【英語の先生】大変だけど得るものも大きい、中学校教員の仕事

地方公務員である「中学校教師」の英語の先生の場合の仕事内容、1日の流れや、長期休暇の時の仕事などについて解説します。普段の1日や教科指導、生徒指導、校務分掌からその他の事務作業や英語先生ならではについて、まとめています。


みなさんがイメージする中学校教員は、「大変」「怖そう」といったものが多いのではないでしょうか。私自身、教員をしていたと周囲に話すと、ほぼ必ずこのような感想が返ってきます。確かに昨今のニュースは教員の大変さや、思春期の生徒たちの難しさを感じさせます。ですがそれ以上に生徒や保護者から教えられ、自分自身が成長できる素敵な仕事だということもお伝えしたいです。私の経験(公立中学校英語科)を通して、中学校教員の魅力が伝われば嬉しいです。

中学英語教員の生活、実態を知ろう

【1】ふだんの1日
▼出勤から昼食まで
ほとんどの学校は8時前後に職員全体の打合せがあります。私の勤務していた学校では8時15分から朝の打合せが始まりましたので、遅くともそれまでには出勤していないと遅刻ということになります。ただ部活動の朝練や、教材の最終準備のために早く出勤する先生は多く、朝の自由な時間は非常に貴重でした。全体打合せの後には学年ごとに細かな打合せをします。その日の予定や行事の進捗状況、ときには生徒の話題で盛り上がることもあります。中学校では学年でのまとまりが強く、担任を受け持つ先生と、学年付きの先生(副担任や学年主任、嘱託教員など)が連携を取りながらすべての事柄を運営していきます。それぞれの持つ情報を交換する場としても、とても重要な時間です。

8時半にチャイムがなり、生徒たちはその時間に教室にいなければ遅刻となります。担任はそれをチェックするために、早めに教室に入り、生徒の出席状況を見守っておくのがいいでしょう。遅刻や欠席は教室で把握し、出席簿に記入しておきます。後々通知表を書くときに必要だからです。学年付きの先生は遅刻・欠席の生徒対応や、校内の見回り、簡単な清掃・整理など環境を整えるなど、状況に応じた動きをしています。

教室では朝の会が行われます。担任は出欠状況の他に、提出物を確認したり、連絡事項をきちんと伝えることで、生徒たちが円滑に生活できるよう配慮します。このとき担任は出席してきた生徒の様子を見渡し、体調やその他の気になることがないか、さりげなく確認します。家庭状況もさまざまですので、細かな変化に気づくためには日頃の観察が大切なのではないかと思います。

朝の会が終わると1限目が始まります。英語科の仕事はここからが本番。午前中に1コマ50分で4時間の授業があり、昼食をはさんで午後は1時間~2時間の授業がある学校が多いでしょう。どの時間にどのクラスに行けばいいかという、自分だけの時間割が用意されており、それに沿って教室をまわって指導をします。基本的には自分の所属する学年の授業が中心ですが、教科や学校の状況によって他学年の授業に参加することもあります。

現在の学習指導要領では英語科目は週4時間です。学校の規模にもよりますが、これはそうとうな数の授業を受け持つ必要があるということを意味します。私は現職でないのでわかりませんが、ほとんど空き時間(授業のない時間)はないのではないでしょうか。実践的な英会話を取り入れることも求められ、教員自身の英語の質も問われています。先生が話せないと説得力がない授業になってしまいますので、自分の英語スキルはしっかりあげておくことをオススメします。

また英語科は教科の特徴として小テストが多くなりがちです。絶対評価になってから、「読む」「書く」「話す」「聞く」の4技能をバランスよく評価するように、というふうに定められました。定期テストだけでは補えない部分も多く、普段からリスニングの小テスト、単語テスト、ときにはスピーキングのテストも行う必要があり、採点もたくさんありました。材料を減らすと信憑性のある評価ができませんし、面倒でもやることがとても大切です。私の場合は英語科の授業だけでなく、担任時代には学級活動や道徳の時間がプラスされていましたし、「総合的な学習の時間」も学年全員持ち回りで担当していましたので、貴重な空き時間はほとんど採点と評価に充てていた気がします。

▼昼食タイム
昼食は生徒が待ちに待った時間です。学校によって給食の場合と、弁当の場合があると思います。弁当なら比較的楽で、授業が終わったらすぐに食事が始められます。給食だと準備から片付けまで時間が限られているので、スムーズにできるように工夫が必要だと思います。(私自身は弁当の学校しか経験していません。)その間、担任は「昼食指導」という名目で教室にいる必要があり、生徒たちと一緒に食事をとります。学年付きの先生は職員室で食事します。

昼食の時間も生徒の様子を観察するいい機会でしたので、コミュニケーションをとりながら食事をしていました。また私自身、雑貨が好きということもありますが、少しユニークな食器(カップやカトラリーなどは自由でしたので)でネタを作り、そこから生徒との接点を持つということも意識していました。学年が上がるにつれ通用しなくなりましたが、それでも生徒が驚いたり笑ったりする顔を見るのは楽しく感じました。

▼昼食後から帰りの会、清掃まで
昼食後は30~40分の昼休みを取ります。生徒にとっては休み時間ですが、教員にとっては勤務時間の一部に過ぎません。生徒とのコミュニケーションに費やしたり、教科や進路などの悩みを聞いたり、時には生活指導に充てられる場合もあります。何もなければ自分の雑用を済ませます。

午後の授業を終えると帰りの会をします。配布物や翌日の連絡事項を伝え、別れの挨拶をします。私の勤務していた学校は当番制で清掃してしましたので、用事のない生徒は下校しますし、部活動に行く生徒もいます。清掃当番に当たっている生徒は、班ごとに持ち場が割り当てられており、15分程度の清掃を毎日行います。教員は近くでしっかりやっているか見守っている必要があります。


▼放課後
清掃の時間が終わると、「放課後」と呼ばれる時間帯に入り、教員もいったん仕事に区切りがつきます。時間割にもよりますが、だいたい15時から16時くらいから自分の仕事に腰を据えて取り組むことができます。教員の休憩時間は16時15分から17時(退勤時間)までと定められていましたが、実際はまとまった休憩をとることができませんでした。また定時に退勤することはまれで、ほぼ毎日2~3時間の残業をしていました。

その大きな理由のひとつとして、部活動が挙げられます。中学校では多くの教員が部活動に携わることになり、熱心に指導している場面がよく見られます。部によっては土日も活動することもありますし、保護者の要望が多いのも事実です。教員と部活動の関わり方については、昨今問題になっていることもあり、外部指導員(地域でスポーツなどを教えられる方がコーチとして関わる)を導入したり、活動日を減らしたりと、教員自身の生活とのバランスが存続のカギになるのではないかと思います。

あるいは生徒間でトラブルがあった場合は、該当生徒を呼び出して指導することもあります。ときには保護者を交えてというような大きなものもありますので、定時退勤は夢のまた夢という感じでした。

部活動を終え、すべての生徒が下校する「完全下校」という時間が設定されています。これは季節ごとに変動するものですが、日の長い時期は18時に設定されていることが多いでしょう。つまり教員の退勤時間よりも遅いわけです。部活動の顧問をしていたら完全下校まで見守る必要がありますので、必然的に退勤時間も遅くなるということです。完全下校の時間に合わせて、手の空いている教員は校内を見回り、残っている生徒がいれば帰るように促します。

完全下校後の時間が、ほんとうに自分のペースで仕事ができる唯一の時間と言えます。ほとんど立ちっぱなし、歩きっぱなしのあわただしい生活ですので、自分の椅子に座ってお茶を飲み一息つくと、一日を無事に終えた安堵感に包まれます。

教員の一日は学校差、個人差があるでしょうから、私のある一日をご紹介します。朝8時前からスタートできるように出勤します。だいたい放課後は印刷機が使われていることが多く、自分の授業で使う教材や各種たよりの印刷に充てていました。当時は運動部の顧問をしており朝練もありましたが、ペアで顧問をしている先生が早く出勤するスタイルだったので、まかせていました。新任で入ると自宅から離れた地域に赴任することも多く、私も1時間半~2時間程度かけて通っていました。特別な事情がない限り、採用された自治体内を数年ごとに異動することになります。異動の際に地域の希望を出すことはできますが、必ずしも通るわけではないので、その点も事前に考慮しておかなければなりませんね。

話を元に戻しましょう。朝の全体打ち合わせは8時15分から、その後学年の打合せをします。いつもギリギリまで話をすることが多いので、担任を持っていたときは教室に走っていくこともありました。1日4~6時間の授業をします。私の赴任した学校は規模が大きく1学年6クラスありましたので、全クラスの授業と他学年の選択授業などを担当していました。私が担当していた英語科目は週の時間数も多いため、どうしても受け持つ授業が多くなりがちです。学年付きの教員は道徳など学級担任が受け持つ授業がない分、空き時間は増えます。

また英語科ならではですが、ALT(Assistant Language Teacher)との打ち合わせがけっこう苦労します。いわゆる外国人講師の先生なのですが、公立の場合はいくつかの学校をまわっていることが多く、常駐しているわけではありません。ALTと授業をするときは事前に打ち合わせをしてアイディアを練るのですが、他の学年の授業に出ていたり、すでに退勤してしまっていたり、時間を合わせるのに苦労しました。ALTは温和な人柄の先生が多く、生徒たちにもおおむね受け入れられていました。普段の生活で英語を使う機会はそうそうありませんので、できるだけ生徒にもフレンドリーに接してもらうようお願いし、授業でもコミュニケーションを重視して取り組みました。

放課後は部活動の指導や生徒指導、生徒とおしゃべりなどをしてあっという間に時間は過ぎ、自分の仕事を始めるのは退勤時間をとうに過ぎたころになってしまっていました。その日の事務仕事や教材準備、行事の準備などを終え、翌日のめどをつけて退勤するのはだいたい19時から20時だったと思います。生徒と接する時間を減らせば時間は作ることができますが、それでは本末転倒です。ちょっとした悩みの相談から後の信頼関係につながったりするので、生徒との時間は大事にしたいものです。

【2】長期休み中の過ごし方
学校には夏休みをはじめとした、長期休みが何度かあります。生徒はその間登校する必要がありませんが、教員はどうなのでしょう。生徒と同じように休みではなく、普段通りに勤務することが基本です。部活指導や補習、面談、教材研究・資料作成、各種研修に参加することなどが主な仕事ですが、生徒がいない分自由に使える時間が多いのは、休み中のいいところです。比較的余裕ができるので、普段なかなか使えない有給休暇を消化していました。私がいた頃には夏休み中だけに使える「夏休」という制度があり、有休の他に5日間の休暇を取ることができました。長く休暇を取って旅行に出かける先生もいましたが、部活動が盛んな学校だったりすると少し難しいかもしれません。

英語スキルをあげる研修を積極的に受けるのもいいでしょう。英語は本来、教科ではなくコミュニケーションのツールであるということを生徒にも伝えていかなければいけません。説得力のある授業をするためには、自分の英語に自信を持って話し、生徒の憧れになるような存在であるべきなのです。

【3】生徒が早く下校するとき
試験前や面談期間、会議日など生徒を早く下校させるときがあります。部活動などは一切ない代わりに、他の仕事にかかりきりになります。

試験前は当然、試験を作成する仕事が待っています。現在の評価方法は観点別の絶対評価なので、英語の4技能をバランスよく配分して作るといいと先輩教員から教えてもらいました。試験後はそれを採点し、評価を記録していく過程が続きます。各学期の最後にそれをまとめ、最終的な評価を出します。

面談期間は年に数回あります。担任は2者(対生徒)または3者(対生徒保護者)と、15分~20分程度の面談を行います。学校生活で気になることを伝えるだけでなく、家庭での様子を聞くめったにない機会でした。3年生になると進路相談になり、一段と責任が重くなります。面談を何度も繰り返し、納得のいく進路決定ができるように時間をかけて向き合います。

また私の学校では、水曜日は会議の日と決まっていて、教員会議、学年会議、行事に向けた会議などを集中して行っていました。会議中は生徒に関するデリケートな問題も議論される場合がありますので、生徒の出入りがない時間帯を作ることはとても重要です。


中学校教員の主な仕事内容とは?

【1】教科指導
教員の仕事の柱と言えます。教科書をただ教えるだけでなく、その教科の魅力も伝えられる工夫をしていました。特に英語科は嫌いと言われることも多い科目なだけに、親しみやすいように歌を取り入れたりゲーム感覚で学習できたりするように授業を計画しました。試験や評価に向けて生徒が戸惑わず、かつ教員が的確に評価できることにも重点を置かなければなりません。例えば自分ではもっといい評価を予想していたのに、実際には違っていて質問に来る生徒がいます。そういった場面で教員としては、「○○が少し足りなかった」とか具体的に説明できなければいけません。教科指導は親しみやすさとシビアさと、二面性を持って取り組む必要があるのだと思います。

【2】生徒指導
これも教員の仕事の柱でしょう。生徒指導は先に書いたような昼食指導や清掃指導、問題があったときの呼び出し、行事や部活などの指導など多岐にわたります。生徒に直接関わること全般が生徒指導に当たります。

中学生は思春期真っただ中ですから、悩みを抱えていたり、ときにはケンカしたり、トラブルはつきものです。できるだけ円滑に生活できるように、教員はしっかりと向き合う必要があります。生徒は思っている以上に教員を観察しており、手を抜くとすぐばれてしまいます。

私自身ずっと後になって気付かされたことですが、あのときの指導がその生徒にとって後の人生を決定づけるようなものになる可能性だってあるのです。そういう意味では、生徒の人生に深く関わっているのだなあと改めて感じます。

【3】校務分掌
学年、教科を越えて、校内のさまざまな仕事を分担します。いわゆる「生活指導部」や「進路指導部」といったような分掌があり、各学年の状況を会議で報告や、どのような方針で指導を進めるかというようなことを議論します。校内の美化の進行や、カリキュラムや時間割に関する分掌もあります。私のときは、個々の得意な部分を重視して所属する分掌が決められていました。

その他、中学校では合唱コンクールや運動会、文化祭(学習発表会)などのような行事に向けて分掌とは別に委員会が組織され、当日までの流れや段取り、生徒の配置など細かいことを決定していきます。

【4】もろもろの事務仕事
日々最後に残るのは事務仕事です。授業や生徒に関わるものだけでなく、各種届(研修など)の作成、週案(1週間にどんな授業を計画しているかを記入するノート)の作成、保護者会や面談への出欠席確認、各種たよりの作成、これに学期末は評価をつける作業と通知表を作成する作業が加わります。

まとめ

教員の仕事はこうして見ると大変な面が多いかもしれません。私自身もその重圧に悩み、苦しんだ一人ですのでよくわかります。しかし生徒と過ごす濃密な時間は、何物にも代えがたいものがあります。先にも書いたように、人生に深く関わり影響を与える立場だからこそ、自分も成長しなくてはという向上心が生まれてきます。中学生という大事な時期をともに過ごし、成長できるこの職業は、とても魅力的だと思いませんか?

本記事は、2017年5月4日時点調査または公開された情報です。
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