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日本と本家アメリカの「PTA比較」および「現在の課題」について

お子さんの進学時期でもある4月。この季節になると地域だけでなくメディアでも話題に上がる機会が増えるのが「PTA」です。

ここでは、日本のPTAの定義と今に至るまでの歴史、そして現在の課題、本家アメリカのPTAについて解説しています。

2018年08月30日更新

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目次
日本のPTAの定義について
日本のPTAの歴史について
アメリカのPTAについて
日本のPTAの現状と、抱える問題について
現代のPTAを巡る諸問題
まとめ
日本と本家アメリカの「PTA比較」および「現在の課題」について

日本のPTAの定義について

会員は保護者と教師

PTAとは“Parent Teacher Association”の略で、「子供の保護者と教師からなる団体」です。つまり、PTAの会員はその学校に通う児童の保護者と教師で、児童は会員ではなくPTAからの支援を受ける立場です。

なお、近年ではPTAに地域社会との繋がりも求められるようになったので、地域社会の意味の“Community”を加えて、「PTCA」とする団体もあります。

PTAは各学校に設けられていて、「○○小学校PTA」のほか、「○○小学校保護者の会」「父母と教師のための会」など、色々な名称があります。また、各校のPTAが共同活動のために集まる市町村や都道府県単位のPTA連合体、全国のPTAが集まる日本PTA全国協議会などの連合体もあります。

PTAの目的

PTAは、保護者と教員が共に学んだことを家庭、学校、地域に還元することや、児童の健全な発達に寄与することを目的とした活動を行います。

任意加入のボランティア活動がPTAの本来の姿であり、営利目的での運営を行ってはいけません。また、民主主義の原則にのっとり、会員は誰でも発案可能、かつ案の採択には会議が開かれることになっています。

日本のPTAの歴史について

PTAはいつ作られたか

日本におけるPTAの根本は、学校運営のための経済的支援を、その学校のある地域に住む住民が行っていたことが始まりです。かつては学校の経費は、市町村の負担と定められていたのですが、市町村による支援だけでは満足のいく学校運営ができなかったため、地域住民が経済的な支援を行っていたのです。

また、学校への経済的な支援だけでなく、労務的な支援も同時に提供するために、各地で「保護者の会」や「父母会」、「○○学校後援会」などの団体が設立され、学校への支援を行ったのが日本のPTAの母体といえます。これらの団体は経済的支援と労務的支援を主にしており、今のPTAのような学校の教育や運営に関する活動は行っていませんでした。

戦時中は一時中断、戦後アメリカによっても推奨

日本が世界大戦の渦中へ突入すると、市民生活にも戦争による影響が出てきます。戦争によって父母会や学校後援会などの活動は一時ストップとなりました。

戦後は、戦後復興の一環として焼け野原の中からまた学校を再建するために、再度保護者の会や父母会、学校後援会を結成して活動を行う地域も増えていきました。

また、ポツダム宣言にのっとり戦後日本はアメリカの連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)による占領政策を受けることになりました。日本の教育システムに関する政策も多く行われましたが、その中の一つにアメリカから日本への教育使節団派遣があります。1946年に発表された教育使節団の派遣に基づく「アメリカ教育使節団報告書」の中には、現在のPTAの根本となるアメリカのPTAの理念を推奨しています。

翌年1947年には、GHQだけでなく極東委員会も「日本教育制度改革に関する指令」を定めてPTAは戦後の民主主義教育推進のためにも有効であるとし、全国にPTAの設置を推奨しました。これを受けたGHQも全国の学校へPTAの設置を推奨、GHQから事務処理を請け負った文部省は省内に「父母と先生の会委員会」を設置して、PTA設置のための研究と審議を行い、「父母と先生の会‐教育民主化のために‐」と題するPTA結成の手引き書を作成しました。

PTA結成の手引書「父母と先生の会‐教育民主化のために‐」は、文部事務次官名で全国都道府県知事宛に通達され、次々に全国各地でPTA設置のための動きが加速します。翌年1948年4月には全国の小中学校にPTA設置状況は一気に7割を超えました。また、戦前からあった日本のPTAの根本である父母の会や後援会も、PTAと名前を変えて活動を続け、現在では日本全国の学校にPTAが団体として設置されています。

なお全国単位のPTA連合体は、1952年10月に東京で開催された「日本父母と先生の会全国団体結成大会」が始まりです。

アメリカのPTAについて

現在のPTAを日本に広めたアメリカ

日本には元々父母会や後援会など、学校を地域の住民が主に経済的・労務的に支援する団体がありましたが、戦後日本のPTAの本格導入を進めたのは、GHQつまりアメリカです。元々PTAとはアメリカから発祥した学校を支援する考え方から生まれた団体で、現在の日本のPTAはアメリカのPTAの考え方がベースになっています。

アメリカのPTAの始まり

PTAの歴史は深く、まだ女性の参政権がなかった1897年に始まります。

1897年、のちの新聞王と呼ばれたウィリアム・ランドルフ・ハーストの母のフィービー・アパーソン・ハーストとアリス・マクレラン・バーニーの2人の女性が“National Congress of Mothers”(アメリカの全ての母親のための討論会)を首都ワシントンD.Cで開催しました。当時は女性の参政権がなかったので、それほど人は集まらないと思っていた予想に反し、女性だけでなく父親や政治家、教師なども含めて約2,000人がその討論会に集まりました。そのため、「母のための」の名称を“National Congress of Parents and Teachers”(アメリカの全ての保護者と教師のための討論会)に変更、その後“National PTA Organization”(全米PTA連合)に名前を変えて現在でも活動を続けています。

National PTA Organizationは、アメリカにおける幼稚園の設立や給食の支給開始のほか、予防接種の義務化や保健サービスなどの公衆衛生面、児童労働法や少年法など子供に関する法律の制定にも繋がる活動を行いました。

現在のアメリカのPTA

現在のアメリカでは、およそ90%以上の全米の学校が保護者と学校に関する団体を設立していますが、National PTA Organizationに属しているのは25%ほどに留まっています。これは、アメリカにおけるPTAは学校や州などの階級制で構成されていることで、PTAに賛同できない団体や、独自の考え方を持つ宗教系の私立校が多いのが理由です。

PTAに属さないアメリカの団体は、PTOなどの名称で呼ばれ、州や国などの階級制ではなく学校単位で活動を行います。学校の規模もそれぞれによって異なるので、学校単位でふさわしい範囲での活動ができる、PTAは会費の徴収が義務付けられているがPTOは会費徴収の有無が選択できるなど、よりフレキシブルな活動ができるメリットがあります。

アメリカでは、教育熱心な保護者が多くより活動の多いPTOやPTAがある学校が保護者に好まれる傾向にあります。これから紹介する、活動が保護者の負担になるので敬遠されがちな日本のPTAとは対照的です。

日本のPTAの現状と、抱える問題について

保護者と教師が協力し、学校環境を整えるのが目的

現在のPTAでは、会員である児童の保護者と教師が協力して、児童のために学校の環境を整えるための活動を主に行っています。具体的には、入学式や卒業式、文化祭や運動会などの行事運営の手伝いや、ベルマークの収集や廃品回収によって収益を得て、学校に必要な用具や備品を購入するための作業などを行っています。

時代の変遷とともに、色々な問題も

PTAができる前の、保護者が学校のために支援を行う後援会や父母の会などを含めると、PTAの歴史はとても深いものです。そして、時代の変遷とともに保護者や児童、教師を取り巻く環境も変わります。ところが、PTAの活動内容や行事、風習などが古いまま残ってしまっている地域も多く、現代にはそぐわない作業や活動内容を行っている所も少なくありません。

また、PTAの活動内容には地域差が激しく、保護者への負担や活動内容も地域によって全く異なります。次に、現代のPTAを巡る問題点について見てみましょう。

現代のPTAを巡る諸問題

個人情報の取り扱い問題

PTAの会員名簿は、学校に通う児童の名簿がそのまま流用されていることがほとんどです。また、PTAの役員間の連絡も電話番号が記載されている名簿を配り、連絡網も電話連絡をいまだ採用しているところも多いです。

インターネットが普及した現在においては、一斉メール送信による連絡網を利用するなど色々な方法がありますが、「昔からの風習だから」という理由だけで、いまだ電話による連絡網を続けているPTAも少なくありません。また、インターネットが普及したからこそ、個人情報もいつでも全世界に発信できるようになりました。特に児童の個人情報は厳重に取り扱われるべきなのですが、PTAでは個人情報の取り扱いについて徹底されていないところも少なくないのです。個人情報保護法では「一般的には本人の同意なしで(個人情報を)外部に渡すことはできない」とされていますが、PTAの慣例によって「目をつぶっている」状態の団体がまだまだ多いといえます。

実際に、会員や児童の個人情報の入ったUSBメモリーなどのデータ媒体を公共機関内に置き忘れたり紛失したり、営利目的で個人情報を流出させたPTA会長などもいます。

参考:
横浜市 学校における個人情報の漏えいとその対策について
http://www.city.yokohama.lg.jp/shikai/pdf/siryo/j3-20110215-ky-6.pdf

2017年5月には、個人情報保護法が改正になり「個人情報が5千人以下の場合」の法規制範囲が撤廃になりました。これを受けて、全国のPTAもいまだ対応に追われている所も多くなっています。

PTA会費流用など、経理がずさんなことも

PTAは、児童の保護者と教員が学校環境を整えるための「ボランティア活動」です。ところが、多くの地域ではPTA会費という名目でお金を徴収されます。PTA会費がPTAの運営に必要なものとして管理・運用されるなら会費の徴収も適切です。ところが、現状ではPTA会費を学校の設備や用具の購入に流用したり、学校教職員やPTA会長、役員などの借金返済やギャンブル目的で着服・流用したりといったケースも残念ながらあります。

参考:
京都新聞 PTA会費着服で元校長免職 不適切LINEの教諭は停職
http://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20170928000102

また、この様にPTA会費の流用や着服は犯罪ですが、やはり「PTA役員なら、会費は好きなように使って良い」という悪い慣例が残っている地域も残念ながらあり、日の目を見ない不適切なPTA会費の流用、着服が日本全国で多発している可能性も高いです。

「加入は任意」のはずだが実際は強制

PTAは、本来ならば加入は任意のボランティア活動です。ですが、お子さんの入学と共に強制的にPTAに加入する体制になっている所がほとんどです。また、本来の任意加入であることを強調しPTAへ加入しなかった場合、学校や地域から保護者や児童が不当な扱いを受けるケースもあることも見逃せません。

古くからの慣習が残っている

個人情報の取り扱いも含め、古くからの慣習が根強く残っているPTAも多いです。メールなどの連絡で済む所を、「連絡は必ず対面で行う」などの慣習に従って会合を頻繁に開くので、都合をつけて出席する役員や保護者の負担が大きくなります。

他にも、パソコンソフトを使用すればすぐに終わる書類作成や計算も、「慣習」を理由に全て手作業で長い時間をかけて行うなど、非効率かつ無駄のある作業も多くなっています。

保護者への負担が多い

現代のPTA活動が保護者に敬遠される最大の理由が、保護者への負担が大きい事です。

平日の昼間に頻繁に学校へ足を運ばなくてはいけない役員のポジションは、働いている人には実質不可能である場合がほとんど。ところが、地域からの重圧や子供への不当な扱いを受けるのを避けて、PTA活動のために退職を余儀なくされる保護者も少なからずいるのです。

PTAの役員決めが押し付け合いになってしまうのも、保護者への負担が大きいのが要因。共働きはもちろん、妊娠中だったり小さいお子さんがいたり、介護が必要なご家族がいる場合もあります。それらの事情を考慮しても押し付け合いになってしまうほど負担の多いPTA活動は、本当に有意義であるのかと疑問を持たざるを得ません。また、保護者の負担が多いからこそ「役員(特に会長などのより負担が大きいポジション)になれば、それなりの見返りはもらってもいいのではないか」という考えを誘発する要因にもなってしまうのではないでしょうか。

まとめ

保護者の負担が多い背景には、PTAの古い慣習にただ従っているだけ、というところもあります。そのことから、PTAは不要ではないか、という意見も少なからず出ているのが現状です。PTAに関わらず、時代に合わせたやり方を模索するのも、団体活動維持のために必要なのではないでしょうか。

(文:千谷 麻理子)

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