専門学校の「教務職」の仕事内容について
勤務先は一般の株式会社と違い、学校法人です。業種としては教育機関となります。職種は教員で、仕事内容としては、ビジネス分野として「販売士」「簿記」などの担当専門科目の授業、学生への生活指導(出席、身だしなみ、生活態度など)、就職指導(履歴書添削、面接指導、進路アドバイス)などがあります。更には学校の広報活動業務(学科紹介、模擬授業、進路相談)も兼ねています。
ちなみに教員ですが、教員免許は必須ではありません。
専門学校の教務職の「1日」について
9:00出勤・朝礼
9:30ホームルーム
9:45授業1限目(90分)
11:35授業2限目(90分)
13:05昼休み(45分)
13:50授業3限目(90分)
15:35授業4限目(90分)
17:30終業
学生の出席状態把握
専門学校の多くはクラス担任制です。先ず、自分のクラスの朝のホームルームで、出欠を取ります。この部分などは高校の延長のような方式です。学生の顔色や健康状態を把握しながら、出席管理を行います。学生は色々な事情を抱えています。経済的に厳しい家庭の学生、ゲームやアルバイトのし過ぎで朝起きれない学生、悩みを持つ学生など多彩です。気になる学生がいれば声をかけたり、欠席していれば本人の携帯や自宅に電話連絡したりします。
基礎科目、専門科目の授業
ビジネス分野では基礎科目としてパソコン(Word、Excel、Powerpoint)や簿記、マナーなどの基礎科目と、学科の特性に応じた専門科目の授業を教えます。私は「販売士」という商工会議所が認定した公的資格を教えています。流通や販売手法についての学習です。主に座学です。
高校では1コマ50分だった授業時間が専門学校では90分になるため、慣れないうちは学生も大変です。出来るだけ飽きさせないような展開を心がけています。しかし、授業中に居眠りしたり、スマートフォンをいじったりする学生もいて、受講態度そのものから指導しなくてはならないこともしばしばです。
放課後は就職指導や面談
空き時間や放課後は、履歴書の添削や進路のアドバイスを行ったりします。また、出席率の下がってきている学生には動機付けのための面談を行ったりもします。話し込んで数時間に及ぶこともあります。学生はメールやラインなどの携帯通信が好きですが、実は話をじっくり聞いてほしいという気持ちもあります。場合によっては、保護者を呼んで三者面談を行うこともあります。学生だけでは改善が図れない場合は、親に連絡し、現状を把握してもらった上で、改善策を一緒に考えるようにします。三者面談には、退学防止という側面もあります。
夕方以降が明日以降の準備
学生が去った後は、自分ひとりで行える仕事をします。テストの採点や授業の準備を行います。専門学校は資格取得が大きな目標ですから、資格や検定に「合格させる授業」が大事になります。学生の検定合否結果は担当教員の評価に直結します。そのため、検定直前の時期や、合格が困難な学生がいる場合には、補講も実施したりします。
土日は広報活動、検定試験監督
年間20回以上、広報活動で休日出勤します。具体的には高校生が進路を検討するために、実際に候補先の専門学校や大学に出向いて学校・学科の説明や模擬授業を受ける、オープンキャンパスといわれる業務に従事します。
また、学生が学んでいる各種の資格・検定の試験は、自分の学校の教室で実施されます。そのため、試験監督・採点などの業務で出勤します。
専門学校の「教務職」の年収やキャリアデザイン・働き方・初任給
年収や初任給
基本的には新卒採用がほとんど無い職種です。採用される教員も、各産業分野で活躍していた人材が転職してくるケースがほとんどです。そのため初任給には一律のルールはありません。年収も前職の収入とキャリア、年齢を考慮して決められますが、おおよそ400~700万円の間で決められることが多いようです。需要と供給の関係で、ニーズが高い学科や科目を担当出来る、あるいは特殊な専門技能がある場合は、高給になる場合もあります。キャリアがものをいう業界ということです。
キャリアデザイン、働き方
入社前のキャリアとしては、システム会社の営業職で中小企業診断士(経営コンサルタントの国家資格)を所持していました。その経験と知識を買われ、ビジネス系教務職に就けました。
入社後のキャリアの形成方法としては主に2つです。教員を続けていく「専門職」と、教員の管理にシフトしていく「管理職」です。また、他の部署(事務・広報・就職)に移動という方向もあります。私は「専門職」を希望しています。基本的には専門職を希望する教員が多いようです。
雇用形態としては契約から入り、数年後正社員化するパターンが多いようです。教員には正社員のほかに、非常勤という雇用形態があります。特定の専門科目の授業のみを行い、学生管理は行いません。また、他校との兼務も可能です。正社員を定年退職後、非常勤として勤務することも出来ます。キャリア形成に対して男女の区別や差別はありません。そういった意味で女性が活躍しやすい職種です。
業界展望(先行き)や会社の新しい試みなど
少子高齢化を受けて、業界的には非常に厳しい状況です。18歳人口の激減により、専門学校同士だけでなく、大学や短大とも激しい学生獲得競争を展開しています。そのため、年間を通してオープンキャンパス(体験入学イベント)を実施していますが、ライバル校も同様に行っており、激戦になっています。
対抗策として、ターゲットを拡大する戦略を実施しています。留学生や日本語科部門を増強したり、海外の大学と提携して学部を設置したりしています。
また、企業との連携を強化する取り組みも行っています。卒業後、企業に入社して本当に役に立つためのカリキュラム作りを共同して行ったり、企業の方を講師にお招きしたりして、実践的な教育を行うものです。文部科学省の職業実践専門課程といいます。
さらに、長期的な戦略としては、現在文部科学省が検討している職業専門大学開設を予定しています。従来の大学教育では、学んでいることと実際に就く仕事がマッチしていないという問題を受けて、職業専門大学が設立されようとしています。学校教育法では、大学・高校・中学校・小学校は明確に定義されていますが、専門学校は国の支援の対象からは外されています。大学設立が可能となれば、設立や運営に公的な補助が受けられることになり、経営が楽になります。
専門学校の競合・ライバルについて
基本的なライバルは同業の専門学校、大学、短大などです。少子化を受けて、大学は理論的には志願すれば全員が入学できる「全入」時代を迎え、さらに学生獲得競争が熾烈になっています。定員割れする学部も多く出ています。
メインのターゲットである高校生は、学校の担任や進路指導の先生の影響を強く受けます。高校の先生は、一般的に高校生を大学進学に誘導するケースが多く、進学校になるほどその傾向が強いようです。高校自体も少子化の影響を受けて学生数が減り、その高校をPRするための実績作りが必要になっているからです。
コンピュータやビジネスに関する専門学校は県内に多くあります。各校は設備の充実や資格検定の実績、就職実績を掲げ差別化を図ろうとしていますが、画期的な差別化は図れていないのが現状です。そのため、オープンキャンパスの回数を増やしたり、交通費を提供したり、各種学費割引の制度を設けています。
最近はAO入試(自己推薦)制度を拡充し、早期に高校生を囲い込むことを行っている専門学校が増えていますが、高校によっては早期のAO入試には拒絶反応を示す学校もあります。早く進路を決めてしまうと、高校生が勉強をしなくなるからです。
まとめ(現在の仕事満足度や過去であれば転職した現在の心境等)
非常に多岐にわたる専門学校の教員の仕事ですが、大変なこともやりがいも多くあります。
大変なことといえば、非常に忙しいことです。
授業や生活指導、学生指導は相手がある仕事ですから、自分のペースだけでは進められません。複数の業務を同時並行でこなすことが求められます。また、授業の相手もやる気のある学生ばかりではありません。躾の指導が必要な学生も多くいます。人間相手の仕事なので、なかなかこちらの意図が分かってもらえず、ストレスもかなり溜まります。
休日出勤も多くあります。代休を消化するように指示はされていますが、授業があるため平日に休むのはなかなか難しい状況です。
しかし、学生が資格試験に合格したときや、就職の内定を勝ち取ったとき、苦労があった分、自分のことのように嬉しくなります。
また、専門学校に進学する理由として、大学に行きたくても経済的な理由で行けない、あるいは学力が不足して大学での学習に不安があるなどの高校生も多くいます。あるいは社会に出たが、自分の力量不足を痛感して専門学校を志願する社会人もいます。
そういった意味で、社会に少なからず貢献しているのではないかと感じます。
また、専門学校の先生は、自分のキャリアが活かせることも良い点です。私は転職が多く、その結果多くの職種を経験しました。雑誌記者・編集・プログラマー・営業事務・電子回路設計・製造・営業となかなかひとつの職業を全うできない自分を恥じていましたが、
この体験は専門学校の就職指導に活かされています。ビジネス分野の学生は、事務・営業・販売など、幅広い職種に就いていきます。
自分の体験上、その仕事のやりがいや辛さなどは、自信を持って伝えることが出来ます。まさに自分の実体験が活かされていると実感します。
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