【保健室の先生が教える】学校内で大けが発生!救急車を呼ぶまでの対応について

今回は、私立高校で5年、一律の小学校で10年、保健室の先生(養護教諭)として働いた経験を持つUさんに「学校で救急車を呼ぶときの対応」について取材し、まとめました。


はじめに – 学校はけがが多い!

学校では何十人、何百人もの人が一緒に過ごすため、ケガをすることも多く、ときには救急車を呼ぶような大けがをしてしまうこともあります。

救急車を呼ぶような大けがをさせないのが理想ですが、決して多くはない教職員達が、何百人といる生徒たちを一人一人、朝から夕方まで一時も目を離さずに監視し続けることは、不可能です。

なので、ときには大きなけがをしてしまう生徒が出ます。今回は、けがをして救急車を呼ぶまでの学校の対応について説明します。

そもそも「大けが」とはどんなけが?

一言で「大けが」と言っても、人それぞれ基準が違います。保護者によっては擦り傷でも跡が残れば大けがという人もいれば、骨折くらい大したことないという人もいます。

そのため、養護教諭や学校側は、けがの程度を保護者に伝えるときに注意が必要になります。

小学生の場合の「大けが」は、「歯」のけがが多い

小学生は1年生から6年生まで、体の大きさや精神年齢が大きく違う児童が同じ運動場や校舎で過ごすため、ケガをすることが多いです。

なかでも最近の児童のけがで目立つのが「歯」のけがです。

これは10年ほど前から言われていることなのですが、最近の子どもたちは、転ぶときに「手が出にくい」のです。そのため、顔を地面や机などに打ち付けて歯が折れたり、歯茎に歯が入り込んでしまったり、自分の前歯で下の唇を突き破ってしまったりします。

「歯のけが」の場合の、保健室での応急処置

歯が折れたり抜けてしまった場合、元に戻せる可能性があるため保健室に常備してある「歯牙保存液」につけます。なければ、牛乳につけておきます。そして口内を出血している場合は、滅菌ガーゼで止血します。保健室でできることはここまでです。

その後の歯・口のけがへの対応は、大きく2つに分けられます。

歯・口のけがはその時だけではなく、将来の永久歯への影響や歯茎の中の神経への影響が心配されるため、必ず病院を受診します。


対応1:かかりつけ医もしくは学校歯科医への受診

小学生にもなるとむし歯がなくても一度は歯科医を受診している場合が多いため、保護者にかかりつけ歯科医を確認し、かかりつけ医を受診します。

かかりつけ医がない場合は、予約診療が中心の歯科は受け入れてもらえないことが多いため、学校歯科医を受診します。

対応2:救急車を呼ぶ

小学生の児童は痛みや出血に敏感です。そのため、けがをしたことでのショックで倒れてしまったり、パニックになってしまい、かかりつけ医まで連れていけない場合があります。

その場合は応急処置をしたのち、管理職と相談し保護者に連絡をして救急車を要請することになります。

最近では、赤ちゃんの時からハイハイを積極的に行うことや、体幹トレーニングなど「手が出る」ために必要な体の発達についても知識が広まりつつあり、学校でも保健指導や担任による指導も行われているため、将来的にはこのようなけがは減っていくかもしれません。

中学・高校の「大けが」は捻挫や骨折が多い

中学生以上になると部活動が始まるため、ケガの度合いも大きくなります。

捻挫や骨折が多く、最近のレントゲン画像の解像度が上がっているのかパソコンでズームできるためか、捻挫と思って受診しても「疲労骨折」「剥離骨折」と言われることが多いです。

中学や高校で救急車を呼ぶほどの骨折は、骨が皮膚から出てしまう「開放骨折」や腕や足が変な方向に曲がってしまっているときです。

捻挫や骨折の場合の、保健室での応急処置

救急車が来るまでに、ショックを起こさないように足であれば心臓より高く上げ、体を保温し、出血があれば止血します。

中・高生にもなると痛みを我慢し、冷静なことが多いため、骨折したらいきなりパニックになる生徒はほとんどいません。保健室の先生(養護教諭)は生徒の傍について、状態が急変しないかどうか観察します。

どの校種でも救急車を呼ぶ「大けが」

小・中・高どの校種でも救急車を要請する大けがは、いじめやけんかによる首より上のけがが多いです。

相手がいる場合、後から問題になることが多く、ケガの処置や対応についてもクレームが入ることも少なくありません。そのため、大げさと思われても、最大限の対応を取っておく必要があります。

日本スポーツ振興センターの「災害給付金制度」について

最後に、学校で大けがした場合の治療費等についてお話します。

日本スポーツ振興センターの、「災害給付金制度」という制度があります。一昔前は「安全会」という名称で知られていた、学校の中で起こったけがにかかった治療費などの保険制度です。

教育委員会が掛け金の一部を負担しているため、年間400円から1000円未満と、児童や生徒が入れるどの保険会社の物よりも保護者が支払う掛け金が安く、通学路や修学旅行などの宿泊行事中の病気での受診まで保証してもらえるため、カバー範囲も広い保険です。任意加入ですが、学校も加入を勧めるため全国の幼稚園から高校生までの多く児童生徒が加入しています。


ただし、スポーツ振興センターで保障されるのは支払った金額+1割の額です。そのため、生活保護を受けていて医療費を窓口で支払わない場合や、交通事故のように相手が10割支払うようなけがは対象外です。けんかなどで、相手が自身の医療保険を使わない場合も対象外になることがあります。

また、日本スポーツ振興センターの「災害給付金制度」がいくら対象範囲は広いとはいえ、損害保険ではありません。学校の管理下で起こったけがや病気のみが対象のため、相手にけがを負わせただけでなく、相手の物に傷をつけたり壊したりした場合の物への支払いは対象外です。

万が一に備え、病院に書いてもらう書類があり、学校との書類のやり取りなど面倒なこともありますが、養護教諭の立場から言うと、ぜひ加入しておいた方がいい保険です。

まとめ – 編集部より

今回はベテランの保健室の先生に、学校内で起きる「大けが」と、救急車を呼ぶまでの対応について話していただきました。

最近は、「本当に病院に行く必要はあるだろうか」という怪我でも、病院を受診することが多くなっているそうで、医師や救急隊員に「大変ですね~」といわれることもしばしばあるようです。

保健室の先生(養護教諭)を目指すなら、迅速で冷静な判断力が必要になってきます。ぜひ、この記事を参考にしてみてください。

本記事は、2020年6月22日時点調査または公開された情報です。
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