間外勤務が多いことです。

就労時間は8時30分から17時15分ですが、時間通りに出退勤する教員はいません。

教室の整備や保護者対応、不登校傾向児童の家へ迎えに行く、校門指導など、始業時間前の業務が当たり前にあり、放課後は児童の補習や会議に次ぐ会議、その後保護者への報告連絡業務があり、その後ようやく翌日の授業準備となります。

もちろん、時間外勤務には、手当は付きません。

学校のブラックなところその2:休日出勤

学校のブラックなところの2つ目は、校区内の地域行事に参加しなければならない点です。

地蔵盆や夏祭り、地域の運動会や懇親会に、教員も参加します。地域の人たちと触れ合うことが目的と言われ、土日や夜に参加します。

手当は全く付きませんが、土日の昼間の行事参加については代休がもらえます。とはいえ、有給休暇さえ消化できないのに代休がもらえても、結局使い切ることができません。

校種や地域によって差がありますが、小学校でも部活動・クラブチームがある地域があります。その場合、数千円の手当で、持ち出しの方が多い状況の中、自分が行っていたスポーツや楽器の指導を休日に行います。

なお、中学や高校の場合は、地域や社会人クラブチームの大会などの審判や運営があります。これもお昼のお弁当や日当数千円で借り出されます。


「教育」「育成」「地域貢献」という名目のもと、ボランティアで行われていることがたくさんあります。

学校のブラックなところその3:「給与の頭打ち」問題

学校のブラックなところの3つ目は、「給与の頭打ち」問題です。

現在、管理職、特に「教頭」のなり手がいないため、苦肉の策として教育委員会は「給与の頭打ち」というシステムを作りました。この「給与の頭打ち」とは、管理職にならなければ昇給ベースがストップするというものです。

昇給ベースの頭打ちは、退職金の金額にも関わってきます。なので教員の中には、なりたくなくても、仕方なく管理職や「教頭」になる人もいます。

そもそも、なぜあまり「教頭」になりたがらないのかというと、団塊の世代などの問題で40代の教員が少ないために、30代後半でもう教頭にならなければいけない場合があるからです。

教頭はクラス担任にはなりませんので、教員として最も活躍できるはずの30代後半から「教頭」になると、30代後半でもうクラス担任を外れることになります。そうすると、「教員」としてのやりがいが見えなくなってしまいます。

しかも、教頭になったら次は校長になるわけですが、教頭から校長というのはなかなかなりにくいのが現状です。よって、早期に教頭になってしまうと、校長になるまでの間、10年以上激務と言われる「教頭」で居続けなければならないのです。

学校のブラックなところその4:評価制度

学校のブラックなところ4つ目は、評価制度に私情が入ってしまうことです。

10年ほど前から、教員は管理職から評価され、その評価がボーナスの金額に反映されるという制度がはじまりました。しかし残念ながら、10年経っても管理職の好き嫌いなどの個人的感情が、査定に影響しています。

評価制度は、まず年度初めに目標を立て、それをもとに個人評価シートを作成し、管理職に提出します。学期ごとにも、経過報告書類を作成し、管理職と面談もします。そして年度末に、管理職が教員を評価します。

よっぽどの成果がない場合は、当たり障りのない評価が出されます。しかし、評価ごとにある程度人数が設定されているため、管理職の個人的感情が影響します。気に入られていれば高評価、好かれてなければ低評価、というわけです。

本来教員は、児童・生徒にとってどれだけ「良き指導者」であったかを評価されるべきですが、これでは、「指導が適当でも管理職に気に入られれば高評価」という事態になりかねません。

もちろん管理職の方々の多くは私情を持ち込まないでしょうが、残念がらそういう管理職が少なからずいるのも事実です。

学校のブラックなところその5:組合制度の崩壊

学校のブラックなところ5つ目は、組合制度が機能していないという点です。

教員には、教職員組合があります。組合費は、20代が4,000円程度で、年々上がっていき、40代ともなると毎月8,000円ほど払います。


10年くらい前までは、管理職の不当な扱いに対する対処、新任教員への指導やサポート、転勤先の希望配慮など、組合に入っていることに意味があり、会員もたくさんいました。

保護者からのクレームや新任教員の失敗なども、教職員組合と管理職が協力して収めてくれたり、教職員組合が相談に乗って管理職に働きかけたりしてくれました。

しかしここ数年で、教職員組合の取り組みが問題視され、弱体化し、加入している意味がなくなったため会員が減少、その結果私たち教員を守ってくれる組織がなくなりつつあります。

そうすると、教員自身、自分の身は自分で守らなければならない状況のため、どうしても弱気になり、下手に出ることが多くなります。教員と、保護者や管理職との関係性にも、ゆがみが起きてしまいます。

現在、多くの教員は自分自身で身を守らなければならないので、裁判に対しての保険に加入しています。保護者からのクレームが年々多くなり、「訴訟を起こされる」など、今までは非常にまれだったことが、日常になりつつあるからです。

一昔前の教職員組合は、力が強すぎることで問題もありましたが、力がなさすぎることで今度はブラックな職場環境を作り出してしまっているのです。

学校のブラックなところその6:宿泊行事の持ち出し金

学校のブラックなところ6つ目は、宿泊行事の際に持ち出し金が発生することです。

学校では、教員は様々な宿泊行事に参加します。付き添いの教員は、宿泊費は公費で賄われるのですが、食費や交通費は自己負担となります。

中には、管理職がポケットマネーで補助している学校もありますが、宿泊行事中は睡眠もほとんどとれないなど、児童生徒への指導が長時間になるにもかかわらず、時間外教務手当てが数千円つくだけです。

学校のブラックなところその7:職場いじめ

学校のブラックなところ大人のいじめ問題・職場のいじめ問題です。

最近もある小学校で、教職員間のいじめがニュースになりましたが、生徒たちの間だけではなく、教職員の間でもいじめはあります。

会議中に消しゴムを飛ばしてぶつけるというような幼稚なものから、無視や仲間外れに、陰口を言うなどの陰湿なものまで、子どもと全く同じようなことが起こります。

そしてこれは悲しいことですが、生徒間のいじめが、担任の先生に相談したからといってすぐに解決しないのと同じで、管理職に訴えても必ずしも解決するとは限りません。

「いじめは絶対にしてはいけない」と教える立場の人間がいじめをする、あってはならないことですが、これも現実です。

まとめ – 編集部より

本記事では、保健室の先生(養護教諭)が感じた、職場のブラックなところを7つ、ご紹介いただきました。

どの職種でも、多かれ少なかれブラックな面がありますが、それを受け入れるのではなく、改善していくことが労働環境の向上、そして働く喜びを知ることに繋がると思います。

現役の養護教諭も、養護教諭を目指す方も、ぜひこの記事をご参考ください。

本記事は、2020年6月19日時点調査または公開された情報です。
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