【小学校の先生の仕事内容】児童に「生きていく力」を教える先生の1日

公立小学校で、児童の指導などを行う小学校教師は、地方公務員です。小学校では、ただ単に学習することだけでなくこれから生きていく中で基礎となる力を養う大切な時期と言われています。今回は、そんな小学校の先生の一日のスケジュールや仕事内容について解説します。


公立小学校教員の一日のスケジュール

7:00 7時から8時の間に出勤してくる教員が多い。
8:00 職員室で授業の用意をする。その後職員全員で朝の打ち合わせを行う。
8:30 朝の会。低学年の担任は教室に行く事もあり、高学年なら児童に任せる事もある。
8:45~9:30 一時間目の授業
9:30~9:40 準備休み
9:40~10:25 二時間目の授業
10:25~10:45 中休み
10:45~11:30 三時間目の授業
11:40~12:25 四時間目の授業
12:30~13:20 給食・昼休み
13:20~13:50 掃除
13:50~14:35 五時間目の授業 (五時間目までの場合は帰りの会→児童帰宅)
14:45~15:30 六時間目の授業
15:30~ 帰りの会、児童帰宅
17:00 (仕事がなければ)退勤、だがテストの採点や明日の授業の準備、教材作りなどでなかなか帰れない教員が多い。児童の指導や保護者の要望に合わせて家庭訪問する事もある。
19:00~20:30 だいたいこのあたりに帰宅する教員が多い。

小学校教員の仕事内容

教員には色々な役職がある

小学校で働く教員は、校長や教頭、教諭など多くの役職がいます。近年では、一般企業での社会人経験のある人を、副校長や教頭として採用するケースも多くなりました。これは、閉鎖的になりがちな学校という環境の中に、一般社会を経験した人を取り入れる事、また学校運営におけるマネジメント面でも良い影響がある事から、など色々な理由があります。その為、現在公立小学校に在籍している副校長や教頭の中には、教員免許状を持っていない人もいます。
ここでは、指導教諭と呼ばれるいわゆる一般的な小学校の教員(以下、学級担任)のお仕事について見てみます。

児童に授業を展開する

公立小学校は、一人の担任(副担任がいて、二人制を取っている小学校もある)が各学級に配属され、自分の学級を受け持つ形になります。
小学校では、基本的に学級担任が自分の受け持っている学級の児童に、全ての科目の勉強を教えます。小学校によっては、体育や音楽、家庭科などに専任教諭がいる場合もあります。

指導計画は毎年変わる可能性が高い

文科省から毎年度、小学校の学習指導要領が発表され、それに沿った学習展開を行います。その為、毎年学習指導要領の内容が変更される場合がある為、毎年学習計画を変える必要があります。

例えば、「道徳」が教科として存在する年度と、道徳を廃止して「総合的な学習の時間」の教科を設けている年度があります。そして総合的な学習の時間では、それぞれの学校によって指導する学習内容が異なりますので、どんな学習をするのかも考えなければいけません。近年では、小学校で英語やプログラミングが必修となりますが、専任教諭を設けない場合には学級担任が、児童に英語やプログラミングを教える必要があります。

学習計画を立て、それに伴う準備を行う

学習指導要領に沿って年間の学習計画を立てます。それに伴って必要な教材や用具も揃えます。場合によっては小学校が契約している用具メーカーに自分で連絡をして、注文をする事も少なくありません。教室での授業展開ではプリントや小テストを自分で作成する必要もあります。

実技教科の指導も行う

専任教諭がいない場合には、体育や音楽、家庭科、図画工作などの実技科目も学級担任が教えます。怪我がないように配慮し、児童が安全な中で実技科目ができる環境も整えなければいけません。

児童だけでなく、保護者との関りもある

学級懇談会や家庭訪問を行う

児童の保護者との様々なかかわりを持つのも、学級担任の仕事です。毎年度数回開催される学級懇談会や、家庭訪問を行い日ごろの児童の様子や、今後の予定などについて話します。

問題が発生した時の対応

学級内でいじめが発生してしまった時、児童間で窃盗が起きてしまった時など、学級内で何か問題が発生してしまった時にも、学級担任は対応します。場合によっては教頭や学年主任と連携を取ります。保護者の要望に応じて、話し合いの場を設ける事や、対象となった児童の家庭に訪問し、話を聞く事もあります。

児童が不登校になった時や、学習障害などの発達障害が発覚した時には、特別支援学校やフリースクール、不登校支援センターなど自治体やその他の機関との連携を取る場合もあります。

集金業務や催促をする事も…

給食費の未払いが問題となっていますが、給食費の集金や未払いへの催促も学級担任が行います。


小学校の様々な行事への対応

下見やグラウンド整備も行う

運動会や遠足など年間の行事の際にも、学級担任はやらなければいけない事はたくさんあります。運動会の時にはグラウンドの状態整備や用具の点検、学級でダンスや出し物を行う時にはその指導も行います。

遠足の時には、現地に下見に行きます。遠足と同じルートをたどり、おおよその所要時間を割り出して当日の遠足の計画を立てます。その際にかかる交通費などの計算もし、集金も行います。

小学校の教員を巡る近年の環境変化とは

モンスターペアレントへの対応が増える

近年、常識から外れた行動をする小学生の保護者を「モンスターペアレント」と呼ばれるようになりました。特に、家庭でやるべきしつけや生活習慣などを、担任教員を始めとした小学校の教員へ求めるケースが多くなっています。

例えば、お箸の使い方や片付けの方法を学校で指導してもらえるように要求する、朝起きられない児童の為に毎朝担任教員にモーニングコールを要求する、などです。

他にも、給食費などを払わない、「子供の嫌いなものを給食に出さないで」と要求するなど、小学校の教員の指導範囲外の事を要求されるケースも多くなっています。

近年の学級担任は、児童だけでなく保護者への対応で手いっぱいになってしまう事もあります。

時間外労働が多い

小学校教員は、時間外労働や持ち帰りの仕事も多くなっています。小学校の中ではクラブ活動を行っている事もあり、クラブの担当となると、自分の学級の事だけでなくクラブに関する仕事も増えてしまいます。勤務内では終わらない仕事も多いので、仕事を家に持ち帰るのも少なくありません。

また、夏休みなどの長期休みの間も、日直で出勤する事も多く、学校内の清掃や見回り、用具の点検なども行っています。飼育をしている動物がいれば、長期休み期間中のお世話も教員で持ち回りで行っています。

小学校の教員は、時間外労働が多いにもかかわらず夏休みなどの長期休みがある事や、児童が帰った後は暇になる事が多い、といったイメージを持たれてしまうのも、モンスターペアレントが増えた要因なのかもしれません。

閉鎖的な環境からの脱却

学級担任を含めて、小学校の教員は大学卒業→採用試験合格後にそのまま小学校へ配属、のルートをたどる事がほとんどです。その為、学校という環境から一歩も出ないまま教師になる事が多くなっています。

近年では、閉鎖的な環境からそのまま教員になる事の弊害が出る事も問題になっています。(発達障害に気が付かないまま教員になる、打たれ弱いなど…)

その為、前述の一般企業経験者を副校長や教として招き入れる他にも、社会人の経験を持つ臨時教員の積極的な採用などを行っている所も多くなってきました。

そもそも、小学校の教員になるには

教職課程を履修し、小学校教員免許を取得する

小学校の教員になる為には、小学校の教職課程の履修が可能な教育機関を卒業し、住んでいる自治体に教員免許状の取得申請を行います。

小学校の教職課程を履修する方法は以下の通りになります。
・大学卒業後に、小学校教職課程のある大学院で履修もしくは卒業する→専修免許取得
・高等学校卒業もしくは同等の学力を有する事が証明された後(大検合格など)
→小学校教職課程のある4年制大学で履修及び卒業する→一種免許取得
→小学校教職課程のある短期大学で履修及び卒業する→二種免許取得
・既に大学、短期大学などを卒業している者が、小学校の教職過程のある通信教育などを利用し、不足している単位を履修し、免許状の取得申請を行う→一種もしくは二種免許取得

社会人から教員を目指す人も多い

子供のころから教員に憧れつつも、大学は教職課程のない学科を卒業した人が、改めて教員を目指すパターンもあります。社会人として仕事をしながらでも通える通信制大学の中には、小学校を含めて教職課程を設けている大学も多くあります。


選んだ大学の学科が一生を決めるのではなく、近年ではフレキシブルに職業選択ができるようになってきました。教員だけでなく、今後も色々な職業を目指す為に多くの道が開かれる事が望まれます。

教職員採用試験に合格する

教育機関の卒業及び小学校の教職課程を修了し、小学校教員免許状を持った状態で、都道府県で行われている教職員採用試験に合格しなければ、小学校の教員になる事はできません。
小学校の教職員採用試験は、毎年7月に行われています。地方公務員試験に該当しますので、試験日が異なれば複数の自治体の採用試験を受ける事ができますが、受験者の居住地が該当する自治体で行っている教職員採用試験の合格率が高いと言われています。
第一次選考と第二次選考が別日程にて行われます。筆記試験の他にも面接、ピアノの伴奏と一緒に歌う、25mの平泳ぎの実技試験もあります。泳げない、ピアノが弾けないでは勿論合格できませんので、筆記試験と同様の対策が必要になります。
ちなみに、筆記試験については書店で過去の問題集が販売されていますので、利用して勉強しましょう。

教職員採用試験に毎年チャレンジする人もいる

小学校の教員採用試験の倍率は3.8倍となっています。(平成27年度)近年では、小学校の教員を目指す人も増えた為、受験者数は増えていますが採用人数も増えていますので、倍率は約4倍前後で移行しています。

ちなみに中学校教員採用試験の倍率は7.5倍、高等学校教員採用試験の倍率は7.7倍となっています。(教科全体)小学校よりも中学校・高等学校の教員採用試験の倍率が高い要因として、中学校・高等学校は専門科目ごとの教員免許状になる為、大学で教職課程を履修する時にも教育学部などの専門的な学部や学科を卒業する必要がない為、教員免許状自体が小学校よりも取得しやすいなどの理由が考えられます。

中学校や高等学校と比べて倍率は低いとはいえ、小学校教員になる門戸は決して広くありません。とはいえ、教員採用試験は毎年受験する事ができますので、毎年チャレンジして夢をかなえる人も多くなっています。

教員採用試験に落ちてしまった後は、塾の講師や家庭教師、小学生向けの教材販売企業に就職する人や、児童指導員になってチャンスを待つ人も多くいます。ちなみに児童指導員とは、学童保育を行っている施設や、児童養護施設で働く職員の事です。放課後の小学生の勉強や遊びを見るなどの仕事ですので、小学校教員になった後にも生かせる経験ができる仕事としても人気となっています。また、児童指導員はほとんどの学童保育所や児童養護施設で、教員免許(幼稚園を除く)があればなる事ができます。

どんな人が小学校の教員に向いている?

大切なのは熱意

第一に子供が好きである事、そして教育に対する熱意がある事が、小学校の教員になる為には大切です。また、小学校の教員は、児童や保護者との関りも多く、残念ながら両者を巡ってのトラブルも少なくありません。一般企業では取引先やお客さんとのトラブルがあっても、適切な対処をすれば長期化する事は防げますが、対人間の仕事だからこそ、トラブルが発生した時には長期化しがちです。根気や打たれ強さも小学校の教員には必要になります。

公正な目をいつでも向けられるか

「えこひいき」という言葉があるように、教員とはいえ一人の人間です。自分の受け持っている学級の中でも気に入った児童と気が合わない児童が出る事はある意味仕方がないと言えます。けれども、それを現場で出してはいけません。いつでも、だれにでも公正な目を向ける事ができる事、少しの事でも気が付く事ができる人が求められています。

小学校の担任の先生が良い先生だったので、小学校の教員を目指す、という方も多くいます。それだけ児童の将来や人格形成の上でも重要なポジションであるのが小学校教員です。大変な仕事ですが、それ以上にやりがいや嬉しい事も沢山待っています。

(文:千谷 麻理子)

本記事は、2017年7月1日時点調査または公開された情報です。
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